相続手続きは多岐に渡るので注意!
大切なご家族が亡くなった際には、誰が亡くなった方の財産を引き継ぐのかを決めなければなりません。
そんなに財産をもっていないから手続きは大変じゃないと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、遺言書の確認や各財産の名義変更(登記)など引き継ぐ財産によって相続人ごとに必要な手続きは異なります。
今回は、相続の基本となる手続きの流れについてご紹介します。
何度も経験することではない手続きを円滑に進めるためにも気になる方はぜひ一度ご参照ください。
全体の流れを抑えるのが重要
基本的に相続が発生した場合に行う手続きの大まかな流れはみなさん変わりません。
しかし、引き継ぐ遺産によって名義変更の手続きがそれぞれ異なります。
さらに流れの1つをとっても行わなければならない手続きが異なります。
例えば、遺言書1つを例にしても公正証書遺言にはない、検認手続きという自筆証書遺言や秘密証書遺言などの場合には家庭裁判所で行わなければならない手続きなどもあります。
その中には期限付きと期限がないものまで様々あります。
そのため、流れの全体像を知っておくことでスムーズに手続きを行うことができます。
大まかな流れは次のようになります。
相続発生から起算した経過日 | 行う手続き |
7日以内 | 死亡届 |
10日以内 | 年金受給権者死亡届(厚生年金の場合のみ。国民年金は14日以内) |
14日以内 | 世帯主変更届・介護保険等の資格喪失届 |
3カ月以内 | 承認方法の申立 |
4カ月以内 | 準確定申告 |
10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 |
1年以内 | 遺留分侵害額請求 |
3年以内 | 相続登記 |
この流れとは別に以下のようなことも行わなければなりません。
- 葬儀・埋葬
- 遺言書の確認(検認)
- 相続人・遺産の確認
- 遺産分割協議
- 各財産の名義変更手続き
- 必要書類の準備
この他にも行わなければならない手続きがある可能性もありますので、気になる方は専門家に相談することをおすすめします。
早めに行ったほうがいいこと
ここからは実際にどのような手続きを行う必要があるのかをご紹介します。
知らなかったと言っても期限は待ってくれませんので自分にはどのような手続きが必要なのか確認しましょう。
まずは期限は設定されていないが早めに行うと良いことをご紹介します。
- 遺産分割協議
- 遺言書の確認
- 相続人の確定
- 各財産の名義変更(不動産は期限あり)
遺産分割協議
遺産分割協議とは、遺言書がない場合に遺産を誰がどの程度引き継ぐのかを相続人全員で決める話し合いのことを指します。
遺言書がない場合には、遺産分割協議を行わなければ相続税の計算などを行うことができません。
また遺産分割協議は、全員の合意がなければ成立しません。
そのため誰か1人でも反対する人がいた場合にはその分割方法では相続が行えません。
遺産分割協議に期限は決められていませんが、まとまらないと相続税の申告納付期限を過ぎてしまう可能性があります。
手続きをスムーズに行いたい場合には、弁護士などの専門家を依頼することで、代わりに協議を進めてくれるので不安な方は相談をすることをおすすめします。
遺言書の確認
相続が開始された場合には、被相続人が遺言書を残していたのかをまず確認しましょう。
遺言書は相続時に大きな効力を有しており、有効と認められた場合にはその内容に沿って遺産を分配する必要があります。
遺言書にはいくつか種類があり、以下のような手続きが必要になります。
種類 | 手続き |
公正証書遺言 | 相続人・遺産の確認 |
自筆証書遺言 | 家庭裁判所にて検認の手続き |
秘密証書遺言 | 家庭裁判所にて検認の手続き |
遺言書の中身に不満がある場合は、全員の合意を得ることができれば遺産分割協議によって遺産を分配することができます。
しかし全員の合意が必要なため、一部の相続人が合意しない場合は、遺言書に記載された内容に従う必要があります。
また、合意に至るまでの協議は複雑で時間がかかることがあるため、専門家(弁護士など)に相談することをおすすめします。
相続人の確定
遺言書があれば原則その内容に沿って財産を分けますが、遺言書が見つからない場合には遺産分割協議を行う必要があります。
その際には、誰が財産を引き継ぐ権利があるのかを確定しなければなりません。
仮に遺産分割協議が終了したとしても遠方に財産を引き継ぐ権利をもっている相続人が現れた場合には、その協議は無効になりはじめから手続きを行う必要があります。
相続人の確認方法は、元気な間から家系図や戸籍謄本等を活用することで把握をしておくことが重要です。
遺産の確認
相続人の確認と同じくらい大切なのが被相続人が保有していた財産を確認することです。
相続財産の中には現金や不動産以外にも宝石などの貴金属や家具などの財産も引き継ぐ対象となります。
上記のような財産のことをプラスの財産と言います。
