自筆証書の要件とは?遺言書・財産目録作成のポイントもご紹介

自筆証書遺言の要件を満たして無効になるのを防ぎましょう

遺言書を書いておくことで、残された家族に思いを伝えることができます。
しかし法律で決められた遺言書の要件を守らなければ、せっかく作成した自筆証書遺言が無効になってしまうかもしれません。
今回は自筆証書遺言の要件と、作成する際に気をつけたいポイントについてご紹介します。
自筆証書遺言の要件をおさえて作成することで、遺言書が無効になる可能性を減らすことができます。
家族にきちんと想いを伝えたい方はぜひご一読ください。

法律で決められている自筆証書遺言の要件とは?

自筆証書遺言の要件は、民法第九百六十八条で定められています。
「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」

引用:e-Gov法令検索 民法 第九百六十八条(自筆証書遺言)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/05/07 利用)

要件にしたがって書かなければ、自筆証書遺言が無効になってしまいます。
ここでは法律で決められている自筆証書遺言の5つの要件について、具体的にご紹介します。

  1. 全文自書すること
  2. 正確な日付を書くこと
  3. 署名すること
  4. 印鑑を押すこと
  5. 訂正は正しく行うこと

①全文自書すること(財産目録を除く)

作成する人本人の意思で作成されたことを証明するため、自筆証書遺言の全文を手書きで作成する必要があります。
そのため、以下の方法で作成した場合は要件を満たしているとはいえません。

  • パソコンで作成
  • 録画・録音
  • 家族等の代筆

ただし財産目録については、パソコンで作成してもよいことになっています。

②正確な日付を書くこと

作成した日付を「2024年5月1日」「令和六年五月一日」といったように正確に書く必要があります。
「2024年5月吉日」「令和六年五月」というように日付が特定できない書き方をすると要件を満たしていないため無効になってしまいます。
さらに複数の遺言書が見つかった場合、複数の遺言書で矛盾する内容が書かれている際には日付の新しい内容が適用されます。
どの遺言書が最新のものか判別させるためにも、日付は正確に書きましょう。

③署名すること

自身の氏名を自書します。
名前だけでなく住所も書いておくことで、本人が書いたということをより強く示すことができます。

④印鑑を押すこと

消えることがないよう、印鑑をしっかり押します。
印鑑が消えてしまったり、そもそも印鑑がされていない場合は要件を満たしていないので自筆証書遺言が無効になってしまいます。
なお、印鑑は認印でもかまいませんが、遺言を作成する人本人が作成したことの証明になるため、実印を押すことをおすすめします。

⑤訂正は正しく行うこと

自筆証書遺言は手書きで作成する遺言書のため、書き損じてしまったり、後から書き直したくなることがあるかもしれません。
そういった場合訂正することができますが、こちらも法律上で決められたやり方があります。

「自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」

引用:e-Gov法令検索 民法 第九百六十八条の3(自筆証書遺言)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/05/07 利用)

正しい訂正の方法について、詳しくは後ほどご紹介します。

要件を満たす自筆証書遺言の作成のポイント

法的に決められている自筆証書遺言の要件についてご紹介しました。
上記5つの要件を守ることで、自筆証書遺言が無効になることを防ぐことができます。
ここからは、要件を満たした自筆証書遺言を作成するうえでおさえておきたいポイントについてご紹介します。
また自筆証書遺言の要件ではないものの、内容の信憑性を疑われて無効となるようなトラブルを防ぐためにおさえておきたいポイントについてもご紹介します。

  1. 自筆証書遺言を書くときのポイント
  2. 財産目録を添付するときのポイント
  3. 訂正するときのポイント
  4. その他、トラブル防止のためにおさえておきたいポイント

自筆証書遺言を書くときのポイント

住所・氏名・生年月日は正確に記載しましょう。
紙や筆記具に法律上の規定はありません。
しかし長期にわたり保管するものなので長持ちする紙を選び、筆記具は油性のボールペンや万年筆などの消えにくいものを選ぶことをおすすめします。

財産目録を添付するときのポイント

財産目録とは、どんな種類の財産をいくら持っているのかを一覧にした書類です。
自筆証書遺言の本文は自分で書く必要がありますが、財産目録はパソコンで作成することが可能です。
ただし財産目録を添付する際には注意が必要です。
民法第九百六十八条の2では以下のように決められています。
「遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」

引用:e-Gov法令検索 民法 第九百六十八条の2(自筆証書遺言)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/05/07 利用)

財産目録を添付する際は、文字の書かれている全てのページの余白に署名し印鑑を押します。
保有していた財産が多い場合には、目録が2枚になる可能性があります。
財産目録は、印刷して提出を行うので片面印刷と両面印刷になる場合があります。
印刷方法によって、以下のように署名・押印をします。

片面にのみ記載記載のある面か裏面のどちらか1ヶ所に署名・押印
両面に記載両面に署名・押印

財産目録の訂正が必要な場合には、自筆証書遺言の本文と同じように行います。具体的な訂正方法は次の項目でご紹介します。

訂正するときのポイント

前述でご紹介したように、訂正する場合も自筆証書の要件にしたがって行う必要があります。
具体的には以下の手順を行います。

  1. 訂正する箇所に二重線を引く
  2. 新しい文言を訂正箇所の上に書く
  3. 訂正箇所の近くに押印する
  4. 自筆証書遺言の末尾か欄外の余白部分にどのように訂正したかを書き、署名する

訂正箇所に修正液や修正テープを使用しないよう注意しましょう。
また、あまりに訂正箇所が多い場合は新しく自筆証書遺言を書き直すことをおすすめします。

その他、トラブル防止のためにおさえておきたいポイント

法律で決められた方法で作成した自筆証書遺言であっても無効になってしまう可能性があります。
無効になってしまうと、しっかり要件を満たしていたとしても効力がなくなってしまいます。
改ざんなどのトラブルを防止するために、以下のポイントをおさえておきましょう。

