令和9年まで延長!結婚・子育て資金一括贈与
子どもが結婚を控えている・孫の教育資金を支援したいと感じている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、生前贈与をすることで税金がかかることが不安になって一歩踏み出せないケースも少なくありません。
そのような場合には、「結婚・子育て資金の一括贈与に対する贈与税の非課税措置」を利用することで、最大1,000万円まで非課税で、生前贈与することが可能になります。
本記事では、結婚・子育て資金の一括贈与に関して基本的な情報から、手続き方法・利用する上での注意点をご紹介します。
子どもや孫を支援したいと考えている方は、ぜひ一度ご参照ください。
結婚・子育て資金の一括贈与措置の制度概要
そもそも、この制度はどんな制度なのでしょうか。
結婚・子育て資金の一括贈与は、暦年贈与や相続時精算課税制度のような生前贈与の非課税措置の1つです。
本制度は、2025年4月から開始された制度で、経済的不安が結婚・出産を躊躇させてしまうことを解決するため直系尊属(両親・祖父母)の資産を早期に移転することで直系卑属(子ども・孫)を支援するために創設されました。
本制度を利用することで、最大1,000万円までを非課税で贈与することができます。
この制度は、受贈者1人に対して1,000万円が非課税になります。
以下が簡単にまとめた、制度の概要です。
項目 | 要件 |
---|---|
対象者 | 18歳以上50歳未満の子ども・孫 |
非課税限度額 | 最大1,000万円(結婚資金は300万円まで) |
書類提出 | 税務署への書類提出あり |
利用可能期間 | 令和9年まで |
令和7年の税制改正大綱で2年間の延長が決定
本制度は令和7年度の税制改正大綱で2年間の延長が決定しました。
本来であれば令和7年3月31日をもって、終了する予定でしたが税制改正大綱に2年間の延長が決定しました。
本制度は、2027年(令和9年)まで利用することができます。
参照:令和7年度税制改正の大綱の概要
(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_gaiyou.pdf)
手続き方法と必要書類
実際に結婚・子育て資金の一括贈与の制度を利用する場合には一定の手続きが必要となります。
ここでは、結婚・子育て資金の一括贈与を利用するための手続き方法・税務署に提出する書類をご紹介します。
一般的な書類のご紹介になるため、不安な方は税理士や銀行などに相談することをおすすめします。
手続きの流れは、以下の通りです。
- 専用口座を開設する
- 結婚・子育て資金非課税申告書を作成する
- 作成した書類を税務署に提出する
- 開設した専用口座に贈与者が入金する
- 引き出しを行う
上記のような流れになります。
1.専用の口座を開設する
結婚・子育て資金の贈与の手続きの流れの1つ目は、制度を利用するための口座を開設します。
開設する際の口座名義は、贈与者(資産を渡す人)ではなく、受贈者(資産を受け取る人)名義で口座を作成します。
口座の種類には、特に種類はありませんが口座開設をする際には、注意点が必要です。
口座開設の注意点
結婚・子育て資金の贈与の制度を利用する際の口座は、普通預金の口座でも問題はありません。
しかし、非課税措置を利用する際には「結婚・子育て資金管理契約」を銀行や信託銀行などの金融機関で、契約を締結した上で口座を開設する必要があります。
2.結婚・子育て資金非課税申告書を作成する
結婚・子育て資金の贈与の口座の開設が完了した場合には、結婚・子育て資金非課税申告書を作成します。
他にも申告書などを作成する必要がありますが、制度を利用するために必要になります。
本書類は、最寄りの税務署の窓口で取得。または国税庁のHPからもダウンロードすることができます。
その他、本制度に必要な書類については、こちらをご覧ください。
3.作成した書類を金融機関に提出する
結婚・子育て資金非課税申告書をはじめとした書類を作成した後は書類を金融機関に提出します。
提出された書類は、金融機関を仲介して税務署に提出されます。
手続きが完了した場合には、受贈者(受け取る人)へ通知が行われます。
4.専用口座に入金する