しかし、住宅ローンや借金などの返済しなくてはならない債務も引き継ぐ対象となります。
このような財産をマイナスの財産といい、相続ではプラスの財産とマイナスの財産を引き継ぐことになります。
プラスの財産だけ取得し、マイナスの財産を受け取らないということはできません。
被相続人の財産を引き継ぐということは、マイナスの財産も引き継ぐことも指します。
そのため、プラスの財産がどれだけあるのか。マイナスの財産はどのくらいなのかを明確に把握することが重要になります。
遺産を把握しておくためには、財産目録と呼ばれる保有している財産の名称や金額(不動産の場合は評価額)などが記載された書類を作成しておくとスムーズに手続きを行うことが可能です。
相続発生前から被相続人の財産の棚卸しとして作成をしてもらうことで、その後の手続きを円滑に行うことができます。
各財産の名義変更(不動産を除く)
各財産を遺言書または遺産分割協議にて引き継ぐ人が決まった場合には、各財産の名義変更手続きを行う必要があります。
預貯金などの口座も名義変更をしなければ引き継いだことになりませんので注意しましょう。
各財産の名義変更に明確な期限はありませんが、不動産などの所有権移転登記(相続登記)だけは異なります。
相続登記は、2024年4月1日以降義務化がされ、義務に違反をすると行政上のペナルティ(過料)になります。
また、今までは登記に期限はありませんでしたが法改正により相続による取得を知った日から3年以内に行わなければなりません。
登記手続きなどは自分で行うことも可能ですが、必要な書類の準備や手続きなどがあるため司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続開始から7日~14日以内の手続き
前述では期限が定められていないが早めに手続きを行っておくと良い項目についてご紹介しました。
ここからは、期限が決められている手続きについて詳しくご紹介します。
初めは相続が開始されてから7日~14日以内に行うべき手続きです。
- 死亡診断書の受取
- 死亡届の提出
- 年金受給者死亡届の提出
- 世帯主変更届の提出
- 介護保険関連
死亡診断書の受取(7日以内)
死亡診断書とは、被相続人が亡くなったことを判定した後に発行する書類です。
ここでは発行の手数料のみを支払うことで受取ることができます。
診断書は別途必要になる箇所がありますので、コピーを何部かしておくと良いでしょう。
死亡届の提出(7日以内)
死亡診断書を受け取った際には、死亡届を提出します。
この書類は、上記でご紹介した死亡診断書とセットで渡されるため受取後は速やかに記載をしましょう。
法務省などのHPや各地域の役所などに詳しい記載方法が記されていますので参考にしながら作成しましょう。
年金受給者死亡届の提出(10日以内 国民年金は14日以内)
年金を受給していた場合には、年金の振込をストップする年金受給権者死亡届を提出しましょう。
この手続きを行わなければ、年金を不正に受け取ったとされ法的な責任を問われる可能性があります。
被相続人が亡くなっても口座に年金が振り込まれ続けてしまうと他の受給者との公平性がかけてしまいます。
その他にも遺族年金へのスムーズな移管などにも関わりますので必ず提出を行いましょう。
世帯主変更届の提出(10日以内)
被相続人が世帯主である場合には、世帯主が変わるため役所へ世帯変更届を提出しなければなりません。
しかしこの場合、世帯主である被相続人が1人の場合や残された世帯員が15歳未満の子どもと親権者の場合はこの手続きを行う必要はありません。
介護保険関連(14日以内)
65歳以上または40~65歳未満の方で要介護・要支援状態の場合には介護保険被保険者証の返却が必要になります。
またそれに合わせて介護保険資格喪失届の提出が必要になります。
資格喪失届は、市区町村の役場にあるため特段必要なものはありません。
しかし、未納保険料などがある場合には同時に手続きを行いましょう。
相続開始から14日以内に行う手続きについてご紹介しました。 どれも一つだけであれば問題なく行えますが、一度に全て行わなければならないとなると専門家の協力を仰いだほうがいい場面も多々あります。
相続開始から1~4ヶ月以内の手続き
相続が発生してから1~4ヶ月以内に行わなければならない手続きは次の通りです。
- 国民健康保険の返却
- 口座凍結の連絡
- 遺産の承認方法の申立
- 被相続人に収入があれば準確定申告
国民健康保険証の返却
死亡届を提出した時点で、国民健康保険の資格は喪失しますが保険証も返却しなければならないため被相続人の市役所に返却を行いましょう。
口座凍結の連絡
被相続人が亡くなった際に、金融機関は本人の財産を保護するために取引に一時的な制限をかける口座凍結を行います。
ここでの本人の財産の保護とは、相続人が被相続人の預金から多額の出金を行うなどのトラブルを防ぐなどの理由があります。
この口座凍結は、家族が銀行に伝えるか銀行が本人の死亡の事実を把握した際に凍結されます。
