税務調査は5~6人に1人が対象に!
相続手続きの中には税金の申告納付をしなければなりません。
しかし、「相続税の申告に漏れがあると税務調査がある」・「税務調査は約2割の人が行われており、追徴課税を支払っている」などを見たことがある方は多いのではないでしょうか。
本記事では、相続時に行われる税務調査とは何をするのか。
税務調査が入らないようにできる方法などを中心にご紹介します。
後述で詳しくご紹介しますが、たとえ調査が入った場合でもきちんと準備をして適切な対応をすれば余計な税金を納付する必要はありません。
困った時の相談先などもご紹介しておりますので、ぜひ一度ご参照ください。
相続税の税務調査とは?
そもそも相続税の税務調査は何でしょうか。
調査されるのはどんなことなのかなど、基本的な部分をご紹介します。
何を調査するの?
税務調査の目的は、納税申告者が適切な申告納付を行っているかをチェックすることです。
そのため、相続税での目的は「申告された相続税が正しく申告されて適切な税金を納付しているのか」を税務署がチェックをしています。
相続税の申告時には、様々な財産の情報を提出する必要があります。
例えば、以下のような財産の情報を、確認することができます。
対象項目 | 内容 |
---|---|
預貯金 | 入出金の流れや残高など |
不動産 | 所有権を保有しているのは誰なのか・誰が引き継ぐのか |
株式や国債などの証券 | 購入履歴や売却履歴、保有年数などの情報 |
生命保険 | 保険金の金額など |
国税庁はKSKシステム(国税総合管理システム)を活用し、納税者情報を閲覧することができます。
上記のような財産の状況と実際に申告された、申告書の内容に相違がないのかを税務署は照らし合わせながら確認を行います。
この確認で不備や不審な点がある場合には、税務調査に入ります。
2つの税務調査
実は、税務調査には2種類あり、任意調査と強制調査。
上記の2つのどちらで調査を行います。
任意調査
任意調査とは、税務署から連絡があり、「◯月◯日◯曜日に行う」などの時期を事前に決めてから行う調査のことを指します。
事前に決めることができるので、書類の準備などを行うことができます。
「任意」と記載されていますが、原則断ることはできません。
強制調査
強制調査とは、任意を拒否した場合やあきらかな脱税などを行った際に、税務署の国税局査察部が強制的に行う調査のことです。
強制の場合、任意と異なり時期に関する事前の連絡はありません。
基本的には、任意調査で終わることが多いのでそこまで不安に感じることはありません。
税務調査の時期
実際に税務調査が行われるのは、すぐに行われるのではなく1年~2年などの期間が空いた後に税務署から連絡がきます。
実際に行われるのは「申告の翌年または翌々年の8月~11月」が多くなっています。
しかし、必ずしも税務調査がこの時期に行われるわけではありません。
また税務調査は期間が空き、経過日数を過ぎれば税務調査される可能性が低くなるわけではありませんので注意しましょう。
調査の割合は5~6人に1人!?
税務調査は、国税庁が公表している「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」によると、全体の約9%が実地調査(自宅を訪問される)されています。
「税務調査、意外と少ないのでは?」そう感じるかもしれませんが、実地調査だけではなく電話た来署などの、簡易的な調査などを含めると17%まで上昇し、5~6人に1人が、税務調査を何かしらの形で受けていることになります。
参照:国税庁 平成30事務年度における相続税の調査等の状況
(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf)
8割が申告漏れを指摘される
税務調査が、行われた場合約8割が申告漏れなどの何かしらの指摘を受けています。
この指摘を受けると後述でご紹介する、追徴課税を納付する必要がある可能性があります。
相続税の税務調査は、特に対象となりやすい調査のため、税理士などの専門家に事前に相談しがら相続手続きを行うことをおすすめします。
相続税の税務調査対象になりやすいケース8選!