受贈者が、手続完了の通知を受け取った後に贈与者が専用口座に入金をします。
一般的な方法は専用口座への振込ですが、金融機関によっては振込以外の対応になる可能性があります。
その他の方法は以下のとおりです。
- 現金を直接金融機関に持参する
- 同一口座間振替
- 小切手または振替
現金を直接金融機関に持参する
1つ目は、贈与者が直接金融機関に現金を持参する方法です。
入金依頼書や身分証明書などで入金をすることができます。
同一口座での贈与
2つ目は同一口座での贈与です。
同一口座での贈与とは、同じ金融機関内の口座を贈与者が開設しているのであれば、専用口座に資金が移動できます。
同一金融機関であれば、振込手数料がかからない場合がありスムーズに贈与の手続きを行う事が可能です。
小切手または振替
3つ目は、小切手または振替です。
あまり利用されることはありませんが、小切手や振替での贈与も可能です。
ただし小切手の場合、小切手の手数料や手続きに時間がかかるため、早めに結婚・子育ての資金を支援したい場合には振込をすることをおすすめします。
5.引き出しを行う
贈与者から、結婚・子育て資金専用口座に入金がされたら、資金を利用することができます。
ただし、この資金はあくまで「結婚・子育て資金」としての利用が目的となるため、結婚・子育て資金として利用したことを証明する必要があります。
その証明には、立替による領収書の提出。または直接金融機関に支払いをさせる請求書の提出。どちらかが必要になります。
どちらを利用する際も注意点がありますので、先に注意点を把握したい場合は、こちらをご確認ください。
必要書類一覧
結婚・子育て資金の贈与の制度措置を利用するための手続きをご紹介しました。
手続きの流れだけを見ると、そこまで大変ではありませんが様々な注意点が必要になります。
ここでは、実際に結婚・子育て資金の贈与を利用する場合に必要になる書類をご紹介します。
大きく3つの枠に分けてご紹介します。
- 専用口座開設
- 手続き
- 資金利用の証明
上記3つに分けてそれぞれ必要な書類をご紹介します。
専用口座開設
まずは、結婚・子育て資金の贈与専用に利用する口座を開設する際に必要になる書類は以下のとおりです。
必要書類 | 用途 |
---|---|
身分証明書 | 口座開設者が本人であることを証明するため |
マイナンバー関連書類 | 税務手続きを行うため |
印鑑 | 契約を締結するため |
贈与契約書 | 贈与の条件や金額、用途などが記載された契約書 |
戸籍謄本または抄本(受贈者) | 贈与者との関係を示すため |
源泉徴収や確定申告書 | 前年の所得証明を行うため |
結婚・子育て資金管理契約書 | 金融機関と受贈者の間で結ぶ契約書 |
金融機関指定の申請書類 | 口座開設のための書類 |
贈与者の身分証明書 | 金融機関によっては贈与者の身分証明が必要 |
上記の書類が必要になります。
ただし、今回ご紹介している書類はあくまで一般的な書類になります。
口座を解説する金融機関によっては、不要な書類や追加書類などがありますので、必ず結婚・子育て資金の一括贈与を行う際には、金融機関に確認を取ることをおすすめします。
手続き
手続き時に必要な書類とは、口座開設後の金融機関に提出する書類です。
必要書類 | 用途 |
---|---|
贈与契約書 | 結婚・子育て資金の一括贈与を利用するための書類 |
結婚子育て資金非課税申告書 | 贈与者との関係を示すため |
身分証明書 | 口座開設者が本人であることを証明するため |
資金利用の証明
結婚・子育て資金の一括贈与の入金手続きが完了した後は、「結婚・子育て資金」として贈与された資金を利用したということを証明する必要があります。
前述でもご紹介しましたが、基本的には2種類の方法がありそれぞれ金融機関に提出します。
- 領収書
- 請求書
領収書は、一旦受贈者が費用を立て替えて受け取った領収書を金融機関に提出することで、資金を受け取ることができます。
請求書は、立替をせずに請求書を金融機関に提出し、金融機関が口座から支払いをしてもらう方法です。
どちらも期限があり、領収書は記載日から1年。請求書は記載日の翌年3月15日までにそれぞれ金融機関に提出する必要があります。
結婚・子育て資金以外への活用も対象に!
