相続したら確定申告が必要になる?ケースや手続きを紹介

相続時の確定申告は2種類!違いをしっかり知っておきましょう

亡くなった方の財産(現金・証券・土地などの不動産)を引き継ぐ相続は、財産を引き継ぐことになるので「確定申告が必要」もしくは、「準確定申告をしなければならない」と感じる方は多いのではないでしょうか。
相続税の申告納付は必要になりますが、確定申告は一定の要件や金額までを超えない限りは必要ありません。
本記事では、相続時に必要な確定申告の種類とそれぞれ必要な場合などを詳しくご紹介します。

相続税の申告は必要だが、所得税は不要

前述でご紹介しましたが、相続税は基礎控除枠を超過した場合には税務署にて必要書類を提出しなければなりません。
しかし、所得税の確定申告は原則必要ありません。

違いは税金の種類の違い

相続の申告と確定申告の違いは、納付する税金の種類の違いにあります。
それぞれの違いは以下の通りです。

相続税

相続税は、相続が発生した際に亡くなった方の財産を引き継ぐ際に、前述でご紹介した基礎控除枠を超過した場合に課税される税金です。
相続税は、管轄の税務署に納付をする必要があります。
基礎控除枠は以下の通りです。

3,000万円+(600万円✕法定相続人の数)

上記の計算式で計算をします。

確定申告(所得税)

確定申告は、所得税に該当し給与所得や事業所得などがあります。
確定申告は、管轄の税務署に提出します。

2つの違いをかんたんにまとめると以下のようになります。

 相続税所得税
課税対象遺産給与所得や事業所得
納付先管轄の税務署管轄の税務署
控除枠基礎控除・配偶者の税額軽減・各種特例基礎控除・扶養控除・医療費控除・住宅ローン控除など
期限相続発生から10ヶ月以内翌年の3月15日まで
納付方法原則現金原則現金

後述でご紹介しますが、相続時の確定申告には2つ種類があり財産を引き継ぐ人が行うものと、亡くなった方の代わりに行うものの2種類あります。
それぞれ納付までの期限などが異なるため、後述で詳しくご紹介します。

相続で確定申告は必要になる2つ

前述で相続時には行う確定申告は、2つあるとご紹介しました。
それぞれ行うべき手続きや期限などが異なります。
まずここでは、概要をご紹介します。

  • 相続人の確定申告
  • 被相続人に代わって行う確定申告(準確定申告)

相続人の確定申告

まず1つ目は、相続人の確定申告です。
前述で相続人の確定申告は、原則必要ありませんとお話しました。
しかし、一定の要件に該当する場合には手続きを行う必要があります。
後述で詳しく必要な場合をご紹介しますが、ここでは簡単に必要なときのケースをご紹介します。

  • 生命保険等の死亡保険金を受け取った
  • 相続した土地などの不動産を売却した
  • 被相続人の事業を引き継いだ
  • 遺産を国に寄付した
  • 収益不動産かた収入があった

上記のような場合には、確定申告が必要になります。

期限

前述でご紹介したケースに該当する場合には、翌年の2月16日~3月15日までの期限の間に管轄の税務署で手続きをする必要があります。
合わせて、払いすぎた税金を払い戻す還付金がありますが、還付金の請求は翌年の1月から最大5年間までは請求が可能になります。

被相続人の確定申告(準確定申告)

2つ目は準確定申告です。
準確定申告とは、一定の要件に該当する被相続人の代わりに確定申告を行うことです。
この手続きは、相続が発生してから4ヶ月以内に手続きを行う必要があります。
通常の手続きとは別に必要になる書類があります。
不安な方は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続人の確定申告が必要なケース

遺産を実際に引き継いだ相続人が行わなければならない確定申告は、前述でご紹介した通りです。
ここからは詳しくご紹介します。

  • 生命保険の死亡保険金を受け取った
  • 相続した不動産などの財産を売却した
  • 被相続人の事業を引き継いだ
  • 遺産を国に寄付した後、控除を受ける場合
  • 収益不動産から収入があった場合

生命保険の死亡保険金を受け取った

遺産を引き継ぐ相続人が、生命保険などの保険金を受け取った場合には所得税を納税しなければならない可能性があります。
しかし、生命保険に関しては保険料の支払いを誰が行っていたのかによって確定申告をする必要があるのかないのか異なります。

