相続時の遺産分割はどうする?4つの分配方法や手続きを紹介

遺産分割はトラブルの元、専門家に相談を!

大切な家族が亡くなった後には、被相続人が保有していた相続財産を「誰が・どの財産を・どのくらいの割合相続するのか」を相続人全員で決めなければなりません。
しかし、相続人一人一人で考え方は異なりますので、トラブルになるケースも少なくありません。
本記事では、被相続人が保有していた財産を分ける遺産分割についてご紹介します。
方法や手続き、遺産を分けなければ相続人同士で起きてしまうトラブルについてもご紹介しておりますので、気になる方はぜひご参照ください。

遺産分割とは

遺産分割とは、相続人同士で遺産(現金・株式などの証券・土地や建物の不動産)を分ける手続全般を指します。
遺産を分ける方法は、2つありそれぞれで分け方や準備するものなどが異なります。
財産を分ける方法は、以下の通りです。

  • 遺言書による分割
  • 協議による分割

遺言書による分割

1つ目は、遺言書による分配方法です。
遺言書は、被相続人が生前に「誰が・どの財産を・どのくらいの割合相続するのか」を決めて紙に書く書類です。
遺言書には、3つ種類がありそれぞれ作成方法や保管方法などが変わります。

 公正証書遺言自筆証書遺言秘密証書遺言
作成方法公証役場で公証人が作成する全て直筆で作成する全て直筆で作成する
保管方法公証役場にて保管本人または法務局本人

どの遺言書で作成するのかは、被相続人が選択することができます。
しかし、相続財産や相続人との関係性によって適切な遺言書を選択するためにも、必ず専門家に相談しましょう。

遺言書がある場合は、原則その通りに分配する

相続にて遺言書がある場合には、原則遺言書の通りに相続財産を分配します。
相続人全員の合意が取れれば、異なる分配方法を検討することができますが、その場合は後述する協議による分配方法を相続人全員で決めます。
遺言書は、相続時に大きな効力を持ちます。
そのため、被相続人が遺産の分配方法に強いこだわりなどがある場合には、遺言書を作成することをおすすめします。
遺言書の作成は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、被相続人が実現させたい遺産の分配方法を遺言書で指定できます。

協議による分割

遺言書がない場合、または相続人全員の合意がある場合には、被相続人の遺産は一度全て共有財産となります。
このような場合には、相続人全員で話合い(協議)を行い「誰が・どの財産を・どのくらいの割合相続するのか」を決めます。
この協議を行うことで、遺産の共有を解消します。

協議ではまとまらないことも

冒頭でご紹介しておりますが、被相続人の財産をどのように分ければ良いかは相続人それぞれで異なります。
そのため、協議ではまとまらないことも多くあります。
その際には、後述する調停や審判の手続きを行うことで、遺産の分配先を決めます。

4つの遺産分割方法

遺産の分割には2つの種類があることをご紹介しました。
実際に被相続人が保有していた遺産を分割するためには、4つの方法を選んで分割を行います。

  1. 現物分割
  2. 換価分割
  3. 代償分割
  4. 共有分割

①現物分割

現物分割とは、被相続人が保有していた財産をそのまま分ける方法です。
預貯金や証券、家具・貴金属などは現物でも分割がしやすい財産です。
しかし、土地や建物などの不動産は分割のしにくい相続財産とされています
土地を分筆した上で土地を各相続人が引き継ぐこともありますが、手続きなどを行う必要があります。
被相続人が居住していた不動産以外にも、被相続人が管理していた収益不動産などの財産も分割対象に入ります。
不動産などが遺産の中に含まれる相続時には、司法書士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

②換価分割

換価分割とは、被相続人が保有していた財産を一度全て売却をし現金に変えてから相続人同士で均一に分ける方法です。
不動産などの分けることが難しい財産などがある場合には、被相続人が保有していた財産(証券・不動産・貴金属等)を売却することで公平に分配することができます。
しかし、不動産などは買い手が見つからない場合は売却を行い分配することが難しくなります。

③代償分割

代償分割とは、特定の相続人が財産を引き継ぐ代わりに、財産を引き継いだ相続人が他の相続人に金銭(代償金)を渡す分割方法です。
土地や建物などの不動産を所有している場合には活用することが多いです。
現物分割でも土地や建物などを分筆することで分けることは可能ですが、売却時など処分や管理などを行いにくくなるので不動産がある場合には代償分割を活用すると良いでしょう。

代償金は相続人が準備する必要がある

代償分割を行うことで、相続人同士で公平に遺産を分割することができます。
しかし、他の相続人に支払う代償金は、財産を引き継いだ相続人が準備をする必要があります。
他の遺産では代替はできず、相続人が自ら捻出しなければなりません。
相続人が現金を多く保有していれば可能になりますが、不動産などの相続時に評価額が高くなる財産分の現金を用意するのは難しいです。
このような場合には備えて、被相続人が生前に生命保険等に加入をしておくことで、相続人の負担を軽減することができます。
具体的な方法に関しては、保険の担当者はFPなどに相談すると良いでしょう。