税務調査は「相続税の申告が適切に行われているのか」をチェックするものです。
ここからは、相続税の申告納付を行っていても、税務調査の対象になりやすいケースを8つご紹介します。
①申告不備の場合
まず1つ目は、申告に不備があった場合です。
計算ミス・必要な書類が添付されていない・申告書の記載ミスなど様々な要因で申告不備が発見される場合があります。
税務署は、様々な財産の状況を確認することができますので申告不備が発見された場合には、疑われる可能性が高くなります。
②無申告の場合
相続税は基礎控除枠を超過しない限りは、申告をする必要はありません。
また、税理士に相談せずに相続税の申告を行うことも可能です。
計算をしてみた結果、基礎控除枠以内に収まるので相続税の申告をしなかった場合でも、税務調査が入る可能性があります。
相続時には、さまざまな特例などを活用して相続税の金額を減額することができます。
しかし、特例や措置の中には相続税の申告が必要なくなった場合でも、申告書を作成して申告する必要がある特例や措置などがあります。
特例や措置をよく知らずに、申告をしてしまった場合には、税務署が発見し朝に踏み込みます。
③自己申告の場合
前述でご紹介しておりますが、相続税の申告納付は必ず税理士などの専門家に依頼をして行わなくても構いません。
しかし、自分で計算をして申告を行う自己申告を行う場合には、税務調査が入りやすいことを覚えておきましょう。
「なるべく費用を抑えて申告をしたい」と考えている方は、必要書類の準備から評価額の算出全てを自身で行うことが多いです。
しかし、自身で行う場合には計算ミスや財産の評価額の計算が合わないなどのミスがある可能性も否定できません。
税務署のチェックは厳しく行われるため、自己申告の場合には確認を行う事をおすすめします。
④名義預金などが発覚した
名義預金とは、口座の管理や存在を知らない預金口座のことを言います。
相続では、被相続人が子供や孫のために子供や孫の名義の口座を開設し、入金などを継続的に行っていたということがあります。
しかし、いくら名義が子どもや孫だとしても口座の管理(自由な入出金)ができない場合には、子供や孫の財産ではなく被相続人の財産として扱われ、相続財産となります。
相続財産としてカウントされると、分割対象になり相続税の申告が必要になります。
わざと財産を隠した場合は、重い課税があります
名義預金などが発覚し、本人たちも認識していないなどの単なる申告漏れの場合は、修正申告を行いますが、名義預金の存在を認識した上で故意的に隠していた場合には、重加算税という追徴課税の中で最も重い加算がされます。
⑤遺産総額が高額
遺産が多く、総額が2億円以上になる場合、税務調査される可能性が上がります。
これは、遺産が多くなる分相続税などの計算にミスが起きる可能性が高いからです。
特に不動産や美術品などを多く保有している場合には、評価額の算出の計算にミスが起きる可能性があります。
遺産が多い場合には、税理士などの専門家への相談を検討することをおすすめします。
⑥海外に財産がある
海外に遺産を残していた場合にも、注意が必要です。
近年は、資産運用などがグローバル化されてきており、税務署も海外にある財産を正確に把握することに務めています。
1回の送金に100万円を超える場合には、税務署に連絡が送られるようになっています。
その送金内容と相続税の申告内容に差がある場合には、税務調査を行う可能性が高くなります。
⑦生前贈与・譲渡があった
生前に贈与などがあった場合には、税務調査をされる可能性が高くなります。
毎年、同じ時期に同じ金額を贈与していた場合には、定期贈与と呼ばれる「一定の期間で〇〇万円贈与する」などの契約とみなされる可能性があります。
定期贈与だと税務署が判断した場合には、事前に契約をした金額に対して贈与税が課税されます。
⑧相続人名義の証券口座に多くの残高がある場合
相続人名義の証券口座はあるが、本人の収入などに見合わない金額の株式が存在する場合には、税務調査がされる可能性が高くなります。
様々な理由がある可能性もありますが、前述でご紹介した生前贈与や名義預金と同じように、被相続人の財産ではないかと税務署に疑われます。
今回ご紹介したケースは、どれも必ず税務調査が行われるわけではありません。
しかし、上記のようなケースは対策をしておかなければ調査対象に入る可能性が高くなります。
そのような場合には、税理士に相談することをおすすめします。
相続後に税務調査をされないためにできること
相続が発生した後には、様々な手続きをしなければなりません。
円滑に進めるためには税理士や弁護士などの専門家に事前に相談するなどをすることで、対策をすることができます。
ここでは、税務調査をなるべくされないために、事前にできることを5つご紹介します。
- しっかりと相続税を申告する
- 相続に関するやり取りを残しておく
- 遺産を正しく把握する
- 税理士などの専門家に相談する
- 生前贈与の証拠をしっかり残す
