遺贈をわかりやすく解説|相続時の手続きや注意点も紹介

遺贈とは遺言書を活用し法定相続人以外に財産を渡すことです

相続の中には遺贈という言葉があるのをご存知でしょうか。
財産を家族以外の人に渡したい。などの場合に活用することで財産を第三者へ渡す事が可能となります。
本記事では遺贈の仕組みとメリット・デメリットから作成方法や注意点などをご紹介します。
家族以外にお世話になった人に財産を渡したい。遺言書の中に遺贈が遭った場合に焦りたくないという方はぜひ一度ご参考ください。

遺贈とはどんな制度?

遺贈とは、遺言書がある場合に被相続人により相続人以外の人に財産を引き継がせることをいいます。
この制度は生前にお世話になった人や、自分を介護してくれた息子(娘)の配偶者へ気持ちを渡したいなどの個人から、病院・地方自治体・各種機関などの法人や団体にも遺産などの財産の一部を渡す事が可能です。
遺贈によって財産を受取る人を受遺者といいますが、相続人ではありません。
そのため後ほどご紹介する相続の基礎控除には含まれないなどの事があります。

参照:e-Gov 法令検索 民法第九百六十四条 包括遺贈及び特定遺贈
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2023/08/24 利用)

相続・贈与・遺贈の違い

財産を分ける・ゆずるという意味で相続や贈与があります。
実際に性質的には似ていますが細かい違いがあります。

相続と遺贈の違い

相続と遺贈では財産を受取る人の範囲が異なります。
相続では受取る権利がある人のみが財産を受け取れますが、遺贈では相続人以外の第三者(他人)に財産を渡す事が可能です。

贈与と遺贈の違い

財産を渡すという行為には贈与が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
こちらも相続と同様に似ていますが、受取る側に受取る意志があるかどうかが異なります。
遺贈では遺言書で「この人に財産を残したい」と意思表示をするものですが、贈与では双方の「贈与する・受取る」という諾成契約の手続きが必要になります。
相続や贈与、どちらとも財産を渡すという意味ですが意思表示や受取る人の範囲によって使う言葉が変化します。

種類は2種類

遺贈には2つの種類があり特定遺贈と包括遺贈の2つの種類があります。
どちらを選ぶかにより内容が大きく違うので注意が必要です。

特定遺贈

特定遺贈とは、特定の財産を指定し受遺者に渡すことです。
「Aさんには預金・Bさんには証券・Cさんには不動産・D法人には預金の一部を」というように財産を指定させる遺言書を作成します

包括遺贈

包括遺贈とは特定遺贈とは反対に、財産を指定せずに受遺者に渡すことです。
「E法人に資産の3分の1を遺贈する」などのように金額や種類などを指定せずに遺贈する旨を遺言書に記載します。

放棄も可能

遺贈は第三者に財産の一部を無償で渡すことが可能ですが、被相続人が一方的に意思表示をしたに過ぎません。
そのため意思表示に対して拒否をすることも可能です。
中にはマイナスの財産(借金など)も合わせて遺贈するなどの場合もありますので遺贈の拒否手続きを行うことで、放棄する事が可能です。

メリット・デメリット

相続や生前の贈与には様々なメリットやデメリットがありますが、遺贈にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

メリット

遺贈を行う最大のメリットは、法定相続人以外に財産を渡す事ができることです。
法定相続人により相続できる権利は持っているが順位が下(孫や兄弟姉妹・甥・姪)の場合は財産を受取る事が難しくなります。
そのような場合に遺贈を活用することで、たとえ相続順位が低くても財産を受取る事が可能になります。
また個人だけではなくNPO法人などの法人にも財産の一部などを渡す事ができますので大きなメリットと言えるでしょう。
また贈与と比較してみても、贈与のような諾成契約などは必要なく被相続人の意思のみで財産を残す事ができます。

デメリット

反対にデメリットは、遺贈とはいえ財産を死後渡しているわけなので税金(相続税)が課税されます。
せっかく受け取ったのに加算される税金によりやむを得ず放棄手続きをしなくてはならないなどの事があります。
また遺贈をした場合には法定相続人の遺留分への配慮なども気にして作成しなければなりません。

注意点は3つ!

