認知症の場合は生前贈与は可能?|無効にならない手続きや対策を解説‼

認知症では生前贈与が無効になる可能性が高いです

認知症になると様々な行為に制限がかかるということを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
認知症になってしまうと、法律行為に制限がかかるため元気な間に行おうと考えていた生前贈与ができなくなる可能性があります。
本記事は認知症になった場合の生前贈与は可能なのか。生前贈与の仕組みなどの基本的な部分から注意点や無効になる理由などをご紹介します。
生前贈与以外に行う事ができる方法もご紹介しておりますので、気になる方はぜひご一読ください‼

生前贈与とは?

まずは基本である生前贈与から振り返りましょう。
生前贈与とは、元気な間に自分の財産を少しづつ相続人(子や孫)に贈与していく事をと言います。
早い段階から始める事で、将来的な相続財産を事前に減らせるため、相続時にかかる相続税を減少させる事が可能です。

生前贈与を行う際の注意点

生前贈与を行う上で気をつけなければならない点がいくつかあります。

  1. 毎年同じ日は避ける
  2. 口座管理は贈与者ではなく受贈者が行う
  3. 贈与契約書の作成をしておく

その他にも注意しなければならない点がありますので、気になる方は詳しい記事をご参照ください‼

認知症になると受ける影響とは?

「65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約5人に1人になるとの推計もある(図1-2-11)。」とあるように、2025年には5人に1人が認知症になる可能性があると言われています。

出典 「平成29年度版高齢社会白書 概要版」(内閣府)より
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
(2023年9月5日 利用)

認知症になると様々な行為に制限がかかると冒頭に前述しましたが、実際にどのような影響があるのでしょうか。
今回は認知症になってしまうとできなくなることを2つご紹介します。

①預金の引き出しができない

認知症になってしまうとできなくなることの一つが預金の引き出しが行えない口座凍結が起きます。
認知症になってしまうと判断能力(以降=意思能力)が低下するとみなされます。

そのような場合、銀行は本人の財産を護る観点から口座凍結という措置を取ります。

②意思能力の低下により法律行為が難しい

前述で少し触れましたが認知症の場合、意思能力の低下が認められます。
症状によって、異なりますが契約しなくても良い契約を締結してしまう可能性などがあります。

認知症の方が結ぶ契約は取り消しもしくは無効になります。

一般的に意思能力が低下している者の行為は、無効もしくは取り消しをする事が可能です。
無効や取り消しに関して詳しく知りたい場合は、専門家である弁護士などにご相談する事をおすすめします。

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相続時のトラブルはどんな事がある?

ここまでは認知症になると行えなくなる事を紹介しましたが、相続が発生した場合にはどのようなトラブルが起きてしまうのでしょうか。
今回は4つに絞ってご紹介します。

①遺産分割協議ができない

遺産分割協議は相続人全員で財産の分け方を話す重要な話し合いです。
しかし認知症の方がいる場合は、正常に判断することが難しいため後見人と呼ばれる代わりに法律行為を行う者を選任しなければなりません。

②相続放棄ができない

相続放棄とは、相続人としての一切の権利を放棄することであり相続開始から3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。
遺産分割と同様に判断する事が難しいので後見人を選任しない限り、相続放棄を行う事ができません。

③売買契約が行えない

法律行為の中には売買契約があります。
不動産や土地などの財産を売却したくとも、認知症の場合には行うことができません。

④遺言書が無効になる

遺言書は相続において重要な書類です。 財産の分け方を決める事が可能な遺言書ですが、これは誰にどのくらいの財産を分けるかを決める書類のため法律行為になります。
しかし認知症の場合は、相続人が自己の利益のために被相続人に対し遺言書の改ざんなどを指示する可能性があります。

認知症の場合は生前贈与は可能?

ここまで様々な認知症によりできなくなることをご紹介しましたが、生前贈与などの行為は意思能力が低下している場合に行えるかどうかご紹介します。

認知症の場合は生前贈与は無効になる可能性が高い

生前贈与のルールとして、生前贈与など行為は双方の同意が取れれば契約が成立する諾成契約になります。
そのため生前贈与を行う場合は、贈与者(生前贈与をする人)と受贈者(財産を受取る人)の2名が互いに納得していれば成立します。
しかし、認知症などの意思能力が低下もしくは失われたと判断された場合には、双方の同意が取れていないため生前贈与が成立しません。
そのため認知症が発覚した後の生前贈与は無効になるケースがあります。

軽度の場合は有効な場合があります。

認知症の場合の生前贈与は無効になる可能性が非常に高くなりますが、一切できないわけではありません。
「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる。」と民法第五百四十九条に定められています。

認知症の場合、症状によって進行具合が異なりますので、意思能力を有している間であれば低下していても生前贈与が有効だと判断される事があります。

認知症の場合に生前贈与をする際の手続き

実際に認知症になってしまった場合の生前贈与はどのような手続きが必要になるのかご紹介します。
大きく分けて3つのステップを踏むことで認知症の場合でも生前贈与ができる可能性があります。