①しっかりと相続税を申告する
大前提として、税務調査をされないためには正しく相続税を申告しましょう。
自己申告などの税理士に相談しない場合には以下の点に注意しましょう。
- 複数回にわたって相続税の計算をする
- 遺産の見落としがないように、遺産の種類・評価額を正確に把握する
- 税理士への相談を検討する
上記のような点に注意しましょう。
必ずしも、税理士に相談する必要はありませんが、税務調査などを回避する場合には税理士への相談を検討しましょう。
②相続に関するやり取りを残しておく
相続は様々な人が関わり合います。
相続人の中でも、考え方が異なるので思い通りの分割方法にならない可能性があります。
「誰が・どのくらい・どの遺産を引き継ぐのか」以外にも、相続に関するやり取りは口約束ではなく記録に残すようにしましょう。
分割方法ややり取りを全て記録することで、正しく分割し相続税を申告納付していることを証明することができます。
③遺産を正しく把握する
前述でご紹介しておりますが、相続税を正しく申告するのが税務調査を回避するために必要です。
そのためには、遺産を正しく把握しておきましょう。
しかし正しく把握するにも、配偶者が知らない口座や家賃収入などがある可能性も否定できません。
そのため生前から、相続の話をしておくことで正しく把握することができます。
④生前贈与の証拠をしっかり残す
相続税の税務調査では、生前の贈与なども確認します。
生前贈与は、口頭でも成立します。
しかし、税務調査を回避するためには「贈与がいくらあったのか」を目に見える形で残しておくことが重要になります。
「大きい金額が引き出しをされているが、贈与かどうかわからない」
このような状況の場合、税務署に不審に思われ調査になる可能性があります。
生前贈与を行う際には、以下の点に注意しましょう。
- 手渡しではなく、銀行振り込み
- 贈与契約書を作成する
上記のような対応で生前贈与で相続税の税務調査をされないようにしましょう。
⑤税理士などの専門家に相談をする
正しく相続税を申告することで、税務調査を回避できる可能性が高くなります。
しかし、正しく申告するには上記でご紹介したような対策をしておかなければなりません。
また、上記の対策だけをやっても全ての家族の対策になるわけではありません。
対策は家族ごとで異なるため、「自分はどうしたらいいのか」不明な場合には税理士などの専門家に相談することを検討してみると良いでしょう。
税理士には、税務調査以外にも相続税の対策(節税対策)などを、家庭に合わせて検討してくれます。
相続後に税務調査をされる場合の対処方法
相続税の税務調査は、相続が開始された直後に行われるわけではありません。
相続税の申告をしてから1~3年後などのある程度の時期が空いた後に、税務祖からお知らせが届きます。
しかし、「いきなり税務調査を行います」と言われてもどのように対応したら良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここからは税務署からお知らせが届いた場合の対応方法などをご紹介します。
①税理士に依頼をしていた場合には担当者へ連絡をする
まず初めに、相続税の申告手続きを税理士に依頼していた場合には、税理士へ税務調査のお知らせがきたことを連絡しましょう。
税理士に依頼をしていた場合には、申告した税理士が必要書類などを準備してくれます。
そのため、税理士に申告の手続きを行ってもらった場合には、対応などは不要になります。
しかし、調査の実施までに必要な書類などを準備する必要があります。
②相続税の申告内容の状況を確認する
税理士への連絡が済んだ後には、相続税の申告内容を確認できるようにしましょう。
申告内容に不備がないか、計算や財産の見落としがないかを確認しましょう。
申告手続きを税理士に、依頼していた場合には申告内容を一緒に確認しましょう。
対応は依頼できる
申告手続きは自身で行ったが、調査の対応には不安があるという方は、この時点で税理士に相談をしましょう。
相続税の申告内容の確認と立ち会いを相談・依頼することができます。
③申告内容を確認できる書類を揃える
税務調査が実施するまでには、時期や期間が空くことがあります。
税務署から来た調査官に、申告内容に不備がないことを証明するためにも必要な書類を準備しなければなりません。
準備するべき書類は、以下の通りです。
- 相続税の申告書の写し(あれば)
- 申告に使用した各種書類(戸籍謄本等)
- 預貯金通帳(被相続人・相続人の療法)
- 新たに不動産を取得した相続人の場合は登記識別情報通知や権利証など(財産の種類や金額が分かる書類)
- 相続人の認印
上記の書類は、新たに取得しては意味がありません。
必ず相続税の申告手続きを行う際に活用した書類を準備しましょう。
しかし、上記の書類を揃えたら必ず追徴課税を免れることができるわけではありません。
100%の確率はありませんので、税理士とともに書類を揃え当日を待ちましょう。
申告漏れがあった場合はどうなるか?
