不動産を相続した場合の税金の計算方法は?

不動産を相続した場合、どんな税金がかかるの?

親が自宅や収益不動産を所有している場合、相続時には不動産(建物・土地)を引き継ぐことになります。
不動産は他の財産に比べると大きな遺産のため相続税が高くなると不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産を相続した場合に課税される税金や土地の評価額の計算方法・税金を軽減するために活用できる制度などをご紹介します。
親が不動産を所有している方・土地の評価方法などを知りたい方はぜひご参照ください。

不動産を相続した場合の税金は何が課税される?

不動産を相続した場合には、どのような税金が課税されるのか不安な方も多いのではないでしょうか。
前述でご紹介しましたが、不動産は大きな財産のため他の遺産に比べると相続税が課税される可能性が高くなります。
実際に不動産を引き継いだ場合には、次のような税金が課税されます。

  1. 登録免許税
  2. 相続税

①相続税

相続税とは、被相続人の保有していた財産を引き継いだ際に基礎控除を超過した場合には納税しなければならない税金です。
土地や建物などの不動産は、大きな遺産のため評価額によっては相続税の基礎控除である【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】を超えてしまう場合があります。
基礎控除を超過してしまった場合には、相続税を納付する必要があります。
計算方法は、税金の計算方法をご参照ください。

②登録免許税

1つ目の税金は登録免許税です。
登録免許税とは、不動産や船舶、会社などの登記・登録・免許などの証明に関して課税される税金です。
不動産の場合は、所有権が相続人に移転するため所有権移転登記が必要になります。
不動産は土地だけではなく建物も含まれます。
不動産の登録免許税の税率は、0.4%と定められており固定資産税評価額に税率をかけた金額を納付します。

登録免許税
固定資産税評価額×登録免許税(0.4%)

固定資産税評価額とは、土地と建物の評価方法のことです。
この評価額は、不動産が所在する区市役所の窓口、もしくは申請書を作成すれば郵送で取得することが可能です。
この評価額は、相続人や成年後見などの一部の限られた人のみ取得することが可能です。

納税方法・納税先

登録免許税は、原則現金納付とされていますが印紙納付・キャッシュレス納付(ネットバンキング・ORコード等)があります。
しかし、登記・登録されている方法によって納税方法などは決められています。
現金納付であれば確実に納税することができます。
また納税する際は、不動産が所在している税務署に納税をしましょう。

注意!不動産取得税が必要な場合があります

不動産に課税される税金の一つに不動産取得税という税金があります。
不動産取得税とは、土地や建物を購入・贈与によって取得した際に課税される税金です。
こちらの税金は、登記の有無や有償・無償に関わらず不動産を取得した際には一律で課税される税金です。
不動産取得税の税率は、原則4%とされていますが現在は軽減税率が適用されているため土地・建物に関しては3%の税率が課税されます。
しかし相続によって不動産を取得した際には、これに該当しません。
一部のケースを除いて不動産取得税は課税されませんが、以下のようなケースでは相続税が課税される可能性があります。

  1. 死因贈与
  2. 特定遺贈
  3. 相続時精算課税制度

死因贈与

死因贈与とは、被相続人の死亡をもって効果が発揮される贈与のことです。
相続は被相続人が亡くなった場合に自動的に起きるものですが、死因贈与は契約(契約は口頭でも成立します)を締結しなければ効果が発生しません。
被相続人の死亡をもって効果が発揮される点では同じですが死因贈与は、贈与に含まれますので不動産取得税の課税対象となります。

特定遺贈

特定遺贈とは、相続時に相続人以外の第三者に保有していた遺産を引き継がせる制度のことで遺言によって成立します。
不動産取得税は、引き継ぐ人が相続人であれば税金は課税されませんが第三者が遺産を引き継ぐ場合には不動産取得税が課税されます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫に財産を贈与する場合に2,500万円の控除枠(特別控除)と年間110万円までの控除枠(基礎控除)が設定されている贈与の仕組みのことです。
この制度を活用し特別控除枠2,500万円で、不動産を贈与することも可能ですが、相続時には相続財産として相続税の課税対象となります。
相続時には相続財産としてカウントされますが、贈与によって財産を引き渡しているため不動産取得税が課税されます。

相続時には不動産取得税は課税されませんが、一部の場合は課税されてしまいますので不安な方は専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

不動産の評価方法

不動産の評価方法は、様々な種類がありますが今回は相続時に主に活用する3つの評価方法をご紹介します。

  1. 実勢価格
  2. 路線価
  3. 固定資産税評価額

1.実勢価格

実勢価格とは、不動産が市場で実際に取引(売却)された際の価格のことです。
実勢価格は実際の取引(売却)時の価格になるため財産の分け方を決める遺産分割協議などで役に経ちます。
実勢価格を調べるには、次のような方法で調べます。

