その口座..相続財産かも!?名義預金がもたらす相続への影響

その預金口座、子や孫に渡らないかもしれません。

その預金口座、子供や孫に渡らないかもしれません。
驚かれるかもしれませんが子や孫のために、口座を開設し積みたてているというケースを聞く方は多いかと思います。
ですが、口座が名義預金と判断されてしまった場合には、子や孫のものではなく相続人の相続財産になってしまうかもしれません。
相続時に大きな影響をもたらす名義預金をあなたの家族・親御さんは行っていないでしょうか。
本記事では、相続財産に含まれる可能性が高い名義預金についてご紹介します。あなたが大切にしている子や孫のためにしている事が無駄にならないように対策もご紹介しておりますので、気になる方はぜひご参照下さい。

名義預金とは?

そもそも名義預金とはどんなものなのか。
名義預金とは「口座の名義人と実際にお金を出している人が異なる口座」のことであり、簡単にご紹介すると他人名義の銀行預金のことです。
冒頭でご紹介しましたが、子や孫のために貯金をしているケースが多いです。

あなたも当てはまるかも!?-名義預金とされやすいケース-

普段聞き慣れない名義預金は相続時に大きな影響を与え、財産を引き継ぐ相続人たちが困るケースが多くあります。
名義預金と判断される場合、資金源が誰なのかという事がとても重要になります。
ここでは、名義預金とみなされやすいケースをいくつかご紹介します。あなたも当てはまるかどうかチェックしてみて下さい!

ケース①通帳・印鑑の管理が被相続人

子や孫のために口座を開設したはいいけれども、「使い込まれたら嫌だな…」と考える方も多いのではないでしょうか。
出金をなるべくさせないためにも通帳や印鑑の管理を入金している御本人がされているケースが良くありますが、この場合には名義預金だと判断されてしまいます。

ケース②名義人が口座の事を知らない!

使い込みを防ぐために名義人である子や孫に口座の事を伝えずに預金をしていた場合には、名義預金と判断されやすくなります。

ケース③生活費の一部…預金していませんか?

実は子や孫のための預金行為以外にも名義預金と判断される事があります。
それが被相続人のお金を預金していた場合、へそくりなどです。
例えば、夫から生活費を受け取りやりくりをしていた配偶者である奥様がこっそり生活費の一部を節約などをしてためていた場合には、名義預金と判断されてしまいます。
「ずっと専業主婦だったから、コツコツ貯めたお金なのにどうして夫の財産として数えられるの‼」と感じる方が多いと思いますが、名義預金で重要になるのが貯金をするための資金源が誰の資金なのかです。
生活費を貯めている場合でも、生活費を夫から受け取りコツコツ貯めている場合でも夫からの生活費がなければ貯められないお金のため、夫の相続財産としてカウントされます。

名義預金は税務調査でバレる‼

名義預金と調べれば「ばれる」などと出てくるけど口座は名義人で作成しているので、見かけ上は隠し通せると考える方もいらっしゃいますが、税務署は全てお見通しです。
名義預金などの預貯金がある場合、相続財産と合わせる事を知らない方はそのままにしてしまい相続税の申告でミスをしてしまうケースが多いです。
そのため、税務署は名義預金の口座が無いかを厳しくチェックしています。
ではなぜバレてしまうのでしょうか。

なぜバレる?

実は、税務署には預金の動きを調査する事ができます。
これは本人の許諾がなくても行える調査です。KSKシステム-KOKUZEI SOUGOU KANRIシステム-(国税総合管理システム)というシステムを活用し、全国の国税局や税務署とネットワークを結び、納税者などの口座で不審なお金の動きが無いかを調査する事が可能です。
そのため多額の資金が流れていないか・基礎控除額を超える贈与のはずなのに贈与税の申告がない・夫から妻の口座に流れていないか。などの様々な調査をする事が可能です。

参照:財務省 国税総合感(KSK)システムの概要
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/review/2020/010007shiryo.pdf
(2023年11月8日 利用)

税務署にバレずに名義預金は不可能

KSKシステムで不審なお金の動きは調査可能なため、バレずに名義預金を行う事は不可能です。
「その時にわからなければ良い」と思い、早い段階から初めても過去分のデータも国税庁が一元管理をしているため税務署の目をごまかす事はできません。

贈与税ではなく相続税の課税対象となります

財産を子や孫のために、別の口座で貯金する行為は財産の移転が起きているため贈与が発生します。
そのため、名義預金は一種の生前贈与とも言えます。
しかし、贈与が成立するためには当事者間の間で合意が取れている場合にのみ贈与が成立します。
さらに贈与が成立するためには、贈与された財産を受贈者(財産を受け取った人)が自由に引き出しをして使用できる状態でなければなりません。
しかし、名義預金では口座や印鑑の管理が被相続人のため、受贈者がいつでも引き出せる状態ではありません。さらに名義人が相続人の場合は、相続人が名義預金について行われている事を知っているケースは少ないと思います。
そのため、名義預金では贈与が成立しないため口座に残された財産は相続財産として相続人たちの財産となり遺産分割協議などを行い分配を決めなければなりません。

