相続が開始されたら新NISAはどうなる?必要な手続きや書類を紹介

NISAは相続が発生した場合には相続税の対象となります!

新NISA(少額投資非課税制度)がスタートし、多くの方が株式や投資信託などに興味を持っているのではないでしょうか。

新NISA(ニーサ)などを活用すれば、資産を雪だるま式に増やすことができます。

しかし、口座の名義人が死亡し相続が発生した際には、NISA口座は相続税の課税対象財産となります。

株式や投資信託などの商品には、譲渡所得が課税されますが、NISAの運用中には課税されません。

しかし、相続財産として取り扱うため手続きには注意が必要になります。

本記事では、相続発生時にNISA口座がある場合について詳しくご紹介します。

取り扱いや注意点などをご紹介しておりますので、気になる方はぜひ一度ご参照ください。

口座の株式の評価方法

新NISAで売買をする商品は、上場株式を運用します。

口座の名義人が死亡した際に証券口座にて運用を行っていた際には、相続財産とカウントし相続税の課税対象財産になります。

新NISA(積立投資枠・成長投資枠)でも通常の上場株式でも、相続時の評価方法は変わりません。

上場株式の相続時の評価方法

上場株式の相続時の評価方法は、そこまで難しくはありません。

ですが、株式などは常に価格が変動します。

そこで、相続税の公平性を保つために以下の4つの評価方法から最も低い金額が1株あたりの評価額になります。

評価基準
亡くなった日の株価の終値
亡くなった日の月の平均終値
亡くなった日の前月の平均終値
亡くなった日の前々月の平均終値

上記の計算を行うことで、1株あたりの評価額を決めます。

NISAでも同様に扱うため、取得価額=相続税の対象額になります。

例えば、被相続人が2,500株を保有していたとします。
評価額を計算した所、以下のような金額だとします。

評価基準評価額
亡くなった日の株価の終値4,378円
亡くなった日の月の平均終値3,952円
亡くなった日の前月の平均終値4,571円
亡くなった日の前々月の平均終値4,091円

この中から、最も低い金額が1株あたりの評価額になります。

今回は、亡くなった日の平均である3,952円が1株あたりの評価額となります。

相続時の新NISAの取り扱い

実際に相続でNISA口座を引き継いだ際には、相続税の申告納付以外にも口座を引き継いだ人の名義変更手続きを行う必要があります。

NISA口座は通常の株式や投資信託とは取り扱いが異なります。

そのため、ここで相続時のNISA口座の取り扱いについてご紹介します。

特に知っておくべき取り扱いは以下の3つです。

①NISA商品は、相続開始時点では含み益に税金がかからない

まず1つ目はNISAの非課税に関する取り扱いです。

投資商品は、運用をして利益を得た場合には通常税金(譲渡所得税)が発生します。

しかし、NISAでは運用をし得た利益に対しては税金が課税されないのがNISAの特徴と金融庁や国税庁のHPでは記載がされています。

そのため相続時にNISA口座を引き継ぐ際には、運用で得た利益に対しては非課税となります。

参照:金融庁 NISAを知る
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html

具体的な例

例えば、総額100万円、夫(または妻)がNISAで運用をした場合を考えてみましょう。

100万円の投資額を運用した結果、130万円になっていたと仮定します。

通常の株式などの相続時には、利益分である30万円に対して税金が課税されますが、NISでは運用益に関しては非課税になるため譲渡所得税は課税されません。

②移管をする際に得た利益には税金が課税される

前述で、NISAは非課税なので相続時には譲渡所得税は課税されない。とご紹介しました。

しかし、NISAの非課税期間は、被相続人が亡くなるまでの期間です。

そのため、相続が発生しNISA口座を別の証券口座に移管する際に発生した利益に対しては譲渡所得税が課税されます。

具体的な例

前述の例を参考にしながら具体的な計算方法の流れをご紹介します。

先ほどは、総額100万円の投資から130万円までになっていた場合をご紹介しました。

遺産分割協議などの手続きを行い、移管手続きに入ります。

そこで130万円が147万円になっていたとします。

項目金額
総額100万円
相続発生時130万円
移管時147万円

前述でご紹介している通り、非課税期間は口座名義人の死亡まで期間がありますので、100万円から130万円になった際の30万円には譲渡所得税は課税されません。

しかし、相続開始から移管するまでの間に147万円になっていた場合には、147万円から130万円を差し引いた17万円に対しては譲渡所得税が課税されます。

課税対象の計算方法
147万円(移管時)ー130万円(相続発生時)=17万円(移管時までの利益)
17万円×譲渡所得税(税率は保有年数で異なる)=納付金額

譲渡所得税は、保有年数によって税率が異なります。

年数税率
5年以内の短期譲渡所得39.63%
長期譲渡所得20.315%

「保有年数は相続してすぐであれば1年以内では?」と感じるかもしれませんが、相続における保有年数とは相続開始日ではなく、被相続人が実際に口座で取引を初めた日から起算をします。

