贈与が大きく変わりますが準備はできていますか?
令和5年度税制改正によって2024年から贈与ならびに贈与税が大きく変わります。
税制が改正され、今までと同じように贈与を繰り返してしまうと相続時に多くの税金を支払わなければならない可能性があります。
本記事は来年2024年1月1日から大きく変わる贈与・相続に関してご紹介します。
何がどう変わるのか、今後の贈与で気を付けなければならないポイントは何かなどを詳しくご紹介します。
税制改正大綱の背景を簡単にご紹介‼
まず初めに今回の税制改正が行われ、贈与や相続がどのような背景で改正されたのか確認しましょう
日本では、相続税・贈与税は別の税体系となっております。
相続税贈与税は別個の税体系となっています。
贈与税は相続税の累進回避を防止する観点から相続税よりも高い税率構造となっています。
実際相続税がかからない方や相続税がかかる方であってもその多くの方にとっては、相続税の税率よりも贈与税の税率の方が高いため若年層への資産移転が進みにくくなっています。
一方で相続税がかかる方の中でも相続財産の多いごく一部の方にとっては相続税の税率よりも贈与税の税率の方が低いため財産を分割して贈与する場合相続税よりも低い税率が適用されます。
生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう相続・贈与にかかる税負担を一定にしていくため資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築していく必要があります。
出典:財務省 令和5年度税制改正(案)のポイント
(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeiseian23/zeiseian05_all.pdf)
(2023/09/11 利用)
贈与税や相続税は財産を引き継いだ際に課税される税金です。
贈与税は、生前贈与(元気な間に少しずつ財産を渡していく)を行うことで将来的な相続財産を減らし相続税の課税を回避する側面を持っています。
贈与税はそのような課税されない相続税を補填する役割を持っています。
生前贈与は少額(年110万円まで)を長期に渡り贈与を繰り返すことで相続税の負担を軽減できます。
そこで相続税・贈与税の負担が均一になるように、相続税と贈与税を今までよりも一体的に捉えて課税することが大切。
一本的に考えるためには、現在の暦年贈与と相続時精算課税制度を見直しをする必要があるということです。
贈与と相続の違いって?
簡単に贈与と相続についておさらいしてみましょう!
まず贈与とは元気な間に財産を渡すこと。相続は財産を保有している方が亡くなった際に一定範囲の相続人が財産を引き継ぐことです。
贈与税と相続税の税制の比較
実際の贈与税と相続税は税率でどのように違うのか確認しましょう。
以下の表で相続税と贈与税の比較をしています。
どちらも共通している点は以下の通りです。
- 財産額=基礎控除額を差し引いた後の金額
図でわかるように、相続税と贈与税では贈与税のほうが高く設定されています。
ただし年間110万円の基礎控除以内であれば贈与税は課税されませんので、財産を多く保有している場合には少しずつ生前贈与にて財産移転していくことが重要になります!
2024年からどう変わる?|暦年課税制度
では実際に2024年から暦年課税(暦年贈与)はどのように変わるのでしょうか。
基本をおさらい
暦年課税制度(暦年贈与)とは、1月1日~12月31日までの1年間で受け取った贈与の金額に応じて課税されます。
年間110万円の非課税枠の中で贈与を行うことで、将来的な相続財産を減らし相続税への節税対策が可能です。
〈図解〉
年間110万円までであれば、贈与税が課税されないため贈与税の申告が必要ありません。
一方で、財産を渡す贈与者が亡くなり相続が発生した際には、死亡から3年以内に受け取った財産に関しては相続税の計算に加算して計算しなければなりません。
この3年間の期間の事を持ち戻し期間と言います。
この3年以内に贈与税を納付している場合には、計算した相続税の中から控除(差し引き)をします。
2024年からどう変わる?|持ち戻し期間が3年→7年に延長
2024年1月1日から、この暦年贈与は大きく変わります。
それは持ち戻し期間が3年から7年に延長されます。
ただしもちもち戻し期間がいきなり7年に延長されるのではなく延長されるのは2024年以降の贈与のため段階的に延長される期間が伸びていきます。さらに4~7年に受け取った財産に関しては合計から100万円を控除(差し引き)することが可能です。
2024年からどう変わる?|相続時精算課税制度
続いては相続時精算課税制度についてご紹介します。
基本をおさらい
相続時精算課税制度とは、受け取った贈与の金額が2,500万円まで非課税で受け取れる制度です。
財産を渡す者の相続が発生した場合には、2,500万円を超えた部分に一律20%の課税がされ相続財産に加えて相続税として収めます。
相続時精算課税制度は、活用できるのが60歳以上の贈与者、18歳以上の受贈者の子や孫などに限定されており、一度選択をした場合には暦年課税制度に戻すことができず贈与があるたびに贈与税の申告をしなければなりませんでした。
さらに不動産の相続の際に活用される、小規模宅地等の特例が活用できないなどのデメリットがあり、今までは活用される機会が少ない状態でした。
2024年からどう変わる?|年間110万円の基礎控除枠追加
2024年1月1日以降からは、相続時精算課税制度に新たに年間110万円の基礎控除枠が追加されました。
この基礎控除枠である110万円は課税がされず、相続時精算課税制度では毎回贈与があるたびに申告していた贈与税の申告が不要であり、相続時にも持ち戻さずに控除して良いなどの大きなメリットが追加されました。
これらを踏まえ、ご自身には暦年贈与が良いのか相続時精算課税制度が合っているのか見極めることが重要です。
しかし制度の改正を考えると、今後は相続時精算課税制度を活用するケースが増えると予想されています。
注意!暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できない
暦年贈与と相続時精算課税制度は併用ができません。
祖父は暦年課税制度、祖母からは相続時精算課税制度など贈与者によって制度を変更することは可能ですが、相続時精算課税制度を選択した後に暦年課税制度に途中で変更する事はできませんので注意しましょう‼
他の生前贈与の制度は2024年ではどう変わる?
