【事例から学ぶ】認知症になると困ること|対策方法もご紹介

認知症になると契約が無効になり相続トラブルに繋がります!

相続対策として近年は認知症対策も必要になるほど、認知症で困ることが増えています。
まだまだ大丈夫。と思っていても認知症への対策をしていなければ困ることがあります。
本記事では、認知症の基本知識から困ることを、実際に起きてしまった困る事例を元にご紹介し対応策などの他に認知症による相続で困ることもご紹介します。
親の認知症が心配。困ることってどんなことか知りたい。という方はぜひ一度ご一読ください。

認知症とは?|基本を紹介

認知症とは、様々な原因により認知能力や記憶力などが低下して生活に支障をきたしてしまう状態のことをいいます。

  • よく痴呆症という方もいらっしゃいますが、認知症と痴呆の違いは名称の違いです。
    厚生労働省が平成16年に痴呆症から認知症へと呼称変更をしました。

日本では認知症の方が増加しています

高齢化社会・超高齢社会など聞いたことがあるかたも多いと思います。
実際に「65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約5人に1人になるとの推計もある(図1-2-11)。」

出典 「平成29年度版高齢社会白書 概要版」(内閣府)より(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html)(2023年8月1日に利用)

認知症になるとどんな困ることがある?

認知症になってしまうと以下のようなことが起こります。

困りごと①もの忘れ

認知症と聞くとまず思い浮かぶのが忘れ物が多いなどではないでしょうか。
一般的なものわすれと異なり、「朝食を食べた事自体を忘れてしまう。」などの事が思い浮かぶのではないでしょうか。

困りごと②妄想にとらわれる

経済的に困難な状態を経験した方はものとられ、「お金を盗まれた」などという妄想にとらわれてしまい激しく怒る方もいらっしゃいます。

困りごと③大声を出す

場所や時間がわからなくなる(見当識障害)ことがあり、大声を出したり、夜になると落ち着かない。それにより言う聞かないなどの事が起きます。

困りごと④徘徊

もの忘れと同様に思い浮かぶ方も多いのでないでしょうか。
実際に知らないところに移動していたり、先程ご紹介した見当識障害により自分の場所がわからなくなり知らない間にどっかへ移動していたりなどの事が起きます。

ご紹介した困ること以外にも様々な要求が増えることや空腹のうったえ、夕暮れになると移動を始めるなどの状況にもなります。

認知症の方はもちろんですが、それを支える家族にも大きな負担がかかってしまします。

相続において認知症で困ることは?

認知症になってしまうと日常生活だけではなく、相続でも困ることが起きます。

困ること①契約行為ができなくなる

認知症になってしまうと、法律行為(売買など)をすることができなくなります。
法律行為とは日常生活だけではなく、遺産を分割する際に認知症の方がいなければ遺産分割協議を始めることもできません。

困ること②口座凍結などの資産凍結が起こる

金融機関は認知症を始めとした方の財産を保護するために、口座の取引を一時的に凍結、封鎖します。
生活費などをその方の口座から捻出している場合口座凍結が起きると引き出しができなくなります。
症状が軽ければ大丈夫と思っていても、金融機関の人間が「疑いがある」と判断すれば凍結される可能性もあります。
資産凍結は自動的に解除されるわけではなく手続きが必要になります。
口座凍結などの資産凍結について知りたい方はこちらをご参考ください!

③困ること介護費などの捻出ができない

先程もご紹介しましたが、認知症になり資産凍結が起こるとその人の口座で賄っていたものが賄えなくなります。
介護費だけではなく介護施設の費用や入居費用などの捻出ができません。
介護をしているのにもかかわらず、その人の預金からは引き出しができなくなります。

相続は困る前に対策しなければ遅いです!

認知症の方がいる場合の相続は様々な事が制限され困ることが多いです。
認知症対策に早くて困ることはありません。
実際に困る前から家族と話し合い対応策をしている場合と困る直前にする場合では、対応できる策の数に大きく差が出ます。

実際に起きた事例をご紹介

認知症になると困ること・制限される事が多いとご紹介しましたが、困ることは裁判に発展する可能性もあります。

事例[仙台高等裁判所令和3年1月27日判決]

被相続人Aは、平成22年9月4日に亡くなり、相続が発生した。
妻であるB(大正2年生まれ)の他に、AとBの子であるX1、X2、Y1、Y2、そして既に他界しているC。そしてCの子であるZ1、Z2。この7名が相続人。
Y1により、家庭裁判所にて遺産分割調停が申し立てられ、同月にY1の代理弁護士である2名が相続人BとY1の自宅に来訪し、被相続人Aから受け取る相続財産をY1に無償で譲渡する旨の譲渡証明書を作成した。譲渡証明書を作成した時点で相続人Bは97歳であり、アルツハイマー型認知症を患っていた。
その後、相続人Bも亡くなり遺産分割の際に、 Bの相続に係るAの相続分を受け取る譲渡契約を、Aとの間で締結したY1に対し、A死亡後、同契約はAがアルツハイマー型認知症による意思能力を欠いていた状態での契約のため、契約は無効であると主張しました。

