贈与契約書がないとトラブルに!作成の流れ・注意点も解説

生前贈与するなら贈与契約書を作成しましょう

「生前贈与するなら贈与契約書を作成しましょう」という話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、そもそも贈与契約書とは何なのかご存知ない方も多いのではないでしょうか。

本記事では贈与契約書とはどういう書類か、贈与契約書を作成しないとどんなトラブルが起こるのかご紹介します。
贈与契約書作成までの流れ・注意点についてもあわせてご紹介していますので、詳しく知りたい方はぜひご一読ください。

生前贈与についておさらい

贈与契約書についてご紹介する前に、生前贈与についておさらいしましょう。

元気なうちに家族へ財産を渡すことを生前贈与といいます。
課税方法に暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類がありますが、どちらも年110万円の基礎控除があるため、年110万円以内の生前贈与に贈与税が課税されません。
そのため早いうちから継続して生前贈与を行えば多くの財産を非課税で渡すことができ、将来相続税がかかる財産を減らすことができるので相続税対策につながります。

生前贈与の仕組みや種類について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。

贈与契約書とは?

贈与契約書は、生前贈与をする際に作成する書類です。
契約日・受け取る財産の内容・贈与の方法を記載し、贈与者(財産を渡す人)・受贈者(もらう人)の署名捺印を行うことで作成します。
贈与契約書は形式が定められておらず、個人で作成が可能です。
手書きでも作成できますが、署名捺印以外はパソコンで入力し作成してもかまいません。

贈与契約は口約束でも成立するため、生前贈与するだけなら贈与契約書の作成は必須ではありません。
しかし将来のトラブル防止のために作成する場合が多いです。

参照 e-Gov法令検索 民法第五百四十九条(贈与)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/1/19 利用)

贈与契約書を作成しないとこんなトラブルに‼

贈与契約書が本当に必要かどうか気になるかもしれませんが、ほとんどのケースで贈与契約書を作成しておくほうが良いといえます。
ここからは、贈与契約書を作成しないことで起こる可能性のあるトラブルを3つご紹介します。

  • 贈与者・受贈者間で揉めてしまう
  • まとめて贈与税がかかる定期贈与
  • 相続税が課税される名義預金

トラブル①贈与者・受贈者間で揉めてしまう

口約束で贈与契約してしまうと、契約内容が形として残らないので当事者間でどんな約束をしたのか忘れてしまうことがあります。
その結果「言った・言わない」で揉めたり、いつまでも贈与が始まらないといったトラブルが起こるおそれがあります。
このような事態を防ぐためには、贈与契約書の作成が有効です。
贈与契約書を作成すればいつでも正しい契約内容を確認できるので、贈与者・受贈者間のトラブルを防ぐことができます。

トラブル②まとめて贈与税がかかる定期贈与

数年間に渡って行われた生前贈与に対しまとめて課税される場合があります。これを定期贈与といいます。
例えば毎年100万円ずつ10年間生前贈与するとあらかじめ決めていた場合、最初から1,000万円の贈与をするつもりだったとみなされまとめて贈与税が課税される可能性が高いです。
定期贈与とみなされるのを防ぐために、生前贈与のたびに贈与契約書を作成しましょう。
毎回贈与契約書を作成することで、あらかじめ決められた贈与ではないという証拠になります。

さらに毎年金額を変える・贈与する日をずらすことも定期贈与とされないためには重要です。

トラブル③相続税が課税される名義預金

名義預金は口座の名義人と実際にお金を出した人が違う預金です。
親が贈与のつもりで子の名義人の口座にお金を振込んでいても、子が口座のことを知らなかったり親が通帳やカードを管理している場合、子名義の預金でも名義預金とされる可能性が高いです。

名義預金とみなされた財産は親の相続財産の対象になってしまいます。
さらに相続税の納税後に名義預金が発覚した場合、追徴課税の対象になる可能性が高いです。
追徴課税されると最大40%追加で課税される場合もあるので注意が必要です。
贈与契約書を作成すれば親から子に財産が移動したことを示す証拠になるので、名義預金とみなされない可能性が高くなります。
加えて子に入出金させる・通帳やカードを渡すといったことも、名義預金とみなされないためには重要です。

作成の流れ

ここまでで、贈与契約書を作成しないことで起こるさまざまなトラブルをご紹介しました。
トラブルを防ぐためにも、契約書の作成は重要です。
それでは贈与契約書はどのように作成すればいいのでしょうか。
前述でご紹介した通り、贈与契約書は個人で作成できます。
ここからは贈与契約書を作成する流れについて簡単にご紹介します。