④共有分割

共有分割とは、遺産を相続人全員で共有する方法です。
土地や建物などの不動産を複数の相続人が希望している場合には、共有することがあります。

共有は注意が必要

相続人全員で共有するのであれば、トラブルにならないと感じてしまいますが実はトラブルの原因になることが多いです。
遺産の共有状態が続くと、売却したい際に共有した相続人全員の合意が必要になるためお金を捻出したくてもできない可能性があります。
基本的には、共有ではなく他の遺産分割の方法を検討することをおすすめします。
遺言書などを残す際には、遺言書に誰が不動産を引き継ぐのかを明確にしておくことで、共有を回避できます。

遺産分割をしないとどうなる?

相続人全員での話合いである遺産分割協議を行わなければどのようなトラブルになってしまうのでしょうか。
協議の進捗によっては相続手続きが進まない可能性がありますので注意しましょう。

①相続手続きを行えない

遺言書がない場合には、遺産分割協議を行いますが、相続人全員で参加をして決めない限り他の相続手続きに影響がでます。

  1. 遺産の名義変更ができない
  2. 相続税の申告納付が行えない
  3. 共有状態となる

遺産の名義変更ができない

相続手続きの中には、名義変更を行う必要があります。
名義変更等は遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しない限り手続きを行うことはできません。

相続税の申告納付が行えない

誰がどのくらい取得するのかを決めない限り、相続税の計算や申告納付などの手続きも行うことができません。
相続税の申告納付を行わないと、追徴課税という相続税にプラスα税金の支払いをしなければならなくなりますので、相続手続きをスムーズに行うためにも、遺産分割協議を早めにスタートしましょう。

共有状態となる

前述でご紹介しておりますが、遺言書がない場合の相続では、遺産はすべて相続人全員の共有状態となります。
共有状態の場合だと、遺産を売却することや収益不動産として貸出すことができなくなります。
また、共有状態が長引くと、相続人が増えてしまいます。
そうなると、多くの相続人で話合いを行う必要がありますので、早めに協議を行いましょう。

②遺産を勝手に運用・処分される

預貯金や証券は、名義変更が完了するまでの間は、凍結がされるので勝手に運用されることはありません。
しかし不動産などは、名義変更を行えば誰でも売却(処分)ができてしまいます。
実際の相続人がいたとしても、名義変更を行わなければ保有していることを主張できませんので、遺産を勝手に運用・処分されないように遺産分割は早めに対応しましょう。

遺産分割をしなければ、相続時にトラブルになるため必ず専門家に相談をしましょう!

全体の流れと必要な書類

相続は何度も経験するものではありません。
しかし、相続手続きの流れを把握していなければ必要な書類や手続きがわからなくなり、相続税や遺留分・登記手続きなどの期限を過ぎぎてしまう可能性があります。
相続人の中には遠方で生活している家庭もありますので流れを把握しておくことで円滑に相続手続きを行うことができます。
遺産分割を行う際の流れは以下の通りです。

  1. 遺言書の有無の確認
  2. 相続人の確定
  3. 遺産の確定
  4. 遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
  5. 協議がまとまらない場合は遺産分割調停を行う
  6. 調停がまとまらない場合は審判を行う

それぞれに必要な書類もご紹介しておりますので、ご参照ください

①遺言書の有無の確認

相続が開始された場合には、初めに遺言書の確認を行いましょう。
遺言書がある場合とない場合では、相続手続きが大きく異なります。
遺言書が仮に自宅で発見された場合には、開封してはいけません。
家庭裁判所にて検認手続を得なければ、ペナルティがあります。
遺言書を探しても見つからない場合には、協議に進みます。

②相続人の確定

遺言書がある場合には、そこに記載されている人が相続人、もしくは受遺者(遺言書にて被相続人の遺産を受取る人)となります。
しかし、遺言書がない場合には遺産分割協議を行います。
遺産分割協議を行う上で、誰が遺産を引き継ぐ権利があるのかを明確にしなければなりません。
以下のような書類で相続人を確認することができます。

書類名取得場所
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで記載があるもの)市役所
被相続人の住民票除票または附票市役所
相続人の戸籍謄本市役所
家系図被相続人の自宅等

家系図以外は、市役所にて取得する事ができます。
戸籍謄本などの書類は後の相続手続きでも活用しますので、早めに取得しておきましょう。
家系図は所有しているかしていないかわからない場合がありますので、遺品整理の際に発見した場合には活用しましょう。

