定期贈与と判断されるとまとめて税金がかかる!?対策もご紹介

生前贈与の基礎控除を活用するなら定期贈与に注意しましょう

生前贈与の基礎控除110万円以内であれば、非課税で財産を渡すことができます。
しかしやり方を間違えると定期贈与とみなされ、非課税だったはずの数年分の生前贈与に対し課税されてしまいます。
本記事では定期贈与とは何か。定期贈与と判断されないための対策をご紹介します。
定期贈与とみなされないようにするにはどうすればいいか知りたい方はぜひご一読ください。

毎年110万円受け取って問題ない

毎年110万円ずつ財産を受け取ること自体に問題はありません。非課税で受け取ることができます。
国税庁も以下のように回答しています。

「定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。」

引用 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
「毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合 A1」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402_qa.htm
(2024/03/06 利用)

最初に総額を決めてしまうと定期贈与に

毎年同じ金額を渡す場合に、あらかじめ総額を決めて、それを分割して定期的に渡してしまうと「定期贈与」と判断される可能性があります。

定期贈与とは

定期贈与とは、最初に渡す総額を決め、それを一定期間複数回に分けて定期的に財産を渡すことです。
例えば1,000万円を渡したい場合、そのまま一度に渡してしまうと1,000万円から基礎控除を引いた890万に対して課税されます。
そこで毎年100万円ずつ10年間定期的に渡す約束をすれば、時間はかかるものの1,000万円を非課税で渡せることになります。
しかし総額1,000万円渡すことを事前に取り決めると、定期贈与と判断されてしまいます。

定期贈与と判断されるとまとめて贈与税がかかる

定期贈与と判断されると、最初に決めた金額に対し贈与税がかかってしまいます。
先程の例であれば、最初から1,000万円渡したものとして課税されることになります。
贈与税は累進課税のため、基礎控除を超えた金額が大きければ大きいほど税率も上がっていきます。
そのため、定期贈与と判断されると贈与した金額によって納税額が大きくなる可能性があります。

定期贈与と判断されないための4つの対策

税務署に定期贈与と判断される原因は以下の2つです。

  1. 事前に総額を取り決めた上で財産を渡している
  2. 生前贈与の証拠がなく、実際にどのような贈与が行われたのか不透明

しかしこれ以外にも税務署に定期贈与と判断されてしまう可能性はあるため不安な方は専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

つまり「事前に取り決めていない、毎年話し合った上で財産を渡している」ということを目に見える形で残すことで、定期贈与と判断されないよう対策することができます。
ここでは税務署に定期贈与と判断されないためにできる対策を4つ紹介します。

  1. 時期・金額を変える
  2. あえて基礎控除を超えて贈与する
  3. 銀行振込で証拠を残す
  4. 毎回贈与契約書を作成する

対策①時期・金額を変える

毎年同じ時期・金額で財産を渡すと、前述でご紹介した「事前に総額を取り決めていたのではないか」と税務署に疑われるおそれがあります。
これを防ぐために、年ごとに財産を渡す時期や金額を変えましょう。

例えば、ある年は4月に100万円、ある年は10月に90万、またある年は7月に110万円……というように時期・金額を変えると、定期贈与とみなされない可能性が高くなります。

対策②あえて基礎控除を超えて贈与する

あえて110万円を超えて生前贈与をすると、受け取った人は少額ですが課税されてしまいます。
しかし代わりに非課税で移すつもりがないことを示すことができ、定期贈与とみなされる可能性を下げることができます。

受け取った人は贈与税の申告が必要になる

年110万円を超えて財産を受け取った人は贈与税の申告が必要です。
贈与があった年の翌年2月1日から3月15日の間に申告書を税務署に提出することで申告します。

対策③銀行振込で証拠を残す

現金を渡す場合、手渡しではなく銀行振込にすることで定期贈与と判断されにくくできます。
手渡しだと証拠が残らないので、「実際はどんな贈与が行われていたのか不透明だ」と税務署に目をつけられるおそれがあります。
必要のない指摘を受けないためにも、銀行振込で証拠を残しましょう。

対策④毎回贈与契約書を作成する

毎回贈与契約書を作成するのも、定期贈与対策として有効です。
贈与契約書は贈与を行ったという証拠を残すために、財産を渡す人・受け取る人の間で作成する書類です。
毎年贈与契約書を作成することで、事前に約束した贈与ではないと証明することができます。