結婚・子育て資金資金の贈与は、結婚・子育て以外にも対象になることはご存知でしょうか。
ここでは、制度の一般的な非課税範囲とそれ以外への活用方法も合わせてご紹介します。
一般的な非課税範囲
まずは、一般的な非課税範囲をご紹介します。
結婚・子育てと言われても具体的な非課税範囲が決まっております。
非課税の対象になる結婚に関わる資金
まずは、非課税の対象になる結婚に関わる資金です。
- 結婚式の衣装代
- 結婚式の挙式代
- 新居への引っ越し費用・家賃・敷金
こちらの費用は、非課税対象となります。
ただし、婚姻日の1年前以降に支払う予定など期間内に支払うことが決まっているものに対してが非課税の対象になります。
非課税の対象にならない結婚に関わる資金
結婚にかかる費用でも、非課税対象にならない資金も存在しています。
- 結婚指輪の購入費用
- 新婚旅行の費用
- エステ代・結婚式の駐車場代
- 婚活サービスの費用
上記の費用は非課税対象から外れてしまいますので注意しましょう。
非課税の対象になる子育てに関わる資金
ここからは、子育てにかかる費用で非課税対象になる費用をご紹介します。
- 不妊治療・妊娠時の定期検診費用
- 分娩する際にかかる費用
- 産後ケア(骨盤矯正・育児指導・ケア施設)にかかる費用
- 子ども医療費
- 幼稚園・保育園などの教育ではなく保育にかかる費用
子育て費用以外にも、不妊治療・分娩・産後ケアなどの子育てが始まる前にかかる費用も非課税の対象になります。
非課税の対象にならない子育てに関わる資金
反対に子育て費用として非課税にならない費用には以下の費用になります。
- 処方箋ではない医薬品代
- 妊婦健診以外の医療費
- 小学校や中学校・高校・大学などの費用
上記のような費用は一括贈与の非課税対象にはなりませんので注意してください。
子育てと聞くと小学校や中学校・高校・大学などの費用も、子育てに入る。と考えてしまうかもしれませんが、今回の結婚・子育て資金の贈与での子育てとは、妊娠から出産・保育園や幼稚園にかかる費用になります。
小学校から大学は、保育ではなく教育になるため、非課税対象からは外れてしまう点に注意しましょう。
結婚・子育て資金の一括贈与の注意点
結婚・子育て資金の一括贈与に関する基本的な情報から手続きの書類をご紹介しました。
最大1,000万円の贈与が非課税で贈与することができます。
しかし、本制度を利用する場合には、いくつか注意点があります。
ここでは、結婚・子育て資金の一括贈与を利用する際の注意点を5つご紹介します。
①受贈者の所得・年齢要件がある
結婚・子育ての一括贈与を利用する場合には、受贈者に所得要件があります。
子ども・孫の前年所得金額が1,000万円以上の場合には活用することができません。
さらに、受贈者の年齢によって強制的に契約が終了します。
年齢は、子ども・孫が50歳になった場合には強制的に、制度の契約が終了されます。
②使い残しの金額には贈与税・相続税が課税される
前述でご紹介しましたが、結婚・子育て資金の一括贈与を利用すると50歳以下になった場合には契約が終了します。
契約終了時に、専用口座に残高が残っている場合には、残額には贈与税が課税されます。
一括贈与といっても、生前贈与の1つです。
そのため、贈与税が課税されます。
少し異なる点は、通常の直系尊属(両親・祖父母)からの生前贈与があった場合には、「特例税率」という税率がかけられます。
しかし、結婚・子育て資金の贈与を適用し、残高が残った場合には「一般税率」がかけられます。
契約中に贈与者が死亡した場合には相続税が課税される
結婚・子育て資金の一括贈与を利用している際に、贈与者が亡くなった場合は贈与税ではなく相続税が課税されます。
こちらは、未使用の資金に関しては、相続税法上「贈与者の相続財産」としてカウントされるためです。
本制度は、「贈与した全額を使い切った場合に成立する贈与」として認められます。
そのため未使用分の資金がある場合には、贈与者の財産に戻ったとされ相続税の課税対象財産となります。
贈与されたが、税務上・税法上は贈与者の財産になるため、相続人全員で話し合う遺産分割協議の対象となります。