亡くなった方が支払いをしていた場合

亡くなった方が、生命保険の保険料の支払いを行っていた場合、生命保険はみなし相続財産となります。
生命保険は、受取人があらかじめ指定ができる財産のため、元々保険金を受取る人の財産として扱われるため遺産分割の財産には含まれません。
このような財産をみなし相続財産といいます。
しかし、受取人があらかじめ指定がされていますが、相続によって財産の移転があるため相続税の課税対象財産としてカウントされます。
亡くなった方が、保険料の支払いをしていた場合には、相続税の課税対象財産となりますので、確定申告は必要ありません。

受取人が保険料を支払っていた場合

保険料を、保険金の受取人が支払っていた場合、相続が発生した際に受取る保険金は一時所得としてカウントされます。
一時所得として扱われる場合には、保険金や今まで納付した保険料などを基準として、所得税の計算を行います。

相続した不動産などの財産を売却した

相続人の中には、土地や建物などの不動産を引き継ぐ人も中にはいらっしゃいます。
相続した不動産に住む予定がない場合には、収益不動産にすることや不動産の売却などの手続きを行います。
仮に、不動産を売却したときの利益には、譲渡所得税が課税されます。
売却をした際に、譲渡所得税が課税された場合には確定申告を行う必要があります。

被相続人の事業を引き継いだ

亡くなった方の事業を引き継いだ場合には、遺産から事業所得を受取ることになるため確定申告が必要になります。

注意!準確定申告とは別

後述でご紹介する準確定申告時にも事業に関する事で必要になることがあります。
しかし、準確定申告は被相続人の代わりに確定申告を行うことであり、相続人の確定申告とは異なりますので注意しましょう。
不安な場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産を国に寄付した後、控除を受ける場合

相続税法上、遺産を国などに寄付を行う場合、寄付した財産は相続税の対象財産から外れます。
この非課税措置は、相続税を申告納付する際に書類を準備することで適用することができます。
寄附行為を行うと、所得税の控除を受けることができ、この控除を寄付金控除と言います。
寄付金控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
また、確定申告時が承認されると寄付金額に応じて所得税が軽減され場合によっては、既に支払った所得税の還付を受けることができます。

収益不動産から収入があった場合

相続した財産が、不動産(建物・土地)であり収益が見込める(アパートやマンション等)場合、賃貸借契約を締結しているときには、収益不動産から家賃収入が入ります。
この家賃収入は、不動産所得して扱われるため確定申告が必要になります。

今回ご紹介した内容は、一部のため場合によってはこれ以外のケースでも確定申告が必要になることもあります。
確定申告には追徴課税があるので、少ない金額での申告や無申告などの場合には別途税金を納付しなければならなくなります。
そのためには、税理士などの税金の専門家に相談することをおすすめします。

被相続人の確定申告が必要なケース

前述では、相続が終了した後に相続人が行う確定申告についてご紹介しました。
しかし、確定申告には2種類あり被相続人の確定申告もあります。
通常の確定申告は、1年間の所得を翌年の2月16日~3月15日までに、税務署に申告をします。
しかし、相続が発生してしまうと確定申告ができなくなってしまいます。
そこで亡くなった人の代わりに確定申告を行う準確定申告を相続人は行う必要があります。
ここでは具体的に準確定申告についてご紹介します。
相続人の確定申告も準確定申告も、手続きを行うのは相続人であることに変わりはありません。
また、全員が準確定申告を行う必要はなく要件に該当する被相続人の場合には必要になります。

必要な人

まずは、どのような要件の被相続人であれば準確定申告を行う必要があるのでしょうか。
以下に該当する場合には、準確定申告を行う必要があります。

  • 給与所得の合計が20万円以上の者
  • 2箇所以上から給与所得を受け取っている者
  • 給与所得が年2,000万円を超えている者
  • 公的年金等の収入が400万円以上あった者
  • 公的年金以外の所得が20万円を超えている者
  • 生命保険の保険金の課税対象金額が20万円を超えている者
  • 不動産(土地・建物)や株式売買などによる譲渡所得が20万円を超えている者

被相続人が上記に該当する場合には、準確定申告が必要になります。

行った方が良いケース

前述でご紹介した、準確定申告が必要な人に該当しない場合でも行った方がいいケースもあります。
それは過剰納付の還付がある場合です。
過剰納付とは、本来納めるべき所得税が、実際に支払うべき所得税よりも多い場合に差額を還付されることを言います。
例えば以下のような条件の場合を考えてみましょう。

