効力のある自筆証書遺言の作成方法は?無効になる場合も

自筆証書遺言は法律に基づいて作成しないと無効になります

自筆証書遺言は作成方法を間違えなければ、財産の分け方に関する事項だけでなく、相続人に関する事項や遺言の執行に関する事項など、さまざまな効力を持たせることができます。
しかし作成方法によっては無効になってしまう場合もあるため、注意が必要です。
本記事では遺言書が持つ法的な効力・自筆証書遺言の作成方法・どんな場合に無効になるのかをわかりやすくご紹介します。

自筆証書遺言とは?

遺言書は元気なうちに自分の財産を誰に・どれだけ残すのかを文章として残した書面のことです。
自筆証書遺言は遺言書の種類の一つで、(財産目録を除く)全文を本人の手書きで作成する遺言書です。
自筆証書遺言の特徴としては、公証人が必要な公正証書遺言に比べてお金や手間をかけずに作成できる点が挙げられます。
自筆証書遺言について、メリット・デメリットや作成の流れなど詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

遺言書が持つ法的効力8選

財産を誰にどれだけ残すか家族に伝えることができる遺言書ですが、財産の分け方以外にも書いておくことで法的な効力を持つ事項があります。
ここでは自筆証書遺言を含む遺言書が持つ法的な効力のうち8つをご紹介します。

  1. 遺産分割方法の指定・分割の禁止
  2. 相続分の指定
  3. 遺贈・寄付
  4. 特別受益の持ち戻し免除
  5. 相続人の廃除
  6. 子どもの認知
  7. 未成年後見人の指定
  8. 遺言執行者の指定

①遺産分割方法の指定・分割の禁止

財産の相続人に対する具体的な分配方法を決めたり、特定の財産の分割を禁止することができます。
例えば「土地・建物を長男に、A銀行の預貯金○○○万円を次男に相続させる」というように遺産分割方法を細かく指定することができます。
自分の財産がどのように分配されるかを事前に指定することで、どうやって財産を分けるかに関して相続人同士で争いになることを防ぐことが可能になります。
また最長で5年間、遺産分割を禁止することも可能です。
例えば相続人の中に未成年の子どもがいる場合、子どもが成人するまでの数年間遺産分割を禁止することで子どもが成人してから遺産分割を始めることができます。

②相続分の指定

①でご紹介した遺産分割方法の指定では細かく財産の分け方を指定しましたが、「全財産のうち1/2を長男に、1/3を次男に相続する」と相続人が財産の何割を相続するのか(相続分)を決めることもできます。

③遺贈・寄付

遺贈とは、相続人以外の第三者に財産を渡すことをいいます。
例えば以下のような人に財産を残したい場合は遺贈することになります。

  • 友人
  • お世話になった知人

また法人や慈善団体に財産を寄付することもできます。
遺贈と寄付では財産を渡す相手が異なり、遺贈が個人、寄付が法人・団体に財産を渡すことをいいます。

④特別受益の持ち戻し免除

特別受益とは、特定の相続人が受けた利益のことをいいます。
例えばマイホーム購入のための資金を1人だけ援助してもらっていた場合、特別受益とみなされる可能性があります。
特別受益を受けている相続人がいる場合、原則10年以内に贈与した財産の額を相続財産の額に含める特別受益の持ち戻しを行います。
これにより特別受益を受けていた人が相続する財産が減り、相続人の間で受け取る財産額が公平になります。
遺言書では上記で記載した持ち戻しを免除することができます。
特別受益の持ち戻しを免除することで、贈与した財産を渡したままにすることができるため、特定の相続人により多くの財産を渡すことができます。

⑤相続人の廃除

虐待や重大な侮辱(名誉毀損など)があった等の理由で相続人に財産を渡したくない場合、相続人の廃除(相続権を奪う)をすることが可能です。
ただし廃除が認められるには、家庭裁判所に認めてもらえるだけの具体的な証拠や事実の立証が必要になります。

⑥子どもの認知

結婚していない男女の間で生まれた子どもは、法律上では母親との親子関係が形成されますが、父親と子どもの間では親子関係が法律上ありません。
父親と子どもの間に親子関係がない場合、父親の相続が発生しても相続権が子どもにはないため、財産を引き継ぐことができません。
遺言書では、法律上親子関係のない子どもに対し「自身の子である」と認める認知を行う事ができます。
認知することで法律上の親子関係が父親と子どもの間に形成されるため、子どもに財産を相続させることができます。

