来年から変わる暦年贈与ってどんな課税制度?|相続時の注意点もご紹介

暦年贈与は正しく活用することができれば大きな相続対策が期待できます!

相続対策として有名なのが暦年贈与ではないでしょうか。
この制度は正しく活用することができれば、大きな相続対策が期待できますが内容を正しく理解していなければ余計な税金を納付しなければならない可能性があります。
本記事は、暦年課税制度とは何か。制度の仕組みや注意点・正しく活用するための方法などをご紹介します。
これから財産を渡そうか考えている人はぜひご一読ください!

暦年贈与とは?

そもそも暦年贈与(読み方:れきねんぞうよ)とはどのような仕組みなのでしょうか。
この制度は暦年(1月1日~12月31日まで)の1年間、110万円以内までは非課税で財産を受取る事ができる制度のことをいいます。
この110万円の非課税枠のことを基礎控除といい、基礎控除を超える金額を受け取った場合には課税されます。
この制度は認知症などの行為能力が失われると判断されるまで何度でも行える事が大きなメリットです。

どんな制度?

この制度は、110万円の非課税枠を利用し子や孫に少しずつ財産を移していくことで将来の相続財産を減らす事が可能になります。
また相続税などと聞くと何か申告しなければならない!考える方もいらっしゃいますが、年間110万円であれば申告をする必要がありません。

暦年贈与は内容が変わります!

暦年贈与は令和5年度の税制改正大綱により内容が変更されました。
今までであれば、亡くなる3年前までに受け取っていた財産を相続時に持ち戻して相続税を計算していました。
今回の税制改正大綱により、持ち戻し期間の3年が7年に延長されました。
7年に延長された理由に関しては、「資産課税では次世代への早期の資産移転及び資産の再分配機能を確保する観点から、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築することとしています。」

出典:令和5年度 税制改正(案)のポイント 
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeiseian23/zeiseian05_all.pdf)(2023/08/14 利用)

暦年贈与は、贈与税に関係するのではなく相続税に関係します。
暦年贈与を活用すれば年間で110万円非課税で資産を移す事が可能です。
一方で亡くなる直前に贈与をした場合、課税できたはずの財産までも非課税になってしまいます。
それを避けるために亡くなる前7年間の贈与に関しては相続分として持ち戻すとされています。

いつから変わる?

しかし発表された2023年からいきなり7年に変更するのではなく、令和6年(2024年)以降の贈与から延長期間が1年ずつ伸び、令和13年(2031年)には延長が終わりそれ以降に相続が発生した場合には7年間の持ち戻し期間となります。
しかし4年~7年の間に受け取った財産に関しては、総額から100万円を差し引くことになっています。
近年では暦年贈与がなくなる・廃止と言われていますが、今回の税制改正大綱ではなくならず加算期間が延長されることになりました。

相続時精算課税制度との違いは?

一般的に暦年贈与と聞くと相続時精算課税制度を思い浮かべる方も多いと思います。
相続時精算課税制度・暦年贈与も財産を受け取った場合に課税制度を選択しなければなりません。
暦年贈与の場合は先程もご紹介しましたが、110万円の基礎控除がありますが相続時精算課税制度では合計で2,500万円の特別控除枠+税制改正大綱により年間110万円の基礎控除の2つの非課税枠があります。
相続時精算課税制度について知りたい方はこちらをご参照ください!

他の制度と併用が可能

暦年贈与は他の非課税制度などと併用する事が可能になっており以下の制度と併用する事が可能です。

  • 住宅取得資金の非課税制度
  • 不動産に関する贈与税
  • 教育資金の一括贈与
  • 結婚・子育て資金の一括贈与

以上の4つの非課税制度と併用して利用する事が可能です。
しかし相続時精算課税制度と併用して利用することはできず、暦年課税制度から相続時精算課税制度に変更する事は可能ですが、相続時精算課税制度から暦年課税制度に変更することはできませんので注意しましょう。

暦年贈与の注意点‼

暦年贈与を活用することにより相続財産の減少をする事が可能です。
しかし、注意しなければならない点が多くあります。

税率が相続税より高い

実は暦年贈与の税率は相続税の税率よりも高く設定されています。
暦年贈与と相続時の税率は以下の表の通りです。

贈与税税率控除枠相続税税率控除枠
200万円以下10%0円1,000万円以下10%
400万円以下15%10万円3,000万円以下15%50万円
600万円以下20%30万円5,000万円以下20%200万円
1,000万円以下30%90万円1億円以下30%700万円
1,500万円以下40%190万円2億円以下40%1,700万円
3,000万円以下45%265万円3億円以下45%2,700万円
4,500万円以下50%415万円6億円以下50%4,200万円
4,500万円超55%640万円6億円超55%7,200万円

