株式は相続時評価で税額が大きく変動します!
新NISAなどがスタートし株や投資信託などの金融財産を持つ人が増えてきている中で、亡くなった方が株式投資を行っていた場合には、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
株のことはよくわからなくても相続時に引き継ぐことになった場合には手続きを行う必要があります。
そこで本記事では、株のことはよくわからなくても相続時に慌てないようにどのように手続きを行うのか詳しくご紹介します。
株はどのように相続するのか
そもそも株式のような有価証券はデジタル上で確認することはできますが、実物を確認することは紙で保有していない限り行えません。
株式などの目に見えない財産を引き継g場合にはどのように手続きを行うのでしょうか。
証券口座を開設して引き継ぐ
結論から言うと、株を引き継ぐ場合には証券口座を開設しそこに移管手続きを行います。
後述しますが口座を開設し、移管をしなければ保有していた財産を売却や換金などを行うことはできませんので、引き継ぐ場合には必ず開設をしましょう。
口座の開設手続きは、即日可能な会社もありますが証券会社によっては期間がかかる口座もありますので、気になる方は一度確認をしておきましょう。
既に証券口座を所有している方は、その口座に移管をすることも可能です。
移管ができない可能性もある
前述で既に証券口座を所有している人は、口座に移管するとご説明しましたが引き継いだ証券と保有している証券会社が異なる場合は、移管手続きを行うことが難しい場合があります。
不安な方は保有している証券口座の会社に移管できる証券とできない証券を相談しておくと良いでしょう。
ただし、相続時には移管が可能になっているケースもありますのでご注意ください。
上場株式を引き継ぐ際の流れ
株には2種類あり、証券取引所で誰でも自由に変える上場株式と証券取引所に上場していない非上場株式の2種類あります。
基本的に相続で株を引き継ぐ場合には、上場株式となります。
株を相続する場合でも、特別な手続きをしなければ相続することができないわけではありません。
通常の相続と同様に10ヶ月以内に相続税の計算をし基礎控除を超える場合には、税務署に相続税を納めなければなりません。
株を引き継ぐ場合の相続全体の流れは以下のような流れです。
- 遺言書の確認
- 相続人・遺産の調査/確認
- 遺言書がない場合は遺産分割協議
- 株の名義変更手続き
- 相続税の申告納付手続き
①遺言書の確認
まず相続が発生した際には、遺言書が残されているのか確認を取りましょう。
遺言書が残されていれば、後述でご紹介する遺産分割協議が不要になります。
遺言書には公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3つの種類があります。
遺言書によって必要な手続きがあり、勝手に開封をすると罰金刑になる可能性もあります。
遺言書を発見した際には、勝手に開封をせずに専門家に相談することをおすすめします。
②相続人の調査
まず誰が財産を引き継ぐ権利があるのかを明確にしなければなりません。
そのため被相続人の死亡までの記載がされている戸籍謄本や家系図などを活用して、「誰が遺産を引き継ぐ権利(相続権)があるのか」を決めます。
相続は誰でも遺産を引き継げるわけではなく、配偶者+相続順位の高い人が相続人となります。
順位が低い(両親などの直系尊属や兄弟姉妹)相続人は財産を受け取れる権利は持っていても行使することはできませんので注意しましょう。
③遺産の調査
誰が財産を受取る権利があるのかを調査すると同時に遺産がいくらあるのか・どんな種類があるのかを明確にしなければなりません。
財産の明確化のためには、財産目録などの相続財産の一覧がかかれた目録などを活用すると良いでしょう。
今回のような株の場合、次のような確認方法があります。
- 株を保有していたことを知っていた
- 株を保有していたことを知らなかった
上記の2パターンに分けられます。
株を行っていたことを知っていた場合
株を行っていたことを知っていた場合には、証券会社に死亡したことを伝え、株式の残高証明書などを発行し受け取りましょう。
残高証明書以外にも相続に必要な書類などを伝えられますので、準備をしましょう。
株を行っていたことを知らなかった場合
被相続人が株の取引を行っていたのか不明の場合には、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」に問い合わせを行うことで、証券会社を知ることができます。
しかし開示請求書を作成し、郵送で送らなければなりません(窓口での対応はできません)
この開示請求には、請求書の他に以下のような書類が必要になります。
- 相続人の本人確認書類(免許証やマイナンバーカード等)
- 被相続人との関係を示す書類(戸籍謄本等)