贈与者の相続発生時に、口座に残高が残っている場合には税法上・税務上は相続税の対象となることは避けられません。
しかし、贈与契約書などに「未使用分を受贈者の固有財産とする」などの文言を掲載している場合には、受贈者である相続人が意見を主張しやすくなりますが、相続税の対象から外すことはできませんので注意してください。
③取り消しはできない
結婚・子育て資金の一括贈与の制度を利用し、口座に最大1,000万円を贈与した後、贈与者の経済状況が変わり生活費などの資金が必要になった場合でも、契約の取り消しを行うことはできません。
また、結婚・子育て資金の一括贈与の制度はその都度口座に入金するのではなく、一括で入金する仕組みです。
そのため贈与者が贈与をしても問題なく生活が可能であるように、余裕を持たせる必要があります。
通常の暦年贈与を利用すれば、年間110万円まで非課税で渡すことができます。
相続時には7年前までの贈与が相続税の課税対象になりますが、一括贈与に不安がある方は、暦年贈与なども検討してみると良いでしょう。
④独身の家系とのトラブルになる可能性がある
子どもや孫が複数人いる場合には、注意が必要です。
昨今の状況から結婚・子育てが経済的に難しいと考え、婚姻しない家系も増えてきています。
この制度は、結婚しており子育ての費用の支援を目的としている制度のため、独身の家系は、非課税措置を受けることはできません。
そのため、結婚や子育てをしていない家系には、別の方法で贈与または相続時に他の相続人よりも多く財産を渡すなどの対策をしておく必要があります。
相続時に、この制度が問題でトラブルになる可能性も否定できませんので、必ず相続の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
⑤廃止も議論されている
実は、結婚・子育て資金の一括贈与が廃止の議論がされています。
一見、非課税枠が1,000万円とメリットが多く見られますが、専用口座の開設・受贈者の年齢・所得制限、認知の低さ、贈与者が亡くなったら相続税が課税されるなどが原因とされています。
さらに、結婚・子育てと限定的に利用できる資金であり、その中でも非課税範囲内と範囲外が別れているなども、使いにくさの原因と考えられています。
子育て世代にとっては、近年の物価情報や社会問題なども合わさり、必要だが手続きや制限などから、結婚・子育て資金の贈与ではなく通常の暦年贈与が利用されてしまいます。
結婚・子育て資金の一括贈与は、国が子育て支援のためにしているが、他にも自治体が用意している子育て支援もあります。
本制度が廃止されても結婚や子育て支援は、本制度以外にもたくさんありますので、支援策を漏らさず確認することをおすすめします。
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結婚・子育て資金の一括贈与をご紹介しました。
しかし、利用する際の手続きや他の方法なども検討されている方も多いのではないでしょうか。
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贈与はその時だけではなく、相続にも大きな影響を与えます。
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記事のまとめ
「結婚するか迷う」・「子育てができるほどお金に余裕がない」・「子どもはほしいが不妊治療のお金が支出できない」などのお悩みや不安があるかと思います。
結婚・子育て資金の一括贈与は、このような悩みに対する対策制度として創設されました。
しかし、手続きの複雑さや税法上の取り扱い・所得制限や年齢によって贈与税がかかるなどの多くの問題もあります。
相続時の節税対策としても効果的ですが、贈与者が亡くなってしまうと、相続税の課税対象になってしまいます。
制度を利用する前に、少しでも不安がある場合には弁護士・税理士などへの相談をすることをおすすめします。
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