注意!贈与契約書を作るだけでは対策にならない

単に贈与契約書を作るだけでは定期贈与対策になりません。
もし「○年で合計○円財産を渡す」と書いてしまうと、対策にならないどころか逆に定期贈与と判断される危険性があります。
財産を渡すたびに毎回新しい契約書を作成しましょう。

定期贈与とあわせて気をつけたい名義預金

生前贈与を活用する上で、定期贈与と同じく気をつけたいのが名義預金です。
名義預金とは、口座の名義人と実際に管理している人が異なる口座のことをいいます。

例えば以下の場合、名義預金と判断される可能性が高いです。

  • 子・孫が名義人の口座に親・祖父母が毎年お金を預けているが、子・孫は口座の存在を知らない
  • 通帳・カードを親・祖父母が管理している

親・祖父母は生前贈与しているつもりでも、名義預金と判断されると生前贈与したことにならず、相続財産とみなされ相続税がかかることになります。

名義預金と判断されないためには

名義預金と判断されるのを防ぐには、子・孫に通帳やカードを渡して入出金させると効果的です。
また、定期贈与と同じく贈与契約書を作成し生前贈与の証拠を残すことで、名義預金と判断されにくくできます。

生前贈与についておさらい

ここまでで定期贈与の概要と対策、そして同じく気をつけたい名義預金についてご紹介しました。
もし財産を渡す人が対策をしなかった場合、税金を払うことになるのは財産を受け取る人です。
ここでは財産を受け取る人にも知ってほしい生前贈与について簡単におさらいします。

誰から受け取っても年間110万円まで非課税

前述でご紹介しましたが、生前贈与では年間110万円まで非課税で財産を渡すことができます。
この「年間110万円」は、財産を渡した人ではなく受け取った人から見た金額になります。
そのためもし両親からそれぞれ110万円ずつ受け取ると、合計220万円となり基礎控除110万円を超えるため贈与税が課税されます。

贈与税の計算方法

もし年110万円を超えて財産を受け取った場合、超えた分に対し贈与税が課税されます。
課税方法は暦年課税か相続時精算課税制度かによって違います。

暦年課税制度の場合

暦年課税制度を選択した場合、110万円を超えた金額に対して課税されます。
税率は一般贈与と特例贈与によって異なります。

一般贈与の速算表

一般贈与の速算表は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
200万円超300万円以下15%10万円
300万円超400万円以下20%25万円
400万円超600万円以下30%65万円
600万円超1,000万円以下40%125万円
1,000万円超1,500万円以下45%175万円
1,500万円超3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

特例贈与の速算表

両親または祖父母からの贈与で、受け取った人が18歳以上の子や孫である場合、特例贈与になります。
特例贈与は一般贈与に比べ、税率が低く設定されています。
速算表は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
200万円超400万円以下15%10万円
400万円超600万円以下20%30万円
800万円超1,000万円以下30%90万円
1,000万円超1,500万円以下40%190万円
1,500万円超3,000万円以下45%265万円
3,000万円超4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

相続時精算課税制度の場合

相続時精算課税制度を利用する場合、累計で2,500万円まで非課税です。
2,500万円を超えた部分に関しては一律で20%課税されます。

どのように財産を渡していくか、相談できていますか?

元気なうちから生前贈与を活用すれば、多くの財産を非課税で子に残すことができます。
しかし定期贈与とみなされると贈与税が課税されてしまい、渡した財産が減ってしまう可能性があります。
このように「税金対策をしたのに、結果として効果的ではなかった」という例は少なくありません。
相続ぽるとは税金対策を含む相続対策の入口としてみなさんにご利用いただいております。
それぞれのご家庭の状況に応じ、本当に効果的な対策方法をご紹介いたします。
少しでも相続・贈与に不安のある方はぜひ私たちにご相談ください。

記事のまとめ

本記事では定期贈与とは何か。定期贈与と判断されないための対策についてご紹介しました。
毎年110万円ずつ渡すこと自体は問題になりませんが、もし定期贈与と疑われてしまうと、非課税で受け取れたはずの財産に課税されてしまいます。
基礎控除を有効活用するためにも、専門家に相談し贈与を進めていきましょう。