お尋ね(調査)の結果、申告内容に不備があり申告漏れと判断された場合には、修正申告が必要になります。
修正申告の際には、追徴課税という不足している税金に追加で徴収されます。
そのため、申告の不備の状況によって、追徴課税の種類が変わります。
- 延滞税
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
延滞税
延滞税とは、納税者が期限以内に税金を納付することができなかった場合に、課される税金です。
税務調査の結果、申告漏れがあり相続税の申告期限である10ヶ月を過ぎていた場合に課税されます。
税率は期限によって異なる
延滞税は、納付期限から2ヶ月経過するかしないかで、課税される割合が異なります。
2ヶ月経過前 | 2ヶ月経過後 |
2.4% | 8.7% |
延滞税の税率は、年によっても異なります。
そのため、気になる方は国税庁のHPを確認しましょう。
参照:国税庁 延滞税の割合
(https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm)
無申告加算税
無申告加算税とは、本来申告対象となっているが、期限以内に納付手続きを行わなかった場合に課税されます。
ここでの無申告は「失念」「うっかりしていた」などの故意ではなく過失の場合などに課税されます。
税率は正しい納付金額によって異なる
無申告加算税の税率は、本来申告納付するべきである税金の金額によって、税率が異なります。
正しい納税金額が50万円以下の場合 | 正しい納税金額が50万円を超える場合 |
15% | 20% |
過少申告加算税
過少申告加算税とは、相続税の申告納付は行っているが納付するべき金額よりも少ない金額であった場合に課税されます。
税務調査によって、財産の評価額に不備がある場合や相続税の計算ミスの場合などに課されることが多いです。
税率
税務調査によって、修正申告を行う際に過少申告加算税が適用される場合には無申告加算税と同じく税率が異なります。
正しい納税金額が50万円以下の場合 | 正しい納税金額が50万円を超える場合 |
15% | 15% |
重加算税
重加算税とは、過失(不注意や失念)ではなく故意(わざと)相続税を申告しなかった場合に課税されます。
また申告しなかった場合以外には、故意に少なく税金を申告している場合にも重加算税が課税されます。
重加算税の税率は最も重い
重加算税は、故意に申告をしていなかったり少なく申告しているため、税率も高く設定されています。
故意に無申告の場合 | 故意に過少申告の場合 |
40% | 55% |
刑事罰になる可能性も
脱税のために故意に無申告・過少申告をした場合には、刑事罰に課されることもあります。
不正に財産を隠匿(隠す)したり、脱税をすると相続税法第68条に違反することになるため、刑事罰として1,000万円の罰金または10年以下の懲役になる可能性がありますので、注意しましょう。
どこに相談するべき?
税務調査は、10人に1人がなると言われておりその内8割が追徴課税の指摘を受けています。
- 知り合いに税理士がいない
- 手続きがスムーズにいくかわからない
- 相談しても、費用が高くなったらどうしよう
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記事のまとめ
今回は、税務調査に関して時期や割合、税務調査になりやすいケースとその対策などをご紹介しました。
”税務局の調査官がくる”と考えると、不安になる気持ちもわかりますが、故意に財産を隠したりしていない場合には、誠実に対応することで不安も軽減することができます。
しかし、自己申告の場合は計算や評価額にミスが起きる可能性が十分にあります。
相続後の調査が不安な方は、税理士などの専門家に相談することで、不安をあんしんに変えることができますので検討してみてはいかがでしょうか。