相続時に効力を持つ公正証書遺言とは?自筆との違いなども紹介

公正証書遺言は最も無効になりやすい遺言書です

相続対策の中で遺言書は取り組みやすい相続対策の1つです。
種類はいくつかありますが、その中でも最も無効になる可能性が低いのが公正証書遺言(読み方:こうせいしょうしょゆいごん)です。
公正証書とは「公証人」と呼ばれる、ある事実の存在、契約等の法律行為の適法性等について、公権力を根拠に証明・認証する人が作成する文書のことです。
本記事では公正証書遺言の作成方法や注意点・メリット・デメリットなどについて詳しくご紹介します。

公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言の作り方は他の遺言書など特別代わっていることはありませんが、次のようなステップを踏む必要があります。

  1. 被相続人が原案を作成する
  2. 公証役場に向かい公証人に内容を伝える
  3. 公証人から伝えられた必要書類を準備する
  4. 証人2名を決める
  5. 証人2名立ち会いのもと遺言書を作成してもらう
  6. 内容を確認後、問題無ければ被相続人・公証人・証人2名が署名・捺印を行う
  7. 正本が被相続人に渡されて、手数料を現金で支払う

細かく分類しましたがどの手続きも重要なステップになります。

①被相続人が原案を作成する

被相続人は遺言の内容を事前に準備します。
この原案には、財産の分配方法、特定の物品の指定受取人、遺言執行者の指名など、遺言に関わる全ての事項を明確に記載します。
これは公正証書遺言を作成する際の基盤となります。
原案はあくまで原案なので書き方などは決まっておりません。
実際に公正証書遺言を作成するのは公証人のため原案はメモなどで作成しても問題ありません。

公証役場に向かい公証人に内容を伝える

原案が完成したら、被相続人は公証役場を訪れ、公証人に遺言の内容を説明します。
例えば「不動産を妻。預貯金を長男。証券を長女」などというように公正証書遺言に記載される内容を伝えます。
この段階で公証人は遺言の法的な有効性を検討し、必要に応じて修正や追加を提案することがあります。

公証人から伝えられた必要書類を準備する

公証人によって指示された必要書類を準備します。
これには身分証明書、登記簿謄本、財産評価書などが含まれることがあります。
これらは遺言の内容が正確であることを保証し、法的手続きをスムーズに進めるために必要です。

証人2名を決める

公正証書遺言の作成には、証人2名の立ち会いが必要です。証人は成年であり、遺言内容に利害関係がない第三者である必要があります。証人は遺言作成の正当性を保証する重要な役割を担います。

証人2名立ち会いのもと遺言書を作成してもらう

証人2名の立ち会いの下、公証人が遺言書を正式に作成します。
この過程で、公証人は遺言の内容を朗読し、全ての関係者が内容を理解していることを確認します。

内容を確認後問題無ければ被相続人・公証人・証人2名が署名・捺印を行う

遺言の内容に全員が同意した場合、被相続人、公証人、そして証人2名が遺言書に署名し、捺印を行います。
これにより公正証書遺言書は法的に有効なものとなります。

正本が被相続人に渡されて、手数料を現金で支払う

手続きが完了すると、公証人から遺言書の正本が被相続人に渡されます。
また、この時点で公証人への手数料が現金で支払われます。
手数料の額は一般的には財産の価格に基づいて決定されます。

作成時の注意点

実際に公正証書遺言を作成する場合には、どのような注意点が必要になるのでしょうか。

①2名の証人が必要になる

公正証書遺言を作成する場合には、証人が2名以上必要になります。
前述でもご紹介しましたが、未成年者や公証人の配偶者・推定相続人などは公証人になることはできません。
これは民法でも定められているため証人として認められない人が立ち会いのもと作成された公正証書遺言は無効になってしまいます。
公正証書遺言を作成するにあたり証人が見つからない場合には、公証役場に相談をすることで紹介を受けることができます。

②内容を訂正する場合には新しく作成する必要がある

遺言書は自身の保有している財産の引き継ぎ先を決めることができますが、その反面誰にどれだけの財産を渡すのか途中で変わる可能性があります。
自筆証書遺言などの本人が作成する遺言書は、書き直しをすることができますが公正証書遺言の場合は、新しく作成する必要があります。
その際は、再度手数料を支払う必要がありますので注意しましょう。

③遺言執行者を決めておく

公正証書遺言だけではなく、遺言書を作成する場合にはその内容を実現するために様々な手続きを行う遺言執行者を決めておくと良いでしょう。
遺言執行者は弁護士などの専門家に相談をすることで依頼をすることも可能です。
遺言執行者は必ず決めておけなければならないわけではありませんが、あらかじめ指定をしておくことで、相続人が勝手に財産の分割をしたりするなどのトラブルを防ぐことが可能です。

④遺留分を侵害はできない

遺留分とは、相続人が最低限遺産を受取ることができる権利です。
遺言書に不平等な分割方法が記載されていた場合には、相続人は不足している割合を請求することができます。
遺留分は公正証書遺言などの無効になりにくい遺言書でも侵害することはできません。
公正証書遺言に限らず自筆証書遺言などを作成する場合でも、遺留分を侵害しないように作成する必要があります。