凍結の解除には各金融機関によって方法が異なりますので、気になる方は被相続人の使用している銀行を事前に調べておくと良いでしょう。
遺産の限定承認・放棄の申立(3ヶ月以内)
遺産を引き継ぐ際には、プラスとマイナスどちらの財産も引き継がなければなりません。
マイナスの財産が多い場合には、次の2つの引き継ぎ方法を決めることができます。
- 限定承認
- 相続放棄
限定承認
限定承認とは、被相続人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことです。
もう少し詳しくご紹介すると、借金などのマイナスの財産をプラスの財産の中で精算をし遺産が余った場合には差分を引き継ぐことです。
限定承認を行うことで、相続人はマイナスの財産を引き継がずに済みます。
限定承認を行う際には、相続人全員の合意がなければ手続きを行うことができませんので注意しましょう。
相続放棄
相続放棄とは、相続に関わる権利を全て放棄することを指します。
そのため放棄をすると相続手続きを一切行わずに済みますが、相続に関する権利を放棄しているので被相続人の財産を引き継ぐことはできません。
相続放棄をする際は、限定承認と異なり単独で手続きを行うことができます。
相続放棄も限定承認もどちらも、相続を開始してから3ヶ月以内に家庭裁判所で申立手続きを行う必要があります。
手続きの具体的な流れや書類・費用に関しては専門家に相談することをおすすめします。
被相続人に収入があれば準確定申告
被相続人が事業所得や不動産所得などの一定の所得がある場合には、準確定申告という手続きを行わなければなりません。
準確定申告とは、被相続人の代わりに相続人が確定申告の手続きを行うことです。
準確定申告は、相続開始から4ヶ月以内に手続きを行わなければ追徴課税の対象になりますので、手続きに不安な方は税理士などの専門家に相談しましょう。
相続開始から10ヶ月以内の手続き
相続開始から様々な手続きを行う必要がありました。
しかし、相続手続きの最後には相続税の計算をし基礎控除枠を超えている場合には相続税を申告・納付しなければなりません。
相続税の申告・納付手続き
遺言書や遺産分割協議などで決まった内容で、財産を引き継ぎ名義変更が終了した際には相続税の計算をします。
相続税は【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】で算出した金額が基礎控除枠となります。
取得した金額から基礎控除枠を差し引いて0以下であれば相続税を納付しなくても問題ありません。
しかしこの基礎控除を超過してしまった場合には、管轄の税務署に相続税を納付しなければなりません。
相続税は相続開始から10ヶ月以内に手続きを行う必要がありますので、不安な方は税理士などの専門家に相談しましょう。
相続開始から1年以内の手続き
相続開始から1年以内に行わなければならないのは、次の手続きです。
- 遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求とは、遺留分(相続人として最低限財産を受け取れる権利)を侵害された場合に相手方に不足分を現金で請求する権利です。
遺留分を侵害された場合には、どの程度侵害されているのか計算をしなければなりません。
また、自身の遺留分が侵害されたいた場合に1年以内に手続きを行わなければ時効が成立してしまいます。
請求方法や遺留分の計算などに関しては専門家に相談すると良いでしょう。
こちらの記事でもご紹介しておりますので気になる方は、ぜひご参照ください。
相続開始から3年以内の手続き
相続が開始されてから税金の計算・納付まで様々な手続きを行う必要がありました。
ここでは法改正により新たに3年以内に手続きを行わなければならない相続登記(不動産の所有権移転登記)についてご紹介します。
相続登記
相続登記とは、故人の名義である不動産(建物・土地)を相続人に移転するための登記手続きです。
相続発生から3年以内にこの登記手続きを行う必要があります。
不動産の正式な所有者を明確にするため、不動産の登記は法的にも重要になります。
不動産の相続登記は、遺産分割協議が整った後、必要な書類を法務局に提出して進めます。
登記には戸籍謄本や遺産分割協議書などが必要ですが、登記の流れは専門知識を要するため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。
3年以内に不動産の登記を行わなければ、行政上のペナルティとして過料が科されます。
そのため不動産を引き継ぐと決まった際には登記手続きに関して迅速に専門家に相談することが望ましいです。
また、登記は不動産の価値を保持し、法的トラブルを防ぐためにも重要です。
必要になる書類
相続が開始されると様々な手続きを行わなければなりません。
しかしどの手続きが必要であるのかは、ご家庭によって異なります。
そこで今回は手続きの中でみなさんに共通する手続きの書類に関してご紹介します。
- 遺言書関連
- 遺産分割協議関連
- 承認方法関連
- 相続登記
