生前贈与のルールと種類を確認!|課税制度や相続との違いを解説

生前贈与の種類を理解して活用することが重要です

生前贈与は早いうちから始めると相続対策になります!という言葉を聞いた事がある方も多いのではないでしょうか。
資産を少しずつ移転する生前贈与を行うと確かに将来的な相続財産の軽減をすることが可能ですが、生前贈与に種類があることをご存知でしょうか。
本記事は生前贈与についてのおさらい。種類や注意点をご紹介します。
生前贈与について知りたい。どんな種類があるのか把握したい。という方はぜひ一度ご参考にされてください。

生前贈与とルール

そもそも生前贈与と何か。しっかり抑えられているでしょうか。
早いうちから生前贈与しておくべき!などと聞いたことはある方も多いかもしれませんが、生前贈与とは何か。ルールをもう一度おさらいしましょう。

生前贈与とは?

生前贈与とは、「元気に生きている間に資産(後の相続財産)を他の人に渡す(贈与する)」ことをいいます。
生前贈与を活用することで、資産(相続財産)を減らすことができるなどの様々な種類の効果を期待することが可能です。
生前贈与をする場合には、贈与者と受贈者のすり合わせが重要になります。

相続との違いは?

相続は、被相続人が亡くなった場合に財産を引き継ぐ制度です。
元気な間に財産を引き渡すか亡くなってから財産を引き継ぐのかが相違点となります。

生前贈与5つの種類

生前贈与についておさらいをしましたが、続いては生前贈与の種類にはどんな種類があるんでしょうか。
大きく分けると5つの種類分けをすることができます。
5つの種類は次の通りです。

  • 暦年課税制度
  • 相続時精算課税制度
  • 住宅取得等資金の贈与
  • 教育資金の一括贈与
  • 結婚・子育て資金の一括贈与

種類①暦年課税制度(または暦年課税)

暦年課税制度とは、1月1日~12月31日までの1年間で110万円の控除枠はあり範囲内であれば贈与税が課税されずに贈与できる制度であり、一般的に生前贈与といわれるのはこの制度を思い浮かべる人が多いと思います。
暦年課税制度は、贈与の種類ではなく正しくは贈与を受けた際の課税制度の種類になります。
年間110万円を超えなければ課税されることがありません。

持ち戻し期間に注意

暦年課税を活用する場合には、税制改正大綱により死亡から最大で7年前までに受け取った財産は相続財産に持ち戻す事になっています。

種類②相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の贈与者から18歳以上の受贈者に向けて合計で2,500万円の控除枠があり範囲内まで非課税で渡す事ができる生前贈与の種類の1つです。
この制度も暦年課税制度と同じように、生前贈与の方法の種類ではなく、財産を贈与された際に選択する課税制度の一つです。
この制度は、相続が発生した場合に今まで受け取った財産を合計し2,500万円までは非課税。それを超える場合には一律20%の贈与税が課税される制度です。
またこの制度を活用すると、暦年課税制度に戻せないことや生前贈与があるたびに贈与税の申告をしなければなりません。

税制改正大綱で内容が変更されます。

この制度は利用実績も少ないことから、令和5年度の税制改正大綱では、特別控除枠として年間110万円までは非課税で渡せる。という控除枠が追加されました。
この特別控除である110万円は相続財産には含まれず、110万円内であれば贈与税の申告が不要になります。

種類③住宅取得等資金の贈与

生前贈与の3つ目の種類は、住宅取得資金贈与です。
新規住宅や増築などをする場合に資金を贈与する事が可能になります。
子どもや孫がマイホームを建てる場合に、一定の条件をクリアすれば親や祖父母からの1,000万円までの贈与が非課税となる制度です。
一定の条件は以下のようなポイントです。

  • 資金を贈与する人の直系卑属であること
  • 贈与を受けた年の1月1日に18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の所得が2,000万円以下であること
  • 贈与税の申告で住宅取得資金の非課税の適用を受けていないこと
  • 新築または増築する建物がの床面積が40㎡以上240㎡以下であること(家屋の2分の1以上が受贈者の居住に使用されること)

参照 国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 より参照(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
(2023年9月12日利用)

その他にも適用要件の種類がありますので気になる方は国税庁のHPをご参照ください。
国税庁HP(https://www.nta.go.jp/index.htm

種類④教育資金の一括贈与

4つ目の生前贈与の種類は、教育資金の一括贈与とは、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」という贈与の特例制度のことをいいます。
この制度は、子や孫1人に対して1,500万円まで非課税で生前贈与できる制度です。
高齢者が持つ財産を子や孫に移転することで、教育・人材育成のサポートをする目的で設立されました。

適用期限は令和5年税制改正大綱により、令和8年3月31日まで延長されました。
適用するためには以下の種類の申請書類を提出しなければなりませんにおで注意しましょう。