判決

この判例では2つのポイントがあります。

  1. 相続人Bが被相続人Aの葬儀など強い精神的衝撃を受けるはずの出来事に立ち会っている際にすら、Bの死に対する理解がすっかり失われていると医師から指摘されるような態度を示していた。
  2. 本件契約はAの有する高額の相続分をY1が無償で譲り受けるという一方的なBの損失とY1への利益が生ずるもので、その締結はY1の強い働き掛けがあった等を理由として、譲渡契約当時のAにBの相続に係る自己の相続分をY1に無償譲渡するという意思表示のために必要とされる意思能力がなかったことは明らか。

解説

今回のような「認知症患者に対し、Y1の強い働き掛けによって成立した契約」は、民法上は無効となります。
認知症では、意思能力の低下が起こり、ご紹介した事例のように一方的な損失を理解することが難しいケースもあります。
認知症の度合いにより、本人が取り消し手続きを行わなければならない場合など様々な場合がありますので注意しましょう

困る前に対応でできること・ヒント

困ることが多くなる認知症にはどのような対応ができるのでしょうか。

任意後見制度

任意後見制度とは、認知症による口座凍結のための対応策の一つです。 任意後見制度とは認知症対策の成年後見制度の中の一つです。 信頼できる家族や第三者などから誰が任意後見人になるのかを決めておくことができます。 認知症になる前の元気な間から、判断能力が低下した際に備えて自分の生活や財産管理などにかかる行為の代理権を締結しておく制度です。

任意後見制度のメリット・デメリット

任意後見制度のメリットは比較的に財産設計が自由であることです。
認知症により判断能力が低下した時の行ってほしい事を自身で決めることができます。 口座凍結の対策をする場合、行ってほしい財産管理の中に預金を入れておくことで判断能力が低下した場合でも口座凍結を防ぐ事が可能です。
一方で、実際に任意後見人として動くことができるのは認知症や脳血管障害等で判断能力が低下したときからのため、すぐに後見人としての効力を得られるわけではありません。
また、任意後見制度は判断能力が低下してから死亡するまでの期間のため死亡後の財産管理などの機能はありません。

家族信託

対応策の2つ目は、家族信託です。
家族信託とは、信託契約に基づき、家族(配偶者などの信頼できる第三者でも可能)が財産を管理・運用・処分できる制度の事を家族信託といいます。
財産の管理をお願いしたい委託者と、管理する受託者に分かれます。

家族信託のメリット・デメリット

家族信託の最大のメリットは、財産管理の自由度が高い点です。
どの財産を管理してもらうかは、委託者と受託者で決めることが可能なため柔軟な財産管理設計が可能です。
信託財産の中に預金を入れて信託契約を結ぶことで、 認知症になったとしても財産管理をするのは受託者のため銀行に口座凍結されずに介護費や介護施設の費用を捻出することが可能です。

一方で家族信託は信託契約といい法律的な契約行為になるため認知症になってしまうと契約を結ぶことができません。
また専門家の知見が不可欠になりますが専門家に依頼をする場合、家族信託を行うための費用が必要になり高額になる可能性もあります。
家族信託の組成費用は専門家ごとに異なるため相談してみると良いでしょう。

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知識をつけて予防することが大切です!

残念ながら認知症に対して治った例はあまり多くありません。認知症は緩やかに進行していくため完治を目指すのは難しいです。
しかし、予防療法や早い段階で治療をすれば治った例もあります。
認知症で困る前にできる事をご紹介します。

困る前にできる対応①日常生活編

日常生活でできることは、同時に2つのことをするデュアルタスクです。
脳トレや囲碁将棋などは、頭と手先を使用するので良いとされています。

困る前にできる対応②食べ物

困る前にできる2つ目のことは、食べ物です。
バランスの良い食生活はもちろんですが、よく噛むことが大事です。
噛むことで記憶力や判断力が高くなると言われています。

困る前にできる対応③40代~50代

この年代は運動を取り入れる生活が求められます。
日頃から階段を使ったり一駅分歩くなどをしてみましょう。

家族信託や任意後見制度は早い段階から行うことで効果を期待できます。
認知症の対応や介護などのケアで困ったら悩まずに専門家に相談する事をおすすめします。

相続の相談は相続ぽるとへ!

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まとめ

認知症は、高齢者のみではなく若年層でもかかる病気であり、いつ起きるか明確ではありません。
そのためご家族や周囲の人たちみんなが認知症へのヒントを見逃すことなく対応することが必要になります。
任意後見制度や家族信託などは相続だけではなく認知症への対策となりますが、必要なのかどうかは、ご家庭の状況を把握しないと中々手が出せません。
家族が認知症や相続で困る前にできることは、家族信託や任意後見だけではありません。
一見認知症と相続は関係ないように思えますが、些細なボタンの掛け違いでご紹介したようなトラブルになる可能性があります。
不安な方は、困る前に専門家に相談してみると良いでしょう。