表の通り、贈与税のほうが相続税よりも税率が高く設定されています。
そのため暦年課税制度を活用し、早い段階から財産を子や孫のなどに移転していく事が重要になります。
また持ち戻し期間が延長されると多くの財産が課税対象になる場合があるため、今よりも早めの生前贈与が重要になります。

出典:国税庁 No.4155 相続税の税率(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)(2023/08/22 利用)
出典:国税庁 No.4409 贈与税の計算と税率(暦年課税)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
(2023/08/22 利用)

名義預金に注意

暦年贈与などを利用した資産の移転ではよく、祖父母が孫のために孫名義の銀行口座を開設し非課税枠110万円を活用し口座に振り込んでいるケースがあります。
このように名義人と実際に利用している人が違う預金のことを名義預金といいます。
この名義預金は仮に暦年贈与を活用していたとしても被相続人の相続財産として持ち戻し相続税の計算をします。

定期贈与に注意

名義預金の他に「今1,000万円があるから10年間に渡り110万円以内で財産を渡していこう」などの予め渡す財産の金額が決まっていて暦年課税制度などを利用している場合の財産を定期贈与といいます。
このような場合には、実際に渡された金額に対してではなく予め渡す財産である1,000万円に対して贈与税が課税されます。

暦年贈与を正しく行うには?

暦年贈与を正しく活用し円滑に財産を移転していくには、次のようなことに注意しましょう。

贈与契約書を作成

贈与の基本ルールとして財産を渡す贈与者と財産を受取る受贈者が互いに合意をすれば成立する諾成契約です。
ですが贈与がある都度、贈与契約書を作成しておくことで、実際に贈与が遭ったことを証明する証拠になりますので作成することをおすすめします。

時期と金額をずらす

暦年贈与では、毎年同じ時期に同じ金額の資産が移転されている場合連年贈与というみなされてしまいます。
この場合は、初年度から今まで受け取った金額の財産額に対して贈与税が課税される仕組みになっています。
そのために、毎年同じ時期と金額ではなく時期と金額をずらすことをおすすめします。

銀行口座の管理は受贈者が行う

先程もご紹介しましたが、名義預金は相続財産として全て持ち戻さなければなりません。
子や孫のために活用するのであれば、口座の管理は財産を受け取った受贈者が行いましょう。
使い込みを防ぐのであれば、受け取った財産を生命保険の保険料に充てることで使い込みを防ぐ事が可能です。
保険契約形態に関しては、FPなどの専門家に相談することをおすすめします。

あえて贈与税を申告する

一般的に贈与税は相続税よりも税率が高いとされていますが、あえて非課税枠を超えることで贈与税を申告することで、定期贈与だとみなされにくくなります。

暦年贈与型信託を活用する

銀行や信託銀行の中には暦年贈与型信託という暦年贈与の仕組みを活用した信託契約のことです。
活用することで作成する必要がある契約書や振込などの手続きを銀行や信託銀行が代行してくれるため手続きが少なくなります。
一方で金融機関を介しているため事務手数料などの別途費用がかかる可能性があります。
詳しく知りたい方は、銀行や証券会社などに問い合わせてみると良いでしょう。

相続の相談なら相続ぽるとへ!

相続ぽるとでは、暦年贈与だけではなく「適切な相続の入り口」として皆様にご利用頂いております。
自分の場合は暦年贈与でいいのか。他の相続時精算課税制度を知りたい。などの専門的な知識から相続税がかかるのかもわからない・何から始めたらいいかわからないなどの一般的な不安にもみなさまに寄り添って円滑な相続へ奔走しています。
対面・オンラインでもご相談を受付けておりますのでお気軽にご相談ください。

記事のまとめ

今回は暦年贈与についてご紹介しました。
暦年贈与では年間110万円以内であえば非課税され、正しく活用することができれば大きな相続対策になります。
一方で財産を渡す方法は、暦年だけではなく定期と連年など様々な形態があります。
贈与を検討している方は、今一度ルールをおさらいし自分にあった方法で子供や孫などに資産を移転していくことをおすすめします。