相続後に発覚した場合

相続開始後、10ヶ月以内に相続税の申告まで終了したあとに名義預金が発覚した場合はどうなるでしょうか。
通常、名義預金がわかるのは相続後です。
前述で税務署はKSKシステムを利用して納税者の入出金情報を調査できるとご紹介しました。
さらに過去分のデータも所有しているため被相続人の資産状況もわかってしまいます。
相続税の申告などが終了した後に税務調査で名義預金が発覚した場合には、もう一度相続人たちで集まり遺産分割協議をしなくてはなりません。
さらに相続税の申告内容も変更されるため「修正申告」が必要になります。
相続後に自分たちで名義預金を見つけ、遺産分割を行い修正申告をした場合には過少申告加算税は追徴されませんが、気が付かずに税務調査によって発覚した場合には過少申告加算税や状況によっては重加算税などの追徴課税となる可能性があります。

税務調査で指摘された場合のペナルティ

税務調査等で指摘が合った場合には追徴課税といい、追加で税金を収めなければなりません。
追徴課税される税金は以下の税金のどれかになります。

  1. 無申告加算税
  2. 過少申告加算税
  3. 延滞税
  4. 重加算税

①無申告加算税

無申告加算税とは、相続税の申告期限を過ぎているのに申告をしない場合に課税されます。

②過少申告加算税

過少申告加算税とは、相続税の申告期限までに申告はしたが納付すべき金額が少ないなどの理由の場合にわざとでなくとも課税されます。

③延滞税

延滞税とは、相続税の申告は行ったが税金を納付するのが遅れた場合に課税されます。

④重加算税

重加算税は、追徴課税の中でも最も重い課税です。
故意に相続税の申告をしなかったり、申告すべき金額を改ざんしたなどの場合に課税がされます。

追徴課税の税率

追徴課税一覧税率
無申告加算税5~20%
過少申告加算税10~15%
延滞税期限から2ヶ月経過前まで2.4% 2ヶ月経過後8.7%※1
重加算税35~40%

※1 延滞税の税率は令和5年度の税率です。

相続税を申告した・申告していないなど状況によって課される税金は変わります。
失敗しないためには専門家に相談しながら相続税の申告書を作成することをおすすめします。

名義預金にならないためにできる対策

名義預金にならないためにできる事はどんなことでしょうか

①口座・印鑑の管理人を受贈者に‼

名義預金は一種の贈与です。
そのため、しっかりと贈与された人(受贈者)が贈与財産を受け取った事を認識し贈与財産を自由に引き出して使用できる状態でなければなりません。
非課税枠110万円以内の暦年贈与を行い、子や孫のために貯金をするのであれば通帳・印鑑の管理は受贈者が行えるようにしておきましょう。

②銀行振込で証拠を残す

贈与をする場合には、贈与の実態を残さなければなりませんので手渡しではなく銀行振込などの手続きを活用しましょう。

③贈与契約書で証拠を残す‼

名義預金と判断されないためには、贈与の実態が合った事実を残さなければなりません。
前述ご紹介した銀行振込で証拠を残すことも重要ですが、贈与を行う場合にはなるべく贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
贈与契約書は「いつ・誰から・誰に・どの財産を・どのくらい贈与するのか」という事を記載した契約書類です。
一般的に贈与は、当事者間の意思表示の合意で成り立つ諾成契約(口頭契約)です。そのため贈与契約書は必ずしも作成して置かなければならない書類ではありません。
しかし、贈与があることを互いに合意している贈与契約書があればいざという時の証拠になります。
さらに相続が発生してしまえば被相続人が本当に贈与の意志があったのかなどを判断できる人はいません。
贈与契約書は自分で作成することも可能であり、書き方も法律で定められているわけではありません。
ですが、有効な契約書作成する場合は税理士などの専門家に依頼する事をおすすめします。

贈与契約書は万能ではありません

税務署は贈与契約書を見て贈与の実態があったのかを確認するのではなく、贈与の実態があったかどうかで判断します。
不審なお金の動きがあるとみなされた時に贈与の事実があることを証明する書類が贈与契約書です。
贈与契約書があるからといい、必ずしも名義預金と判断されないわけではないので注意しましょう。

定期贈与に注意

こちらは名義預金と直接的な関係性はありませんが、暦年贈与を活用する場合には、毎年同じ金額を贈与し続けると定期贈与とみなされる可能性があります。
この場合、まとめて贈与したものとみなされて贈与税の課税対象になる可能性がありますので、時期や金額などをずらして贈与しましょう。

不安が安心に変わるチャンスを逃さないでください‼

相続が起きても家族みんな仲が良いから揉めない・うちにそんな財産はない。

そう感じる方もいらっしゃいますが、実はそのような方が相続や認知症で困ってしまうケースが多くあります。

何度も経験するものではない相続だからこそ、被相続人が目指す相続はどのような相続なのか。そのために相続人のあなたに何ができるのか・被相続人のために何をしたら良いのかわからなくなりがちです。

私たち相続ぽるとが「相続の最適な入り口」としてみなさまが安心して相続対策を進められるように支えます。

不安が安心に変わるチャンスを逃さないためにもお気軽に相続ぽるとへご相談下さい。

記事のまとめ

今回は意外と見落とされやすく、相続時に困るケースの多い名義預金についてご紹介しました。
子や孫のためにしていることでも贈与の一種です。判断されてしまうケースから考えられる対策はしっかりと贈与契約書の作成・申告をすること・通帳、印鑑の管理は受贈者が行う事が重要です。
対策をしておかなければ相続時に相続人が余分に税金を支払う可能性が高くなり、何より子や孫の財産ではなく相続財産として遺産分割協議の対象財産に含まれてしまいます。
例え夫婦間であっても名義預金が成り立ちます。
相続後に発覚した場合には修正申告が必要になり、場合によっては相続税とは別に追徴課税などを収める必要性があります。
不安な方は専門家に相談しながら進める事をおすすめします。