遺贈には第三者に財産を渡せるという大きなメリットがありますが、デメリットと同じように注意点が多くあります。
今回はその中でも特に注意しなければならないポイントを3つご紹介します。

相続税が2割加算されます

遺贈による財産の引継ぎの場合は、相続税が2割加算されます。
これは税負担を公平に調整するためと言われています。

相続税の計算の流れ

2割加算の金額を求める場合は、まずは相続税の計算をおさらいしましょう。

  1. 課税遺産総額(課税対象財産-基礎控除額)
  2. 相続税の総額(課税遺産総額÷法定相続分)
  3. 各々の相続税額(受け取った相続割合に応じて割り振る)
  4. 各相続人の相続税額×20%

各々の相続税額がわかった場合に20%をプラスで計算することで2割加算の相続税の金額を調べる事が可能です。

不動産の小規模宅地等の特例が使えないケースがある

小規模宅地等の特例とは一定要件を満たした土地に関しては相続税の減税措置として最大80%評価額を下げる事が可能な制度です。
遺贈でも小規模宅地等の特例が使える!と考える方も多いですが配偶者、同居の親族、生計を一にする別居の親族、3年借家住まいの親族などと限られています。
つまり第三者が受取る遺贈には小規模宅地等の特例が活用できませんので注意しましょう。

受遺者は相続人には含まれない

受遺者は元々法定相続人ではなく第三者です。
法定相続人と同じように財産を受け取れますが、法律で定められているわけではありません。
また相続税の基礎控除である【3,000万円+(600万円×法定相続人の数】の中法定相続人にも含まれません。

法定相続人以外の人が財産を受取る場合には、基礎控除の計算には含めずに相続人だけの人数で基礎控除を計算しましょう。

遺贈する場合の遺言書の作成手続き

遺贈は遺言書に記載をすることで効力が発揮されます。
遺言書には書式やルールがあり、不備がある場合遺言書事態が無効になるケースもあります。
遺言書の書き方やルールに関しては司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
ですが相談する前に遺言書の概要などをわかりやすくまとめている記事がありますのでまずはこちらを御覧ください。
ここでは遺言書を書く上での流れと手続きをご紹介します。

遺贈があることを相続人に伝える

まずは、遺贈を死体人がいることを相続人に伝えましょう。
相続人の中には遺贈する事自体に反対をする方も多くいらっしゃいます。
財産を渡す想いを相続人に伝えておくことで揉める事なく遺贈をする事が可能です。
また受遺者にも遺贈する旨を伝えましょう。
ご紹介した通り、遺贈によって受け取った財産には相続税が課税され2割程度の割合が加算されます。
放棄をさせないためにも遺贈する旨を伝えておくと良いでしょう。

公正証書遺言で作成

遺言書にはルールが決められており不備があるときは無効になります。
公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言と異なり公証人が作成するため遺言書が無効になることを防ぐ事が可能です。

遺留分侵害にならないように注意

遺贈を行う場合には、法定相続人が最低限財産を受取る割合である遺留分に注意して作成をしましょう。
受遺者だけが多くの財産を貰う場合、不満が大きくなる可能性があります。
法定相続人の遺留分は以下の図のような割合です。

遺言執行者を指定

遺贈を実現するためには、遺言書の内容を実現するために手続きを行う遺言執行者を指定しておきましょう。
仮に不動産などを受遺者が受取る際は、単独では所有権移転登記などの登記手続きを受遺者は行えません。
不動産を遺贈する場合は必ず遺言執行者を指定し共同申請してもらえるようにしましょう。

相続のご相談は相続ぽるとへ!

相続ぽるとでは、遺贈だけではなく「相続の適切な入り口」としてみなさまにご利用いただいております。
遺贈は遺言書の書き方だけではなく相続税の計算など司法書士や税理士に依頼することをおすすめされます。
しかし各専門家との連絡が必要になるなどの相続人・被相続人の負担になるケースが多いです。
我々相続ぽるとでは、問題解決ができる専門家を必要に応じてお繋ぎしやり取りも併走してフォロー致します。
相続について漠然とした不安があるという方でもお気軽にご相談ください。

記事のまとめ

今回は、遺贈とはどんな仕組みなのか。メリット・デメリットから税金の計算方法などをご紹介しました。
遺贈は相続や贈与と似ていますが実際には範囲や意志・相続税の加算などの違う部分も多くあります。
遺贈を実現するためには被相続人の意思表示もそうですが、相続人との関係・遺言書の書き方など付随して気にしなければならない項目が多くありますので注意しながら遺贈をしましょう。