⑦未成年後見人の指定

未成年の子どもは単独で法律行為ができず、親権者(両親)の同意が必要であったり、親権者が代わりに法律行為を行う必要があります。

参考:e-Gov法令検索 民法 第五条(未成年者の法律行為)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

例えば子どもが一人暮らしを始める場合の賃貸借契約は法律行為のため、親権者が代理で行うことになります。
しかし、例えば以下のような場合に親権者がいなくなってしまう可能性があります。

  • 親権者である両親が交通事故などで同時に亡くなった
  • 両親が離婚し片親になり、その親が亡くなった

このように親権者がいなくなってしまった場合、代わりに未成年後見人が契約を行います。
遺言書で未成年後見人を指定しなければ、家庭裁判所が未成年後見人を決定するため、親が望むような未成年後見人が選ばれない可能性があります。
遺言書で未成年後見人の指定をすることで、親が未成年後見人を決定することができます。

⑧遺言執行者の指定

遺言書が見つかったとき、書かれた内容を実行する遺言執行者がいると遺言書に書かれた内容の実現がスムーズになります。
遺言執行者がやることの例には次のようなものがあります。

  • 財産目録の作成・相続人への交付
  • 金融機関で預貯金の払い戻しなどの手続きを行い、相続人に財産を渡す

信頼できる家族や専門家を遺言執行者に指定することで、確実に遺言の内容を実行することができます。

その他の法的効力を持つ要件

他にも遺言書に記載することで法的効力を持つ事項として、以下のものがあります。

  • 生命保険の保険金受取人の変更
  • 祭祀承継者(お墓や仏壇を管理する人)の指定

生命保険の保険金受取人の変更

通常、生命保険の保険金受取人変更は生前に保険会社を通じて行いますが、遺言によって変更することも可能です。
ただし以下の理由から、受取人の変更は遺言書で行わず、元気なうちに行ったほうがいいといえます。

  • 相続人が受取人変更手続きを行うため相続人に負担がかかる
  • 受取人の変更が間に合わず新しい受取人に保険金が支払われない可能性がある
  • 元々の受取人が「この遺言書は無効だ」と主張して裁判に発展する可能性がある

祭祀承継者(お墓や仏壇を管理する人)の指定

祭祀承継者とは、お墓や仏壇を管理する人のことです。
祭祀承継者がおらず管理費を滞納してしまうと、墓地の管理者によってお墓が強制撤去される可能性があります。
そのためお墓を撤去されたくない人は祭祀承継者を指定しておくと安心です。

効力を持つ自筆証書遺言の作成方法は?

遺言書を残すことで財産の分け方だけでなく、相続人に関することや遺言の執行に関することを決めておくことができます。
そんな効力を持つ遺言を手軽に残す方法として自筆証書遺言の作成が挙げられます。
しかしせっかく自筆証書遺言を作成しても、自筆証書遺言の作成方法は民法第九百六十八条で定められており、その通りに作成していなかった場合効力がありません。

「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」

引用:e-Gov法令検索 民法 第九百六十八条(自筆証書遺言)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

ここでは法的効力のある自筆証書遺言の作成方法についてご紹介します。

  1. 全文自筆で書く
  2. 正確な日付を書く
  3. 署名捺印する
  4. 訂正する場合は法律に決められた方法で行う

①全文自筆で書く

内容を全文自筆で書きます。
自筆証書遺言を全文自筆で書かなければならない理由は、筆跡によって書いた人本人が意思をもって作成したという証明になるからです。
文章が消えたり書き換えられたりするリスクを回避するため、自筆する際は鉛筆ではなくボールペンや万年筆で書くことが重要です。
一部分でも代筆してもらったり、パソコンで作成したりすると本人の意思のもと作成された遺言書だという証明ができないため無効になってしまいます。
ただし相続財産をまとめた財産目録を自筆証書遺言に添付する場合、財産目録の作成はパソコンで行ってかまいません。
財産目録をパソコンで作成する場合には署名捺印する必要があります。