作成に必要な費用と書類

公正証書遺言を作成する場合には、自分で作成する自筆証書と異なり準備しなければならない書類や手数料が発生します。

費用

公正証書遺言を作成する場合に必要になる費用は主に2つあります。

  1. 公正証書にするために必要な手数料
  2. 公的書類などの発行手数料

上記2つの費用が必要になります。
公正証書にするために支払う手数料は、1人あたりの相続財産の取得金額によって異なります。
公正証書遺言の手数料は、日本公証人連合会や公証人手数料令などに記載されています。

1人あたりの取得金額支払う費用
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

参照:e-Gov法令検索 公証人手数料令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405CO0000000224
(2024年4月28日 利用)

※1億円を下回る金額の場合には、別途1万1,000円が追加で必要になります。
例えば相続人が3名(A・B・C)の場合、相続財産の総額が8,000万円の公正証書遺言を作成する場合には以下の計算になります。

 取得金額手数料
A3,000万円2万3,000円
B2,500万円2万3,000円
C2,500万円2万3,000円
合計が1億円以下のため別途手数料が必要 1万1,000円
合計8,000万円8万円

今回ご紹介している計算方法は、あくまで概算になるため具体的な計算方法などを知りたい方は、弁護士や税理士などの専門家に相談をして進めることをおすすめします。

書類

公正証書を作成する場合に必要な書類は以下の通りです。

  • 被相続人の実印
  • 印鑑証明書
  • 戸籍謄本
  • 証人の本人確認資料
  • 証人の認印
  • 不動産(土地や家)がある場合は、登記簿謄本などの書類
  • 財産目録
  • 遺言執行者を選任する場合

上記の書類以外にも、相談する専門家によっては「この書類も準備しておいたほうが良い」ということもありますので、必ず相談をしながら進めましょう。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言は無効のリスクが抑えられる遺言書ですが、それ以外のメリットはどのようなメリットがあるのでしょうか。
公正証書遺言のメリットは以下の通りです。

  • 偽造や捏造のリスクを減らせる
  • 検認手続きが必要ない
  • 身体に特別な配慮が必要な方でも作成が可能

①偽造や捏造のリスクを減らせる

遺言書は相続時に大きな効力を持ちますが、偽造や捏造などのリスクがあります。
比較的かんたんに作成することができる自筆証書遺言などは作成するのは簡単ですが、保管をするのは被相続人本人になるため発見された場合に偽造されてしまう可能性があります。
しかし公正証書遺言では、公正証書という形で保管されますので偽造や捏造のリスクが抑えられます。
公正証書遺言が無効になりにくいのは、作成するのが公証役場の公証人であり内容は口頭やメモを用いて作成されるため偽造や捏造のリスクを抑えられるためです。

②検認手続きの必要がない

自筆証書遺言や秘密証書遺言などの本人が作成する遺言書は、発見した際には家庭裁判所で検認手続き(内容を明確に偽造や捏造)を行う必要があります。
検認手続きをしていないと無効になるわけではありませんが、罰金刑になる可能性があります。
しかし公正証書遺言では作成者が公証人のため内容を確認する必要はありません。
そのため公正証書で作成された遺言書は、家庭裁判所による検認手続きが必要ありません。

③身体に特別な配慮が必要な方でも作成が可能

自筆証書遺言は、全文を全て直筆で書かなければ効力を持ちません。
しかし、公正証書遺言の場合は『遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。』と民法で定められています。
例えば、直筆することができない方(耳が不自由な方などの身体に特別な配慮が必要な方)でも公正証書遺言であれば作成することが可能です。

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言を大きなメリットがあり、無効になるリスクを抑えることができます。
しかしメリットがある反面デメリットも存在します。

公正証書遺言のデメリットは次の通りです。

  1. 財産によって作成の手数料が変わる
  2. 証人の確保が必要

①財産によって作成の手数料が変わる

前述でご紹介しましたが公正証書遺言は、作成にあたり手数料(費用)が必要になり、作成するに当たり公証人に支払う手数料です。
遺言によって取得する相続財産によって手数料が異なります。

そのため取得する相続財産がおおければ多いほど、支払う手数料も多くなります。

②証人の確保が必要

2つ目は証人の確保が必要であることです。
公正証書遺言において証人は、作成された遺言書が被相続人の意思をしっかり反映されている遺言書であるのかを第三者の目線で確認するために必要になります。
証人になるために必要な資格などは特にありませんが、前述でご紹介したように未成年者や将来相続人になる可能性がある人を証人にすることはできませんので注意しましょう。
証人などを決めることが難しい場合には、専門家である弁護士などに相談しながら進めることでトラブルを回避できますので不安な方は相談しましょう。

記事のまとめ

公正証書遺言は、遺言書の中でも公証人と呼ばれる人物が作成し、公証役場で保管がされるため、改ざんや変造などが起きにくい遺言書です。
しかし、公証役場まで足を運ばなければならないことや他の遺言書に比べて費用がかかるため、誰でも公正証書遺言を作成したほうが良いというわけではありません。
そのため、自分にはどの遺言書があっているのか専門家に相談しながら進めましょう。