- 被相続人の住所がわかる書類(住民票附票や戸籍の附票等)
今回は、簡単にご紹介しましたが被相続人との関係によって必要になる書類が変わります。
そのため株を相続する場合には、必ず専門家に相談することをおすすめします。
④遺言書がない場合は遺産分割協議
遺言書がない場合には、相続人全員で話し合い(遺産を誰が引き継ぐのか決める話し合い)を行う遺産分割協議を行う必要があります。
この協議に全員納得ができれば、遺産分割協議書を作成し相続人全員の署名・捺印を行います。
⑤株式の名義変更手続き
遺言書や遺産分割協議などで、株を誰が引き継ぐのかが決まった場合には証券の名義変更手続きを行う必要があります。
前述でもご紹介しましたが、証券などの電子での保管をしていた場合には証券口座を開設しなければなりません。
証券口座を新たに開設する場合には、以下の書類が必要になります。
- 身分証明書
- マイナンバーカード
- 資金を預ける際や配当金などを受取る用の銀行口座
この他にも解説する証券口座により必要になる書類は変わりますので、気になる方は各証券会社のHPを確認することをおすすめします。
証券口座の開設の手続きが完了した場合や既に口座を持っている場合には、手続きを行います。
手続きの方法は、以下の書類を提出することで名義変更手続きを行う事ができます。
- 名義変更依頼書(各会社によって異なる)
- 遺言書または遺産分割協議書の写し
- 戸籍謄本
- 印鑑証明書(相続人全員)
⑥相続税の申告納付手続き
名義変更の手続きが終了した場合には、自身に相続税が課税されるのか非課税になるのを計算します。
相続税は、【3,000万円+(600万円)×法定相続人の数】で算出された数字が相続税の控除枠となります。
株を含めた引き継いだ遺産の総額から考えると良いでしょう。
相続税の計算方法は、一見簡単そうに見えますがしっかり計算をしないと追徴課税(少し少なめに申告した/相続税の納付が遅れた)の対象になり税金を支払う必要になるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
非上場株式は専門家に相談を!
非上場株式とは、前述でご紹介したように証券取引所に上場していない株の事をいいます。
非上場株式だからといい、手続きの流れに大きな違いはありません。
しかし、非上場株式の評価方法は上場株式とことなるため、必ず専門家に相談をして手続きを進めるようにしましょう。
相続時の上場株式の分割方法
相続は配偶者と誰かがペアになって手続きを行うため、場合によっては複数の相続人が株式を分けて引き継ぐ可能性もあります。
株式の分割方法も通常の相続と大きく変わりません。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
現物分割
現物分割とは、財産をそのまま分割する方法です。
例えば配偶者(妻)A・子供3人(B・C)。
遺産は株式・預金・不動産だとします。
現物分割では、不動産をA・預金をB・株をCが相続する。このような形となります。
例えばここに預金がなく、株が2銘柄存在していた場合、BとCと1銘柄ずつ相続する。これも現物分割に該当します。
株は不動産などと異なり、分割をしやすい財産のため公平に分けることが可能になります。
換価分割
換価分割とは、相続財産を一度全て売却し現金にした後に公平に分ける分割方法のことです。
売却した現金は、法定相続分で分割しても遺産分割協議書で決めた金額ずつ分割しても構いません。
この方法であれば現物分割よりも、公平に分けることができます。
株や預金だけなどと、売却した後に現金化しやすい財産だけであれば有効に活用することができますが、不動産などの大きな財産は売却が成立するまでに時間がかかる可能性が高いです。
そのため不動産などの分割しにくい財産が遺産の場合には、換価分割は適しているとは言えません。
代償分割
代償分割とは、特定の相続人が遺産を引き継ぎ他の相続人は引き継いだ相続人から、代償金を受取る分割方法のことを代償分割と言います。
例えば、評価額2000万円の株のみが財産だった場合を考えてみましょう。
相続人は配偶者Aと子供B1人です。
母が遺産の総額である株2,000万円を引き継ぐ代わりに、AからBに対し1,000万円支払うことでお互いに1,000万円ずつ引き継いだことになります。
しかし、代償金は特定の財産を引き継いだ者(今回で言えばAさん)が自身のポケットマネーから代償金を捻出しなければなりませんので注意しましょう。
評価方法
実際に上場株式を引き継ぐ際にはどのような評価方法があるのでしょうか。
株は日々取引の価格が変動するため、どの地点を評価額にするのか不明な方も多くいらっしゃいます。
相続で財産を引き継ぐので、亡くなった日の最終終値が評価額になるのではないかと思う方もいらっしゃいますが、実はそうではありません。