参照:e-Gov法令検索 民法 第九百六十八条の2(自筆証書遺言)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

②正確な日付を書く

自筆証書遺言を作成した日付を正確に記載します。年は西暦でも元号でも構いません。
「2024年3月」「2024年3月吉日」など日にちがわからない書き方をしないよう注意しましょう。
ちなみに遺言書が複数発見された場合、最新の日付のものが有効になります。
どの遺言書が最新のものなのかはっきりさせておくためにも、日付は正確に記載しましょう。

③署名捺印する

内容を書き終えたら、署名捺印します。
捺印は認印でもかまいませんが、本人が書いた自筆証書遺言であるという裏付けになるため実印が望ましいです。
またシャチハタなどは使用不可です。

④訂正する場合は法律に定められた方法で行う

誤字などで訂正が必要な場合訂正部分に二重線を引き、近くに正しい内容を書き印鑑を押します。
また訂正箇所の欄外または遺言書の最後に何文字加筆した・削除したかを記載し、署名します。

参考:e-Gov法令検索 民法 第九百六十八条の3(自筆証書遺言)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

訂正のルールは厳格なため、訂正箇所を極力出さないためにも自筆証書遺言を書く前に下書きを作成することをおすすめします。

自筆証書遺言が無効になる場合は?

場合によっては自筆証書遺言が無効になってしまいます。
以下のような場合に自筆証書遺言が無効になります。

  1. 作成方法に不備がある場合
  2. 内容が曖昧で複数の意味に解釈できる場合
  3. 複数人で作成した場合
  4. 15歳未満の人が作成した場合
  5. 認知症などで判断能力が低いと判断された場合

①作成方法に不備がある場合

自筆証書遺言の作成方法は法律で定められており、その通りに作成しなければ無効になってしまいます。
例えば以下のような自筆証書遺言は無効になってしまいます。

  • 全文自筆で作成していない
  • 日付が曖昧・間違っている
  • 訂正の方法が間違っている

無効にならないためにも、前述でご紹介した自筆証書遺言の作成方法に則って書きましょう。

②内容が曖昧で複数の意味に解釈できる場合

自筆証書遺言の内容が曖昧で多義的な場合、無効になってしまう可能性があります。
例えば「一切を娘にまかせる」と自筆証書遺言に書くと、財産の全てを娘に任せるのか遺産分割そのものを娘に任せるのかわかりません。
誰が読んでも同じ内容だと解釈できる文章になっているかが大切です。

③複数人で作成した場合

自筆証書遺言を複数人で作成すると無効になると法律で定められています。

参考:e-Gov法令検索 民法 第九百七十五条(共同遺言の禁止)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

例えば仲のいい夫婦が子どものために自筆証書遺言を書こうと決め、2人で署名捺印した自筆証書遺言を作成したとしても無効となります。
父親は父親、母親は母親で1枚ずつ作成するようにしましょう。

④15歳未満の人が作成した場合

遺言が可能なのは15歳以上の人であると法律で定められています。

参考:e-Gov法令検索 民法 第九百六十一条(遺言能力)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

14歳未満の子どもが遺言書を書いても無効になります。
親が代理で自筆証書遺言を書くこともできませんのでご注意ください。

⑤認知症などで判断能力が低いと判断された場合

遺言は、書いた人が遺言の内容や遺言によって何が起こるのかを理解していないまま作成しても無効になってしまいます。
そのため作成方法に不備がなかったとしても、書いた当時に認知症などの理由で判断能力が低いとみなされた場合、自筆証書遺言が見つかった後に無効になる可能性があります。

この場合効力はある?悩みやすい3つのケース

効力のある自筆証書遺言の作成方法と、どんな場合に自筆証書遺言が無効になるかをご紹介しました。
しかし「この自筆証書遺言なら絶対に有効だ」と言い切ることはできず、有効・無効の判断が難しい場合が多いです。
この自筆証書遺言に効力があるのか、それとも無効になるのか。ここでは悩みやすい3つのケースをご紹介します。