  1. 契約内容を確認する
  2. 契約書作成の準備をする
  3. 贈与の内容を契約書に記載する
  4. 贈与契約書に署名捺印する
  5. 贈与者・受贈者それぞれで管理する

①契約内容を確認する

まずは贈与者と受贈者で話し合い、契約内容を確認します。

②契約書作成の準備をする

契約内容の確認ができたら、契約書作成の準備をします。
贈与する財産の種類に応じて、以下のものを準備しておきましょう。

贈与する財産の種類準備するべきもの
現金受贈者の銀行口座の情報(支店名・口座番号等)
株式贈与する株式の情報(会社名・所在地等)
不動産登記事項証明書

登記事項証明書は法務局に申請することで手に入れることができます。

ひな形を利用すると作成がスムーズになる

契約書を作成する際にひな形を利用することをおすすめします。
以下は贈与契約書のひな形です。
ひな形をサンプルとして作成すれば、必要な事項のみ記入すれば良いので贈与契約書の作成がスムーズになります。

③贈与の内容を契約書に記載する

贈与契約書に贈与の契約内容を記入します。
最低限書く必要のある事項は以下の4つです。

  • 贈与者・受贈者の住所・名前
  • いつ財産を渡すのか
  • 財産の内容(財産の種類・金額など)
  • 贈与の方法

④贈与契約書に署名捺印する

同じ契約内容の贈与契約書を2枚作成し、片方は贈与者、もう片方は受贈者が署名捺印します。
印鑑は実印・認印どちらでもかまいませんが、公的に認められている実印が望ましいです。

⑤贈与者・受贈者それぞれで管理する

作成した贈与契約書は、贈与者・受贈者それぞれで1枚ずつ管理します。

契約書作成時の注意点

ここでは贈与契約書を作成する際に気をつけたい注意点を4つご紹介します。

  • 双方が納得した状態で進める
  • 贈与の内容は詳細に書く
  • 署名は手書きで行う
  • 未成年が受け取る場合は親権者の署名捺印が必要

注意点①双方が納得した状態で進める

必ず贈与者・受贈者の双方が契約内容を理解した状態で契約書を作りましょう。
特に以下の項目はお互いの認識にズレがないか注意が必要です。

  • いつ財産を渡すのか
  • 財産の内容(財産の種類・金額など)
  • 贈与の方法

以上の契約内容の確認を怠ってしまうと、贈与者・受贈者間で[言った・言ってない]などのトラブルになるおそれがあるため双方が納得した状態で贈与契約書を作成しましょう。

注意点②贈与の内容は詳細に書く

贈与契約書を作成する際は、具体的な契約内容になっているかが重要になります。
財産の内容を記載する際は以下の点に注意しましょう。

財産の種類注意点
現金金額は一の位まで正確に記載しているか
株式銘柄名と数量に加え、会社の住所や株式の種類の記載があるか
不動産登記事項証明書の通りに記載しているか

贈与契約書はどんな贈与を行ったか証拠を残すための書類のため、財産の内容は詳細に記載しましょう。

注意点③署名は手書きで行う

前述でお伝えした通り贈与契約書はパソコンで作成できますが、署名は必ず手書きで行うようにしましょう。
手書きで署名することで、当事者本人が贈与契約書を作成したという証拠を残すことができます。

注意点④未成年が受け取る場合は親権者の署名捺印が必要

未成年も生前贈与で財産を受け取ることができます。
ただし未成年が財産を受け取る場合、親権者の同意が必要です。

参照 e-Gov法令検索 民法第五条(未成年者の法律行為)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(2024/1/19 利用)

親権者が贈与に同意したことを示すため、贈与契約書を作成する時は受贈者に加えその親権者も署名捺印します。

お困りの人は専門家に相談しましょう

個人で贈与契約書を作成しようとすると「本当にこの方法で大丈夫かな」と不安になるかもしれません。
相続ぽるとでは贈与契約書の作成に関する悩みだけでなく、そもそも生前贈与するべきなのか・どのように生前贈与を進めるといいのかについてもご相談いただけます。
生前贈与の相談窓口として相続ぽるとをお役立てください。

記事のまとめ

贈与契約書とは何か、贈与契約書が防げるトラブル、実際の作成の流れや注意点についてご紹介しました。
贈与するたびに贈与契約書を作成するとなると手間に感じるかもしれません。
しかし贈与契約書を事前に準備しておけば、想定外のトラブルが発生したとしても冷静に対処できます。
贈与契約書を作成した上で生前贈与を行うことで、贈与者・受贈者双方ともに安心を得ることができます。
もし契約書の作成方法がわからないときは専門家である私たち相続ぽるとにご相談ください。