  1. 国土交通省の「取引価格情報」
  2. 公示地価から算出する
  3. 固定資産税評価額から算出する
  4. 路線価から算出する
  5. 不動産会社に査定費用を支払い依頼する

2.路線価

路線価とは、道路に面している土地の1平方メートルあたりの評価額のことです。
路線価は1平方メートルあたり千円単位で表示されており、路線価×土地面積で求めることができますが土地毎に地形は異なるため奥行価格補正率を用いて計算します。

路線価を用いた土地・相続税の計算式
路線価×奥行価格補正率×土地面積

路線価は、国税庁のホームページで閲覧することができますが毎年7月1日に更新されていますので、気になる方は計算してみると良いでしょう。
また、奥行価格補正率も同様に国税庁で閲覧することができますので、路線価にて不動産の評価額を決める場合には活用しましょう。

3.固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、登録免許税や不動産取得税の納税に必要になる価額のことです。
建物などの評価額を算出する際に活用します。

税金の計算方法

実際に土地や建物を相続によって引き継いだ場合でも、相続税の計算方法は変わりません。
今回は大きく3つの段階に分けて相続税の計算方法をご紹介します。

  1. 遺産の総額を計算する
  2. 基礎控除を差し引き課税遺産総額を算出
  3. 課税遺産総額から相続税を計算する

以上のような流れになります。
今回はわかりやすくご紹介するために3つのステップでご紹介していますが、本来の相続にかかる様々な税金の計算は複雑になるためご自身やご家族に相続税が課税されるのかどうかは、専門家に相談することをおすすめします。

①不動産を含めた遺産の総額を計算する

まずは不動産を含めたすべての遺産の総額を計算します。
この時点では税金は発生しないのでご安心ください。
相続時には被相続人が保有していたあらゆる財産が税金の課税対象となります。

  • 現金・預貯金
  • 不動産
  • 有価証券
  • 動産(自動車・骨董品・貴金属・家財等)
  • 相続開始3年~7年以内に受け取った生前贈与
  • 借金
  • ローン
  • 未払い・滞納している税金
  • 公共料金の未払い

この他にも生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産などもありますが、まずは不動産を含めたすべての遺産を計算しましょう。

②基礎控除を差し引き課税遺産総額を計算する

遺産の総額を計算した後には、相続税の基礎控除である【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】で計算した控除額を差し引き課税遺産総額を計算します。
例えば、遺産の総額が1億円・相続人が3人の場合、3,000万円+(600万円×3)=4,800万円が基礎控除額となります。
総額から基礎控除額を差し引き課税遺産総額を計算します。
1億円-4,800万円=5,200万円。
今回の場合は、5,200万円が相続税の課税対象財産となります。

③課税遺産総額から相続税を計算する

課税対象財産の金額が出た後に、各相続人の取得割合を計算することで相続税を計算することができます。

注意!確定申告が必要な場合も

不動産の相続は所得として扱われないため所得税の納付や確定申告は原則必要ありません。
しかし相続した不動産を売却し現金化した場合や、家賃収入などの賃料を受け取れる収益不動産などを相続した場合には、確定申告が必要になります。
既にご自身の自宅をお持ちであり、相続後不動産を売却する予定の方は、確定申告が必要になりますので専門家に必ず相談しましょう。

不動産を相続した際の手続き

相続によって財産を引き継いだ際には、10ヶ月以内に相続税の申告・納付を行わなければなりません。
ここでは、財産を引き継いだ際に必要になる相続手続きを4つのステップでご紹介します。

  1. 相続人・相続財産の確定
  2. 相続税の計算
  3. 相続税の申告・納付
  4. 登記手続き

①相続人・相続財産の確定

まずは今回発生した相続において、財産を受け取る権利を持つ相続人と財産を確定させます。
相続人は家系図などから連絡を取り、財産は財産目録などを事前に作成しておくと手続きがスムーズに進みます。

不動産の場合、不動産が所在する市区町村から名寄帳や固定資産税評価証明書などから見つけ、法務局で登記事項証明書を取得しましょう。
その他にも、登記識別情報通知や登記済権利証などの場所を予め共有しておくと判別しやすくなります。

②相続税の計算

前述でご紹介した相続税の計算方法を用いて、自身に課税されるのかされないのかを判断します。

③相続税の申告・納付

相続税の計算をした際に、基礎控除枠を超えた金額の場合相続税の申告納付手続きを行います。
相続税は、相続開始を知った日から10ヶ月以内に行わなければなりませんので、注意しながら手続きを進めましょう。

④登記手続き

不動産を引き継いだ後、所有権が相続人に移転するため所有権移転登記(相続登記)手続きを行いましょう。
相続登記は、2024年4月1日以降から義務化が始まり、相続登記を行わなければ行政上のペナルティ(過料)が課せられます。
そのため相続財産の中に不動産がある場合には必ず相続登記を行いましょう。