③遺産の確定

相続人の確定と同様に、被相続人が保有していた財産を確定する必要があります。
遺産の確定の際には、その遺産の評価額を合わせて確認すると良いでしょう。
銀行や証券会社にて残高証明書などを発行することで評価額はわかりますが、不動産や貴金属は専門家に相談しなければ正確な評価額を算出することができません。
そのため、相続人の調査や遺産は専門家に相談しながら調査・確定を行いましょう。
遺産を調査するには、様々な方法がありますが、遺言書などを被相続人が作成する場合には財産目録と呼ばれる書類を作成しておくことで作成がスムーズになります。
裁判所などでも雛形がありますので活用すると良いでしょう。

④遺言書がない場合は遺産分割協議を行う

遺言書の有無・相続人・遺産の確定が済んだら相続人が集まり本格的な遺産分割協議に移行します。
遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要になります。
相続人全員で話合いを行い、前述でご紹介した分割方法や、法定相続分の割合などを考慮して「誰が・どの財産を・どのくらいの割合相続するのか」を決めます。

相続人全員の合意が成立したら遺産分割協議書を作成する

協議にて相続人全員の合意が取れた場合には、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、どの財産を引き継ぐのかなどの内容をまとめて、相続人全員の署名と捺印をして締結します。
協議書は、他の財産の名義変更の際に活用しますので大切に保管しましょう。
遺産分割協議書の作成時には法律で決まった書式はありませんが、専門家に依頼するとスムーズに手続きを行うことができます。

⑤協議でまとまらない場合は調停を行う

遺産分割協議にて相続人全員の合意が得れない場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申立します。
遺産分割調停では、家庭裁判所から選任された調停委員が参加し、相続人全員の意見や主張を伺いながら中立公平な立場で遺産分割の方法の話合いを行います。
調停が成立した際には、調停調書という書類を作成し、相続手続きを進めます。

調停の申立に必要な書類

協議が進まない場合には、調停を行いますが自動的に調停に移行するわけではありません。
調停に必要な書類を準備し家庭裁判所に申立を行い初めて、調停となります。
調停に必要な書類は以下の通りです。

遺産分割調停の申立書
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの)
相続人全員の戸籍謄本
相続人の戸籍謄本相続人全員の住民票または戸籍附票
遺産の評価額がわかる書類(財産目録や残高証明書・固定資産税評価証明書等)

参照:裁判所 遺産分割調停
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
(2024年5月23日 利用)

調停を行う際には、上記の書類以外にも被相続人の続柄によって提出する書類が変わる可能性があります。
また相続人の人数によって費用も変わります。
そのため、調停などを行う際には弁護士などの専門家に必ず相談することをおすすめします。

⑥調停でまとまらない場合は審判を提起する

調停でも相続人同士の合意が得られず調停が不成立になった場合には、遺産分割審判へと移行します。
調停にて、調停委員が遺産分割がまとまる見込みがない場合には、裁判所は一度調停を不成立として終了させて審判へと移行します。
審判は、協議や調停と異なり相続人が割合を決めるのではなく、裁判官が審判(判定)を下します。
遺産分割審判では、原則法定相続分に沿って財産の分配割合を決めます。

審判に必要な書類

遺産分割審判は、調停が不成立になった場合に自動的に移行されるため必要な書類はありません。
調停などを申し立てる際に、提出した書類などを基に裁判官が判定をします。
しかし、審判期日という主張書面や証拠を提出する日が開かれます。
審判になった際には、弁護士などの専門家に相談しながら必要な証拠を集めましょう。

審判の効力

遺産分割審判では、裁判官が相続人に向けて審判を下します。
調停などと異なる点は、審判では相続人に強制力が生じ強制的に債権の改修や遺産の分配を行います。
仮に、審判にて金銭の支払いを命じられた場合には、支払いをしなければなりません。
ここで審判の内容に不服がある場合には、審判が下された日から2週間以内に、即時抗告をしなければなりません。
即時抗告の期限である2週間を過ぎると、相続人は意見を主張することができなくなりますので注意しましょう。

⑦相続手続きを行う

協議・調停・審判などで相続人が引き継ぐ財産の割合などが決まったら、残りの相続手続きを行います。
名義変更や相続登記等の手続きなどは、財産を引き継ぐ人が決まらなければ行えません。
また相続税の計算も各相続人の取得金額が判明しない限りは、申告手続きが行えません。
調停や審判などには、時間がかかります。
そのため相続税の申告時には、あらかじめ多めに相続税を納付して返還を求める「更正の請求」もしくは、「修正申告」などを行う必要があります。

記事のまとめ

今回は、被相続人が保有していた財産を「誰が・どの財産を・どのくらいの割合相続するのか」を決める遺産分割についてご紹介しました。
相続人同士で話し合いがスムーズに行うことができれば、自分たちだけで手続きをすることができます。
しかし遺産分割は、相続人一人一人の考え方が異なるためトラブルになる可能性が多いです。
そのため弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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