被相続人の所得死亡日までに給与所得や年金所得があった
納付金額10万円
本来の納付金額8万円

この場合、本来の納付金額よりも2万円過剰に所得税を納付していることになります。
このような場合には、準確定申告を行うことで、過剰に納付した2万円が相続人に還付されます。

納税の期限

通常の確定申告は、1月1日~12月31日までの所得を翌年の2月16日~3月15日までに手続きをしなければなりません。
準確定申告は1月1日~死亡日までの所得を、相続開始から4ヶ月以内に行う必要があります。
あくまで確定申告の期限のため、還付金の申請をする際には期限はありませんので、注意しましょう。

かんたんにまとめると以下のようになります。

 通常(相続時)の確定申告準確定申告
納税義務者相続人相続人
所得の計算をする際に加算する期限1月1日~12月31日1月1日~死亡日まで

必要な手続き

準確定申告を行う場合には、以下の手続きが必要になります。

  1. 必要書類を準備する
  2. 確定申告書を作成する
  3. 税務署に提出して納付を行う

簡単な流れは以下のようになります。

必要な書類

準確定申告に必要な書類は以下の書類が必要になります。

  • 確定申告書
  • 確定申告書付表
  • 準確定申告の確認書
  • 収支内訳書または青色申告決算書
  • 委任状

上記の書類が必要になります。
確定申告書付表は、税務署の窓口で手続きを行う場合に必要になります。
準確定申告はオンラインでも行うことができますので、その場合には準確定申告の確認書を作成して合わせて提出をしましょう。
その他にも必要な書類がある可能性がありますので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参照:国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm)
(2024年6月20日 利用)

注意点

相続人・被相続人どちらとも要件を満たす場合には、確定申告が必要になります。
ここで、実際に手続きを行う際の注意点を2つご紹介します。

  1. 準確定申告の期限を過ぎるとペナルティがある
  2. 還付金は相続人で分配する

準確定申告の期限を過ぎるとペナルティがある

前述ご紹介しましたが、準確定申告は相続開始から4ヶ月以内に手続きを行う必要があります。
仮に、4ヶ月以内に手続きが行えなかった場合には、延滞税もしくは無申告加算税が課税されます。
無申告加算税は、期限内に申告納付を行わなかった場合に課され、延滞税は納期期限後に納付した際に課されます。
それぞれの税率は以下の通りです。

 無申告加算税延滞税
税率税額が50万円までは15%納付期限の翌日から2カ月までは2.4%
 50万円を超える部分については20%2カ月が経過した後は8.7%

知らなかったは通用しない点に注意

準確定申告の申告義務は、納付することを知っていたのか・知らなかったは影響しません。
そのため、手続きをすることを知らなかったなどの言い訳をすることはできませんので注意しましょう。
納付をするのは、相続人になるため余計な税金を納付しないように、税理士などの専門家に必ず相談しましょう。

過払いに対する還付およびその利息

準確定申告を行うことで、払いすぎた税金は還付金として返金されます。
また、還付するまでの利息として還付加算金という利息があります。
この2つのお金は、過払いによって発生しますが取り扱いが異なります。

還付金

還付金は、過払いによって返金されますがこのお金は元々納税者である、被相続人のお金のため、遺産として扱われるため相続税の課税対象財産になります。

還付加算金

還付加算金は、還付金が返金されるまでの利息になるため、相続人に帰属します。
この場合は、相続人の雑所得として扱われるため所得税の対象財産となります。

誰に相談するのがいい?

相続人・被相続人伴に、確定申告が必要なケースと手続き・注意点についてご紹介しました。
実際に手続きをする場合、複雑な手続きが必要になるため専門家への依頼を検討することをおすすめします。
そのような場合には、どこに相談したら良いのでしょうか。

相続ぽると

私たち相続ぽるとは、確定申告に関するお悩みから相続全般のお悩みまで幅広く展開しております。
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税理士

税理士は、相続税などの計算・節税から相続全般のお悩みを相談することができます。
しかし、不動産の登記手続きなどを行うことはできませんので、不動産が遺産の中にある場合には司法書士への相談をおすすめします。
また、税理士は税金などを専門的に扱うため、最新の情報を元に適切なアドバイスを求めることができます。

記事のまとめ

今回は、相続時に必要になる確定申告についてご紹介しました。
「毎年、所得税の確定申告は行われるため1人でも手続きすることができる。」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、所得税の扱いと相続税の扱いは異なります。
少しでも不安な方は、相続ぽるとまたは税理士などに相談をすることをおすすめします。
特に準確定申告には、期限がありますので相談の検討をすることをおすすめします。