  1. 感謝の気持ちや願いを追加した
  2. 誤って遺言書を開封した
  3. 遺言書が見つからなかった

ケース①感謝の気持ちや願いを追加した

まず、自筆証書遺言の本文に家族への感謝の気持ちや願いといったものを書き加えたケースです。
Aさんは遺産分割方法の指定や遺言執行者の指定を自筆証書遺言に記載した後、最後に「葬儀はしないでください。」と家族へのメッセージを残しました。
このケースでは、遺産分割方法や遺言執行者の指定に有効ですが、「葬儀はしないで」というメッセージ自体には法的効力はありません。

今回の「葬儀はしないでください。」のように、遺言書に書くことができる法的効力のない内容を付言事項といいます。
例えば以下の内容を付言事項として記載することがあります。

  • 家族への感謝のメッセージ
  • 葬儀の希望(葬儀の方法、埋葬方法、墓地の場所など)
  • ペットの新しい飼い主の指名

これらの内容に法的効力はありませんが、相続人に伝えることで希望通りに行われる可能性があるため、希望があれば自筆証書遺言を作成する際に書いておいて損はありません。

ケース②誤って遺言書を開封した

次に、自筆証書遺言の入った封筒の封を誤って開けてしまったというケースです。
Bさんは亡くなったCさんの部屋で、封筒に入ったCさんの自筆証書遺言を発見しました。
Bさんは内容を確認しなければと思い、封筒を開けて中の自筆証書遺言を確認しました。
自筆証書遺言は封筒に入れなくても法的効力はありますが、間違って捨てられたり改ざんされたりといった可能性を下げるために封筒に入れ封印することが多いです。
そして封筒に入った自筆証書遺言は、開封する前に家庭裁判所に持っていき、中身の内容を確認する「検認」をしてもらう必要があります。

参考:e-Gov法令検索 民法 第千四条(遺言書の検認)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/04/12 利用)

このケースでは、検認なしで開封しただけで自筆証書遺言の効力がなくなることはありません。
しかし遺言書が改ざんされていないかに関しては議論になりやすく、場合によっては無効になるおそれがあります。
封筒にきちんと遺言書と記載することで誤って開封される可能性を減らすことができますが、そもそも封筒に入った遺言書を開封してはいけないということを相続人が知らない可能性もあります。
もし誤って自筆証書遺言を開封してしまった場合は自己判断せず、弁護士等の相続に強い専門家にご相談ください。
また開封されるのを防ぐ方法として、自筆証書遺言書保管制度を利用するという方法もあります。
自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局が自筆証書遺言を保管してくれるため、誤って家族に自筆証書遺言を開封されるのを防ぐことが可能です。

ケース③遺言書が見つからなかった

Dさんは自筆証書遺言を作成し、家族に内緒で鍵のかかった机の引き出しにしまいました。
ところがDさんの相続開始時、誰も引き出しを開ける鍵を持っておらず、引き出しを開けることができませんでした。
Dさんの家族はDさんが自筆証書遺言を残していることを知らなかったため、遺産をどのように分けるか揉めてしまいました。
せっかく自筆証書遺言を残したとしても、このケースのように家族に見つからないことがあります。
もし遺産分割協議が終わった後自筆証書遺言が見つかったら、基本的には遺言書の内容が有効になり、遺産分割協議のやり直しになります。
しかし相続人全員が遺産分割協議に納得しているなどの理由で自筆証書遺言の内容が無効になることもあるため、このような場合には専門家に相談することをおすすめします。
後々自筆証書遺言が見つかると相続人に混乱が広がるおそれがあるため、自筆証書遺言を作成したら、信頼できる家族に保管場所を伝えて見つけてもらいやすくしましょう。
また、先程ご紹介した自筆証書遺言書保管制度を利用することで確実に法務局で保管してもらえるため、自筆証書遺言が見つからなかったという状況が起こらないようにすることが可能です。

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これ以上一人で相続のことで悩まないでください。一度、専門家である私達までお気軽にご相談ください。

記事のまとめ

遺言書が持つ法的な効力のある事項8つ、効力のある自筆証書遺言の作成方法・どんな場合に無効になるのかをご紹介しました。
自筆証書遺言を作成するのは他の種類の遺言書に比べて容易ですが、法律に則って作成しなければ有効な自筆証書遺言になりません。
「この作成方法で問題ないのかな」と不安な方は、ぜひ私たちにご相談ください。