  1. 遺言書が複数枚になる場合
  2. 封筒の書き方
  3. 自筆証書遺言の保管方法

遺言書が複数枚になる場合

遺言書が複数枚になってしまっても無効にはなりません。
複数枚になる場合には以下のポイントをおさえて封印をしましょう。

  • ページ番号を記載する(例:1/2、2/2)
  • ホチキスでまとめ、ページの見開きの境目に契印※を押す
    ※契印とは、書類のつながりを証明するためにページのつなぎめに印鑑を押すこと

複数枚になる場合には、上記のポイントをおさえておくことで第三者の変造を防ぐことができます。

封筒の書き方

自筆証書遺言は封筒に入れて保管するのが一般的です。
封筒の書き方にルールはありませんが、封筒を発見した相続人が一目で遺言書だとわかるように以下のポイントをおさえて封をしましょう。

  1. 封筒の表に「遺言書」と書く
  2. 裏に作成日と氏名を書き、印鑑を押す
  3. 裏に、この遺言書を発見しても勝手に開封せず、家庭裁判所で検認を受けるよう書く
  4. のりで封をし、割印を押す

自筆証書遺言を発見した相続人は、勝手に開封してはいけません。
封をしたまま家庭裁判所に持っていき、「検認」という手続きを行う必要があります。
検認とは自筆証書遺言の変造や改ざんを防止するために、相続人が家庭裁判所で遺言書の内容を確認することです。
自筆証書遺言に検認が必要だと知らない相続人は多いため、万一の場合に備え、勝手に開封しないよう封筒に記載することをおすすめします。

自筆証書遺言の保管方法

自筆証書遺言の保管方法について法律で決められてはいませんが、一般的には机の引き出しやタンスといった場所に保管することが多いです。
このとき、わかりやすい場所に置いておくと相続人に改ざんされる可能性があり、わかりにくい場所に置くと発見されない可能性があります。
必要に応じて、信頼できる家族や専門家に自筆証書遺言の存在を伝えたり、自筆証書遺言を預けておくのも手です。

また自筆証書遺言保管制度を利用し、法務局に自筆証書遺言を預けることも可能です。
自筆証書遺言保管制度を利用すると、自筆証書遺言の紛失・改ざんを防ぐことができるだけでなく、検認が不要になります。

遺言書が持つ効力とは?

要件を満たした自筆証書遺言であれば、どんなことでも指定できるわけではありません。
遺言書に書いたこと全てが効力を持つわけではないため要注意です。
ここでは遺言書が効力をもつ事項のうち8つを紹介します。

  1. 相続分の指定
  2. 遺産分割の指定・禁止
  3. 遺贈・寄付
  4. 特別受益の持ち戻し免除
  5. 相続人の廃除
  6. 子どもの認知
  7. 未成年後見人の指定
  8. 遺言執行者の指定

①相続分の指定

財産を分けるとき、法律で決められた割合(法定相続分)をもとに誰にいくら渡すか決めます。
相続分を指定することで、法定相続分とは違う割合で財産を分けてもらうことが可能です。
例えば妻と子どもで財産を分ける場合、法定相続分は妻と子どもで1/2ずつありますが、妻が3/4、子どもが1/4貰うよう指定することができます。

②遺産分割の指定・禁止

「妻に自宅、息子に預貯金を相続する」というように、どの財産を誰に渡すか決めることができます。
また「息子が成人するまで遺産分割しないように」というように、遺産分割を最長5年間禁止することも可能です。
ただし遺産分割を禁止する場合でも、相続税は期限通り(被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内)に払う必要があるため注意が必要です。

③遺贈・寄付

相続人以外の人に財産を渡すことができます。
個人に渡す場合は遺贈、法人に渡す場合は寄付といいます。

④特別受益の持ち戻し免除

生前贈与などですでに財産を貰っている相続人は、遺産分割で貰える財産の割合から生前贈与で受け取った分を差し引かれます。このことを特別受益の持ち戻しといいます。
遺言書により、特定の相続人の特別受益の持ち戻しを免除できます。

⑤相続人の廃除

虐待を受けていた場合など、財産を相続させたくない相続人に対し、廃除(相続する権利の剥奪)をすることができます。

⑥子どもの認知

遺言書により、結婚していない夫婦の子ども(非嫡出子)の認知が可能です。
本来非嫡出子は相続人になれませんが、認知することによって相続人になることができます。

⑦未成年後見人の指定

例えば片親の場合などに、自分の代わりに未成年の子どもの面倒を見る人である未成年後見人を指定します。

⑧遺言執行者の指定

信用できる家族を遺言執行者に指定することで、遺言書の内容を確実に実現してもらうことができます。

相続の相談、できていますか?

相続の相談、誰かにできていますか?
相続のトラブルを防ぐためには、事前準備が必要不可欠です。
遺言書の作成以外にもさまざまな対策方法があるため、「結局何をすればいいのかわからない」という人が多いのではないでしょうか。
相続ぽるとは相続対策の入口として皆さんにご利用いただいております。
ご家族ごとに最適な方法で、円満な相続を迎えられるようサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

記事のまとめ

自筆証書遺言が認められるための要件についてご紹介しました。
遺言書は法的な効力を持つ大切な書類です。
法律で決められた要件にしたがって作成しなければ、せっかく作成した自筆証書遺言が無効になってしまい、相続が円滑に進まなくなる可能性があります。
自筆証書遺言の要件をおさえたうえで、有効な遺言書を作成しましょう。
相続ぽるとでは要件をおさえた自筆証書遺言の作成サポートも行っておりますので、お困りの方はぜひご活用ください。