  1. 医師の診断と専門家のシミュレーション
  2. 贈与契約書の作成
  3. 贈与後、必要であれば贈与税の申告・納付手続きを行う

①医師の診断と専門家のシミュレーション

生前贈与を成立させるために必要なのは双方の同意、つまりは意思能力があるかどうかで生前贈与が可能であるかどうかが判断されます。
しかし、軽度の認知症であっても一般人に意思能力の有無を判断することは難しいです。
そのため医師の診断を受けて、認知症患者の方の意思能力の有無を決定してもらいます。
ここで重要になるのは意思能力があると書面で残してもらうことが重要です。

口頭ではなく診断書を出してもらうことで、どの程度の症状なのかが整理しやすくなり後にトラブルになってしまった場合でもその時点では意思能力があった証拠として残しておくことが可能です。
医師による診断書により、可能な場合には贈与関連に詳しい税理士などの専門家に相談しましょう。

②贈与契約書を作成する

贈与は口頭でも契約が可能な諾成契約となっております。
しかし、口頭では言った言ってないの水掛け論になりやすいです。
認知症などの場合はトラブルになりやすくなってしまうため、贈与した事実を書面として残す贈与契約書の手続きをしておきましょう。
贈与契約書を残しておくことで、税務調査や贈与の事実が明確になるため、のちの相続でも公平に遺産分割が可能になります。

不動産の場合は注意が必要

不動産や土地などを生前贈与する場合にはいくつかの注意点があります。
不動産は評価によって金額が大きくなる可能性が高いです。そのため贈与税が課税されることや不動産取得税や登録免許税などの税金もかかります。
さらに所有権移転登記や名義変更などの手続きも必要になります。
不動産を生前贈与する場合には、専門家である司法書士や税理士などと協力しながら進めていく事をおすすめします。

③必要に応じて贈与税の申告・納付を行う

相続時精算課税制度を活用しない場合の生前贈与は、暦年贈与として扱われ年間110万円までの非課税枠が設けられています。
生前贈与した財産の金額が非課税枠を超える場合には、贈与税の申告・納付の手続きが必要になります。

成年後見制度では生前贈与はできません‼

認知症対策として成年後見制度がありますが、後見人は被後見人の財産を保護するための制度です。

そのため成年後見制度を利用し、後見人を通して生前贈与をしたい考えている方もいらっしゃると思いますが、生前贈与は被後見人の財産を減少させる贈与のため成年後見制度では生前贈与を行うことはできませんので注意しましょう。
さらに後見人を選任するためには裁判所の手続きや、後見人に支払う報酬が必要になるなど後の相続人に負担がかかる場合があります。

認知症対策のためには家族信託を活用しましょう‼

認知症はいつ起きてしまうのか誰にも判断ができず、認知症になってしまったら様々な行為ができなくなってしまいます。成年後見人では、生前贈与などの対策を行う事ができません。
認知症対策をする場合は、家族信託という制度があります。
家族信託とは、本人が健康で意思能力が十分なうちに家族に財産の「管理・運用する権利」を任せる契約を結ぶことで、認知症による資産の凍結やを防ぐ仕組みです。
本人が元気な間は本人の意思で財産管理ができ、資産の運用や生前贈与・相続税対策もできます。
認知症などにより判断能力が低下した後は、家族が代わって本人の意向に沿った財産の管理や運用を引き続き行えるようにする事が可能です。
生前贈与と同じように、元気で判断があるうちに財産に関する権利を移転させる事が可能になります。
認知症対策を行う場合、家族信託を活用することで成年後見制度ではできないような対策が可能になります。
一方で手続きには、専門家との連携や知識などが必要になります。

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相続ぽるとでは、生前贈与だけではなく「相続の適切な入り口」としてみなさまにご利用頂いております。
認知症対策のためには何ができるのか。生前贈与を上手に行うための方法など必要に応じて専門家をご紹介し、ご家庭にあった相続の最適化をご案内しております。
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記事のまとめ

今回は、認知症になってしまった場合でも生前贈与が可能であるかどうかご紹介しました。
認知症は発症してしまっても症状が軽度であれば生前贈与を行うことは可能になります。
しかし医師や税理士などの専門家と連携を取らなければ、どの程度の症状なのか・生前贈与が行えるのかどうかなどの判断が難しくなります。
個人的判断で生前贈与を行うと無効になる可能性が高くなります。
生前贈与は元気な間から少しずつ行う事が相続対策・相続税対策に繋がります。
しかし認知症はいつ起きてしまうか誰にも判断ができません。
認知症による生前贈与を有効的にする場合は、医師や税理士などの専門家に相談して進めていくことをおすすめします。