生前贈与には暦年贈与や相続時精算課税制度以外にも非課税枠がある制度がありますが、2024年ではどのように変更されるのでしょうか。
①教育資金の一括贈与
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、親や祖父母が子や孫(30歳未満)に教育資金を一括贈与する際に1,500万円まで非課税になる制度です。
教育費は入学金、授業料のほか、学校の寮費、通学交通費、修学旅行代や給食費も含まれます。
この制度は、2023年3月31日までが適用期限でしたが税制改正により3年間(2026年3月31日まで)延長されました。
②結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、親や祖父母が子・孫に結婚・子育て資金を一括贈与する際に、1,000万円まで非課税になる制度です。
この制度も2023年3月31日までが適用期限でしたが、2年間(2025年3月31日まで)の2年間延長される事になりました。
③住宅取得資金の贈与
住宅資金の贈与とは、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
こちらの制度は、令和5年12月31日で終了するとされていましたが令和6年度の税制改正大綱にて3年間の延長がされます。
ただし、要件なども同様に見直しがされていますので不安な方は専門家に相談しながら進める事をおすすめします。
④夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の相続にて居住用不動産、不動産を取得するまでの贈与が行われた際に最大2,000万円まで控除(差し引き)することが可能な制度です。
この制度は、明確な期間などが定められていないため2024年以降でも要件を満たすことができれば2,000万円まで贈与税がかからず贈与することが可能です。
今からできる相続税・贈与税の対策は?
実際に制度が変わるのは、2024年1月1日からです。
今までと同じように毎年110万円の暦年贈与などを続けている場合、将来的な相続税の負担が増える可能性があります。
改正に向けて今からできる対策をご紹介します。
今回は高額な生前贈与が必要な方と高額ではないが制度が変更されても柔軟に対応した方に向けて簡単に方法をご紹介します。
相続対策のために高額な贈与が必要な方
具体的には、相続税対策のために高額な生前贈与が必要な方の場合は、暦年贈与を行う期間で多めに生前贈与を行いましょう。
その後相続時精算課税制度に切り替え、毎年110万円の贈与に留める、といった方法が考えられます。
高額な贈与は不要だが制度が変更されても柔軟に対応したい方
贈与税の非課税枠を超えて生前贈与をするつもりはないという方の場合は、早々に相続時精算課税制度に切り替えて、毎年110万円ずつ生前贈与をするという方法もあります。
相続時精算課税制度の基礎控除枠を上手に活用することで贈与財産に含まれずに贈与をする事が可能です。
ご家庭によって、資産背景や生活環境、生前贈与を行う子や孫の人数も異なりますので、ご紹介した基本戦略をベースに、臨機応変に対応するようにしましょう。
さらに相続時精算課税制度に変更した場合は、暦年贈与に切り替えることができませんので注意しましょう。
その贈与、本当に必要ですか?
その贈与は本当に効果的な贈与ですか?
贈与は使い方によって大きな効果期待できますが、2024年の税制改正などに追いつかなければ多くの贈与税を支払う事になる可能性もあります。
私たちは、相続だけではなく生前贈与などに関してもご相談を受付けております。
2024年からの贈与に関連するものをもっと詳しく知りたい。
贈与税をあまりかけずに贈与したい。何からすればいいのかわからないなどご相談を受付けておりますので、気になる方はぜひ一度ご参照ください。
記事のまとめ
今回は2024年から変わる贈与の仕組みについてご紹介しました。
相続時精算課税制度が2024年から活用しやすくなりますが、暦年贈与と異なり一度相続時精算課税制度を選択をしてしまうと変更することができません。
贈与する場合の贈与税や、相続税がどのくらいになるのかをシミュレーションし決定していくことが重要になります。
相続税や贈与税などは、相続に強い専門家に相談しながら方法を見つけていくことをおすすめします。