そのため、いつから運用を始めたのかによって税率は異なります。

配当金も同様

相続後に発生した配当金に対しても、上記でご紹介したような譲渡所得税の課税がされます。

運用中に得た配当金は非課税ですが、相続発生後のNISA運用で得た配当金には20,315%の税金が課税されます。

③相続した商品を非課税のまま持ち続けることはできない

移管などの言葉が前述でありましたが、被相続人が運用していた株式や投資信託などの商品を、別の口座に移すこと移管手続きと言います。

しかし、NISA口座を保有していた方の相続時には、相続人NISA口座に移管をする(非課税で保有し続ける)ことはできません。

そのため別の証券口座(一般口座もしくは特定口座)を開設し移管の手続きを行う必要があります。

同一銘柄の移管には注意

同一銘柄の移管には注意

NISAは運用益が非課税になる制度ですが、通常の株式や投資信託の運用方法と異なる点はありません。

証券口座には2種類あり、一般口座と特定口座という口座があります。

2つの違いは、主に税務処理が異なります。

通常、一般口座で保有していた証券は一般口座にしか移管することができません。同様に特定口座で保有していた証券は特定口座にしか移管することができません。

このルールは、NISAでも適用されます。

例えば、被相続人が一般口座で保有していた株式を相続する場合、その株式は相続人の一般口座に移管されます。

同様に、特定口座で保有されていた株式は、相続人の特定口座へ移管されることになります。

つまり、相続した株式は、元々の口座の種類に基づいて移管され、特定口座と一般口座の間で自由に振り分けることはできない点に注意しましょう。

新NISAなどの相続手続きの流れ

NISA口座を相続した際の、評価方法や取り扱いについてご紹介しました。

ここからは、実際にNISA口座を相続によって引き継いだ際の手続きの流れについてご紹介します。

前述でご紹介しておりますが、被相続人がNISA口座を所有していた場合には名義変更手続きを行う必要があります。

基本的な流れは以下の通りです。

今回は相続が開始されてから、名義変更(移管)手続きまでの流れをご紹介しております。

実際には、行政上の手続きや相続税の計算なども必要になりますので注意しましょう。

①遺言書の有無の確認

NISAの相続を開始する前に、遺言書があるのかを確認しましょう。

遺言書がある場合には、原則その通りに遺産を分配します。

遺言書がない場合には、相続人全員で話合いを行う遺産分割協議が必要になります。

②相続人・遺産の調査/確定

遺言書の確認とともに、相続人・遺産を調べなければなりません。

NISAをやっていると、家族や周りに周知していればNISAを特定することはできますが、それだけでは相続手続きを行うことはできません。

相続人の調査方法

相続人とは、亡くなった被相続人の財産を受け取りる権利のある相続人のことを言います。

被相続人の配偶者は必ず相続人となり、配偶者と相続順位の高い人が実際に財産を引き継ぎます。

相続人を調査する際には、戸籍謄本や家系図などを活用することで把握をすることができます。

把握ができたら、相続人の順位を確認し確定まで進めます。

不安な方は、専門家に相談をすることで、手続きを代行していくれる可能性があります。

遺産の調査方法

遺産とは、被相続人が保有していた財産のことです。

この遺産の中には、不動産や証券、今回のNISA口座なども相続財産に含まれます。

遺産を調査する際には、財産目録などを事前に被相続人に協力をしてもらうことで把握がしやすくなります。

③NISAの商品を特定する

被相続人がNISA口座を所有をしていた場合には、遅滞なく非課税口座開設者死亡届を、開設している金融機関に提出する必要があります。

また、口座を保有していた場合には、NISA口座で運用していた株式・投資信託の商品を特定しましょう。

特定できない場合の方法

新NISAを活用していることは知っているけれども、どの会社で口座を準備しているのかわからない場合もあります。

そのような場合には、証券保管振替機構(通称:ほふり)に情報開示請求を行うことで特定することができます。

ほふりは証券を預かり保管している期間です。

情報開示請求のための必要書類を郵送すれば、取引状況を知ることができます。

④名義変更(移管)手続きを行う

相続税の申告納付が済んだ後に、NISAの名義変更(移管)手続きを行います。

NISAとご紹介しておりますが、亡くなった被相続人のNISA口座で運用していた株式や投資信託では相続人のNISA口座への移管はできません。

そのため、一般もしくは特定口座への移管手続きが必要になります。

NISAは上場株式や投資信託を活用するため、移管手続きは通常の移管手続きと変わりません。

手続きの流れに関してはあくまで概要です。

各証券会社ごとに、必要な手続きが異なる可能性がありますので、不安な方は証券会社に問い合わせを行いましょう。

必要な書類

NISA口座を引き継ぎ、名義変更を行う際には以下のような書類が必要になります。

書類名入手先
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの)市役所
相続人の戸籍謄本市役所
印鑑証明書(発行から6ヶ月以内)市役所
遺言書または遺産分割協議書 
非課税口座開設者死亡届各証券会社
株式等移管依頼書各証券会社
NISA口座の残高がわかる書類(残高証明書)各証券会社

上記以外にも、証券会社によっては必要な書類が異なる場合がありますので、注意しましょう。

費用

移管手続きを行う際には、以下の費用が必要になります。

  • 必要な書類の取得費用(発行手数料)
  • 譲渡所得税(移管時に利益がある場合)

戸籍謄本や印鑑証明書などの書類を発行する際には、手数料が必要になります。

また前述でご紹介したように、相続開始日まではNISA口座は非課税ですが、移管時に相続開始日から起算して利益がある場合には、譲渡所得税が課税されます。

移管手続きが終了した際には、管理・運用・解約(売却し現金化する)は相続人が自由にすることができるため、運用したくない方や方法がわからない場合には現金化することも視野に入れておきましょう。

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記事のまとめ

今回は、新しくスタートしたNISAの相続時の手続きについて詳しくご紹介しました。

活用することで、雪だるま式に資産を増やしていくことができるNISAですが、相続時には非課税期間や移管時の譲渡所得税などの取り扱いが通常の証券よりも複雑です。

そのため、対策や手続きを行う際には、必ず証券会社やIFAなどの証券に専門家に相談することをおすすめします。

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