相続で代償分割する予定だが、「お金がない!」場合の解決策とは?

相続で悩む人

相続は関係ないと思っていたけど、自宅はどう分ければいいのかな?

相続で悩む人

母と一緒に暮らしていた自宅を売却する必要があるのかな?

相続と聞くと、「ウチには関係ない」という方が結構いますよね。資産が「それほど」無いから?兄弟の仲が良いから?? 

でも自宅が親の持ち家で、兄弟姉妹がいる場合、そうは言っていられません。

相続が発生し、親の財産を兄弟姉妹で平等に分ける事になった場合、どのように分けるのでしょうか?特定の兄弟姉妹が自宅を相続する事になると、その代わりに他の相続人に対し相続分に見合う現金を支払う方法があります。これを代償分割と言います。しかし、支払うお金がない場合、どのような解決策があるのでしょうか?今回のコラムではこのような場合の解決策についてお伝えします。

この記事の筆者

江原 順子

相続コンサルタント・相続診断士

子育てをしながら配偶者の母親の介護を経験。配偶者の両親の相続を続けて経験した後、自身の父親の相続を経験。その際、専門家に頼らず全て自分自身で相続手続きを行い、手続きの煩雑さと専門用語や法律の難解さに四苦八苦した事から、相続診断士資格を取得。

相続に関して早く備える事の大切さに気付くと同時に40代50代の相続に対する関心の薄さに危機感を感じて起業。相続を受け取る側の立場にて必要な知識やサービスを提供している。「寄り添う」というスタンスでの相続コンサルティングには定評がある。

分割方法の種類

相続で遺産分割をする場合、遺言による相続分の指定があれば指定相続分で、指定がなければ原則、法定相続分となります。分割に当たっては遺産の種類や性質、各相続人の立場、ライフスタイルを考慮する必要があります。実際の分割では3つの方法があります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割

現物分割

言葉通り、遺産をあるがままの形で、数、金額、割合を定めて分割する方法です。                    この場合、相続人間の遺産額が凸凹となるなど、課題も多いのが実情です。

換価分割

遺産の全部または一部を金銭に換価し、そのお金を分割する方法です。             自宅など思い入れの強い遺産を換金する事に抵抗を感じる方も少なくないでしょう。

代償分割

特定の相続人が遺産を取得し、その代償として自分の固有財産を他の相続人に支払う方法です。  例えば、遺産の大半が店舗兼自宅で、家業を継ぐ長男にこれを相続させたい場合、次男の相続財産が長男に比べて著しく低くなり次男に不満が生じます。このような事情がある場合に代償分割をする事が多いです。遺産を取得する相続人は、その代償財産を用意しておく必要があります。

代償分割のメリット・デメリット

メリットは比較的公平に遺産分割が可能になるという事と、親から継いだ財産を残せるという事です。思い出のつまった実家を相続の為に売却しなければならないのはどこかさみしい気がしますよね。   デメリットは遺産の評価(特に不動産)が一律ではないという事と、遺産を取得する相続人に資力が必要であるという事です。遺産の規模にもよりますが、不動産が含まれると代償交付金の金額も大きくなりますのでその準備が必要になります。

注意点

代償分割はあくまでも分割の一つの方法です。遺産分割協議書に明記しておけば、贈与税の課税対象にはなりません。遺産分割協議書に明記していない場合は代償交付した財産が贈与されたものとみなされる場合がありますので注意しましょう。

代償交付財産の事前準備

代償交付財産は相続人固有の現金や不動産、株式などの資産から捻出しなければなりません。手元の財産が無い場合は、生命保険を利用すると便利です。

【方法その①】                                     被相続人である親が被保険者・契約者である生命保険契約の受取人を、遺産を取得する相続人に変更して、相続発生時に代償交付財産の原資とする。

【方法その②】                                    被相続人である親が被保険者、遺産を取得する相続人が契約者・受取人とする生命保険に加入する。保険金額はあらかじめ代償交付金額を試算し、その金額に設定します。          このとき、保険料相当額の現金を親から遺産を取得する相続人へ生前贈与すると、親の財産を減らすことになるため、節税効果も同時に期待できます。

注意点

生命保険契約の死亡保険金は本来の相続財産ではありません。受取人固有の財産になるため、上記の遺産を取得する相続人が長男(2人兄弟の場合)という事案において、死亡保険金の受取人を次男にすると、次男は死亡保険金を受け取っても親からの相続財産を受け取っていないこととなります。その結果、次男はさらに親の財産の1/2の分割を請求する権利があり、場合によっては新たなトラブルの素となってしまいます。その為、代償分割のための生命保険契約の受取人は遺産を取得する相続人とする必要があります。注意しましょう。

さいごに

冒頭の事例のように、「ウチには相続は関係ない」という普通の家庭の方が、いざ相続発生となるともめる事が多いです。実際に家庭裁判所に持ち込まれる調停案件の7割が遺産総額5,000万円未満だそうです。財産が自宅のみで相続人が複数の場合は、事前対策として生命保険を活用した代償分割プランを検討してみてはいかがでしょうか?上記「方法その①」のように既に加入している契約の受取人変更だけで完了する方も多いと思います。まずは遺産総額試算をしてみて、代償分割する場合の代償交付金がどの程度になるのか確認してみましょう。