前述でご紹介しているように、株価は毎日取引されており価格が変動します。引き継ぐ相続人に不利益がでないように以下の4つの価格から最も低い金額を選択します。
- 相続発生日
- 相続発生日の月の毎日の終値の平均額
- 相続発生日の前月の毎日の終値の平均額
- 相続発生日の前々月の毎日の終値の平均額
参照:国税庁 No.4632 上場株式の評価
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm)
(2024年5月23日 利用)
例えば2024年5月14日に亡くなった場合を考えてみましょう。
上記の価格は、次の通りになります。
発生日 | 終値 |
相続発生日(5月14日) | 3,516円 |
相続発生日の月の毎日の終値の平均額(2024年5月の平均額) | 3,983円 |
相続発生日の前月の毎日の終値の平均額(2024年4月の平均額) | 3,897円 |
相続発生日の前々月の毎日の終値の平均額(2024年3月の平均額) | 3,369円 |
上記のような結果になりました。
今回の株の相続では、2024年5月の平均額が最も低い金額になっているため、1株あたりの評価額は3,369円となります。
※実際の取引金額ではありませんので注意しましょう。
実際にどのくらいの金額になるのかは、以下のような計算方法になります。
相続した株の保有数×1株単位の評価額=株の評価額 |
例えば、5,000株を引き継いだ場合、先程の評価額を計算すると以下のようになります。
5,000(株)×3,369(1株あたりの評価額)=16,845,000円 |
5000株を引き継いだ際には約1,700万円(※)が評価額になります。
※今回はあくまで概算で計算しているため”約”という単語を活用していますが、実際の相続では正式な金額を算出しなくてはなりません。
評価額と引き継ぐ株数がわかれば、1人でも計算することはできますが、相続税に直結するため税理士などの専門家に相談をしましょう。
相続後、売却するときは注意
株を相続し、相続税の計算をし相続税が課税されるかされないか判断がつけば、相続人は株を売却することができます。
しかし、株を売却する際には次のような点に注意しなければなりません。
- タイミングによっては売却時に取得金額が減る
- 売却時には税金が発生する
タイミングによっては売却時に取得金額が減る
株は常に値段が変動しています。
そのため売却するタイミングによっては取得する際に金額が減る可能性があります。
株を運用したことのない方や、よくわからない方は専門家に相談して売却のタイミングを見分けることをおすすめします。
売却時に発生する費用
株式などの遺産を売却する際には、税金や費用がかかります。
これは、税金の公平性や利益がどの程度でているのかを正確に把握するために必要になります。
売却時に発生する費用は以下の通りです。
- 取得費
- 譲渡所得税
取得費
取得費とは、上場株式等を購入した際に支払う費用のことです。
取得費は後述でご紹介する譲渡所得税を計算するにあたり必要な費用となりますので正確に把握しておかなければなりません。
しかし、相続などで得た株式などの遺産は取得費を正確に把握することが難しい場合があります。
そこで取得費がわからない場合には、同一銘柄の株式ごとに売却費の5%を取得費として扱うことが認められています。
例えば、2,000万円の株式を相続によって取得した場合には、以下のような計算で取得費を計算します。
2,000万円×5%=100万円 |
2,000万円の上場株式を相続で引き継いだ際には、100万円の取得費用が加算されます。
譲渡所得税
株式は売却をした際に、相続税とは異なる譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税とは、株や不動産(建物や土地)などの資産を引き継いだ際に課税される税金です。
上場株式等を売却した結果、利益が出た場合には20.315%の税率が課税されます。
具体的な計算方法は以下のようになります。
売却金ー(取得費+手数料) |
上記の計算で利益が出ていなかった場合には、譲渡所得税は課税されません。
今回ご紹介した売却の計算方法などはあくまで概算になります。
そのため、ご自身が売却する際には必ず専門家に相談しましょう。
記事のまとめ
今回は、株式を相続で引き継いだ際の手続きの流れや評価方法などをご紹介しました。
株式は、預金や不動産などと評価方法が異なります。
上場株式を引き継ぐか非上場株式を引き継ぐかでも変わります。
また、口座を持っていなければ名義変更手続きを行うことができませんので、引き継ぐ際には口座の開設方法なども知っておかなければなりません。
手続きだけに限らず、困ったこと・不安なこと・売る時の注意点などの不安があれば信頼できる専門家に相談してみると良いでしょう。
私たち相続ぽるとは、初回無料相談を承っておりますのでお気軽にご相談ください。