遺言書関連の書類
遺言書関連で必要になる書類は主に検認手続きの申立手続きです。
検認は公正証書遺言には必要なく、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合には手続きが必要になります。
検認の申立手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 検認申立書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの)
- 相続人(全員)の戸籍謄本
その他にも必要になる書類がある場合もありますので、その際は追加で提出を行いましょう。
遺産分割協議関連の書類
遺言書がない場合に全員で遺産分割協議を行う場合には以下の書類が必要になります。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの)
- 被相続人の住民票の附票・除票
- 相続人(全員)の戸籍謄本
- 相続人(全員)の実印と印鑑証明書
- 財産目録
承認方法関連の書類
相続開始から3ヶ月以内に行わなければならない、財産の承認(限定もしくは放棄)は家庭裁判所に書類を提出しますがそれぞれ提出する書類が異なります。
それぞれの提出する書類は以下の通りです。
限定承認 | 相続放棄 |
限定承認申述書 | 放棄申述書 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの) | 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの) |
被相続人の住民票の附票・除票 | 被相続人の住民票の附票・除票 |
相続人(全員)の戸籍謄本 | 放棄する人の戸籍謄本 |
財産目録 | 収入印紙代(800円) |
収入印紙代(800円) | 家庭裁判所からの連絡切手 |
家庭裁判所からの連絡切手 | – |
裁判所:相続の限定承認の申述
(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html)
裁判所:相続の放棄の申述
(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)
(2024年4月30日 利用)
相続登記の書類
遺産分割協議や遺言書で不動産を引き継ぐ際には、相続登記の手続きが必要になります。
登記手続きに必要な書類は遺言書・遺産分割協議で異なります。
提出する書類は以下の通りです。
遺言書 | 遺産分割協議 |
遺言書(検認済み) | 遺産分割協議書 |
登記申請書 | 登記申請書 |
被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの) | 被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの) |
被相続人の住民票除票 | 被相続人の住民票除票 |
不動産を取得する人の戸籍謄本 | 不動産を取得する人の戸籍謄本 |
不動産を取得する人の住民票(附票でも可) | 不動産を取得する人の住民票(附票でも可) |
固定資産税評価証明書 | 固定資産税評価証明書 |
– | 相続人全員の印鑑証明書 |
– | 相続関係説明図 |
相続登記の書類は準備するのに手間がかかります。
また登記申請書の作成には法律的な知識も必要になりますので、不安な方は司法書士などの専門家に相談すると良いでしょう。
相談はどこにするべき?
相続の相談は多岐にわたり相談先をどこにしたら良いのかわからなくなります。
ここでは各専門家がどのような対応を専門としているのかご紹介します。
各専門家 | 提供しているサービス |
弁護士 | 相続全般や相続人同士のトラブルなどへの相談 |
司法書士 | 遺言書や不動産(登記)に関する相談 |
税理士 | 相続税(準確定申告)の申告などに関する相談 |
行政書士 | 遺産分割協議書などの書類作成に関する相談 |
民間企業 | 相続全般や一人一人の不安や疑問にあった専門家を紹介してくれる |
上記以外にも自治体などに相談することもできます。
無料相談を行っている専門家もありますので気になる・不安な方はまずは相談をしてみることをおすすめします。
記事のまとめ
相続の手続きは期限が決められている手続きから、決まってはいないが早めに行うと今後の手続きがスムーズになるなど知っておくだけでも手続きはスムーズに行えます。
しかし、手続きの手順はわかっていても大切な家族が亡くなった悲しみや相続人同士でのトラブルが起きてしまうなどのことが相続では起きてしまいます。
そうならないためにも、早めに相談をすることで対策方法などを知ることができます。
手続きに関してどこに相談したらいいか迷われた場合には、私たち相続ぽるとにご相談いただければみなさまの悩みや不安にあった専門家をご紹介しております。
相続ぽるとでも無料相談も行っており費用はかかりませんので、お気軽にご相談ください。