不動産を相続した際に税金を軽減できる対策3選

不動産などの大きな遺産を相続によって取得した場合、多くの相続税を納税しなければならない可能性があります。
しかし、相続時に課税される税金を軽減することが可能な制度がいくつかあります。
ここでは、不動産を相続した際に活用することができる税金を軽減できる制度を3つご紹介します。
軽減できる制度はいかの3つです。

  1. 配偶者の税額軽減
  2. 小規模宅地等の特例
  3. 家なき子特例

①配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減(=配偶者控除)とは、被相続人の配偶者が相続によって遺産(財産)を引き継いだ際に活用することができる特例です。
遺産分割協議などによって引き継いだ金額のうち、[1億6千万円]または[配偶者の法定相続分]どちらか多い金額までは税金が課税されない制度です。
不動産などの金額が大きい財産を引き継ぐ場合、配偶者に引き継がせることで大きい財産でも節税することができます。

適用要件

配偶者控除を活用する場合には、以下の要件を満たす必要があります。

  • 戸籍上、被相続人の配偶者である
  • 相続税の申告期限までに遺産分割協議または遺言書にて分割方法が決まっている

上記の要件を満たさなければなりません。
そのため、分割方法は決まっていない場合や内縁関係(事実婚)のような場合では配偶者控除を活用することができませんので注意しましょう。

計算方法

配偶者控除を活用する場合の計算方法は以下の通りです。

配偶者が取得した遺産総額ー[1億6千万円または配偶者の法定相続分]

配偶者控除を活用して相続税が0円、つまり非課税になる場合でも相続税の申告は必要になりますので必ず申告を行いましょう。

②小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人が保有している土地のうち一定の要件を満たす場合土地の評価額を最大80%減税できる制度のことです。
土地によっては、評価額が大きい土地を手放さなければならず残された配偶者や相続人が売却しなければならない可能性を考慮して作られた制度です。
この制度を活用することで、課税される税金を抑えることができるため節税効果が期待できます。

適用要件

小規模宅地等の特例を活用する場合、使用用途や平米数によって減額割合が変化します。

分類用途平米数減額割合
特定居住用宅地被相続人が自宅として使用していた土地330㎡80%
特定事業用宅地被相続人が事業用に使用していた土地400㎡80%
貸付用事業宅地被相続人が貸付用に使用していた土地220㎡50%
特定同族会社事業用宅地被相続人が会社として使用していた土地400㎡80%

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
(2024年4月26日 利用)

また対象者は以下の通りです。

  • 配偶者
  • 同居親族

小規模宅地等の特例を活用し土地に課税される税金の割合を低くする場合には、被相続人と生活を共にしていなければなりません。
そのため、亡くなる直前に居住を開始しすぐに元の自宅に戻る場合には特例は活用できませんので注意しましょう。

計算方法

実際に小規模宅地等の特例を活用する場合、どのような計算方法になるのでしょうか。
ここでは被相続人が亡くなるまで自宅として活用していた土地の計算方法をご紹介します。
①評価額6,000万円・面積が300㎡の場合
この場合特例の範囲内に土地の面積が含まれているので次の計算式となります。
6,000万円×80%=4,800万円
6,000万円ー4,800万円=1,200万円が相続税の課税対象財産となります。
②評価額6,000万円・面積が400㎡の場合
この場合、特例範囲よりも面積が超過しているため330㎡まで減額されます。
6,000万円÷330㎡/400㎡×80%=3,960
6,000万円-3,960=2,040万円
2,040万円が相続税の課税対象財産となります。

③家なき子特例

家なき子特例とは、同居をしていない相続人が不動産を引き継いだ際に小規模宅地等の特例を適用することができる制度です。

適用要件

家なき子特例では、小規模宅地等の特例よりも適用要件が増えています。
特例を活用するためには、次の4つの要件を満たす必要があります。

  1. 被相続人に配偶者・同居の親族がいない
  2. 相続開始前3年以内、次の要件の持ち家に居住していない
    ・本人の持ち家
    ・本人の配偶者の持ち家
    ・3親等以内の持ち家
    ・特別関係のある一定の法人の持ち家
  3. 相続開始から10ヶ月以上所有し続ける
  4. 一度も家屋を所有したことがない

以上の要件を満たす必要があります。
適用できる土地は330㎡が最大であることなど小規模宅地等の特例よりも適用要件は厳しくなっています。不動産にかかる税金を抑えることはできますが、適用できるか不安な方は専門家に相談することをおすすめします。

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記事のまとめ

今回は不動産を引き継いだ際に課税される税金について、税金の種類から計算方法・活用したい制度についてご紹介しました。
不動産は大きな遺産になるため、制度を活用しなければ多くの税金が課税されてしまう可能性が十分にあります。
戸建てでもマンションでも不動産の評価方法は変わりありませんが、相続財産に不動産がある場合には。評価の計算以外にも名義変更手続きなどを行わなければならないため必ず専門家に相談することをおすすめします。