適用メリット

この制度には様々な種類のメリットがありますがこの特例は、暦年課税制度や相続時精算課税制度と併用することが可能です。
本制度を活用しても暦年課税制度や相続時精算課税制度の非課税枠に大きな影響が出ないため、制度を併用して活用することが可能です。

そもそも扶養義務者からの生活費や教育費には贈与税はかかりませんので、本制度を利用するのは祖父母からの贈与が多いようです。

種類⑤結婚・子育て資金の一括贈与

生前贈与の5つ目の種類は、結婚・子育て資金の一括贈与です。
この制度は、18歳以上50歳未満の直系尊属が結婚や子育てに必要な資金を親や祖父母が贈与する場合、1,000万円まで非課税となる制度です。
この制度は、結婚に関して支払われる費用と、妊娠・出産・育児に必要な費用で分けられます。

適用期限は令和7年3月31日までの時限措置がとられています。
この制度は、一括贈与した財産を子や孫が50歳になるまでに使い切らなければ贈与税が課税されてしまうことや使用用途が限られています。

詳しく知りたい方は国税庁のHPをご参照くだいさい。(https://www.nta.go.jp/index.htm

この他にも死因贈与などの種類もありますので、気になる方は専門家に相談することをおすすめします・

贈与が名義預金の種類になる可能性があります

生前贈与の落とし穴で、名義預金というのをご存じでしょうか?

通帳は親である私が管理してます。という方も多いのではないでしょうか。
このように形式的な贈与をして、実態は渡していない場合の預金を名義預金といいます。贈与とはあげる側が「あげました」という認識、もらう側が「もらいました」という認識がある場合のみ成立する契約です。したがって名義預金は贈与にはなりませんので注意しましょう

課税される税金の種類

生前贈与の種類についてご紹介してきましたが、制度の種類により贈与税ではなく相続税が課税される可能性があります。
贈与税や相続税の税率はどのくらいなのかをご紹介します。

種類①贈与税

贈与税とは、生前贈与により受け取った財産が年間で110万円を超える場合に課税される税金です。
主に暦年課税制度を活用した方が使用する機会が多いです。
年間で110万円を超えた場合には、超過した部分に贈与税が課税されます。
そのため、両親1人ひとりから100万円ずつ受け取った場合、1年間で200万円の贈与財産を受け取ったことになるため、超過している90万円に贈与税が課税されます。
贈与額は100万円ですが、暦年課税制度は合算して計算するため個別控除されるわけではありません。
贈与税の税率は以下の表を御覧ください。

種類②相続税

相続税とは、基礎控除である【3,000万円+(600万円×相続人の数)】を相続財産の合計額が超える場合に課税される制度です。

相続税の税率は以下の表を御覧ください。

生前贈与は相続税への節税になる?

ご紹介した生前贈与5種類を使い分けることで、財産を減らす事が可能です。
生前贈与が相続税への節税対策になるとなんとなく知っている方も多いのではないでしょうか。
その理由としては、様々な種類の贈与の方法で被相続人の資産を減らす事ができます。
資産を減らすことによりどんな影響があるのでしょうか。

非課税となる基礎控除

先程も少し触れましたが、相続税の基礎控除は【3,000万円+(600万円×相続人の数)】です。
相続財産の合計金額から相続税の非課税枠である基礎控除額を引いて出た金額がプラスの場合は相続税が課税される仕組みになっています。
元気な間から多くの種類の生前贈与を活用することで、持っている資産が受贈者に移転していきます。
少しずつ減らしていくと、相続が発生した際に財産の合計金額が減ります。
生前贈与による資産の移転をすることにより、相続時に資産が小さくなることから、生前贈与は相続税への節税対策になるといえます。

生前贈与の注意点

5つの種類の生前贈与を活用することで相続での節税効果が期待できます。
一方で生前贈与をするためには、気を付けなければならないポイントが4つあります。

贈与契約書を作成

贈与者、受贈者双方の認識合わせが取れている証として「贈与契約書」を作成しましょう。 贈与では「贈与があった」という事を証明する事が重要になります。 贈与契約書を作成するメリットは大きく2つあります。

  • 贈与したことの証明
  • トラブル防止

贈与したことの証明

暦年課税制度や相続時精算課税制度でも毎年110万円の非課税枠があります。※1
非課税枠に収まる範囲で生前贈与を行えば贈与税を申告は必要ありません。
しかし、税務署は資産の動きを把握する事ができるため生前贈与などの資産の移転があったかどうかなどの指摘がある場合があります。
そこで贈与契約書を作成しておくことで、実際に子や孫に贈与があったことを証明する事が可能です。
※1 相続時精算課税制度の場合は令和6年1月1日以降の贈与のみ。

トラブル防止

契約書を作成せずに贈与を行う場合、贈与する事を「言った・言ってない」や「贈与する内容に差がある」などの、贈与者と受贈者の間でのトラブルが起きる可能性があるため贈与契約書は作成しましょう。

定期贈与の危険性

毎年同じ日に同じ金額を贈与していると定期贈与とみなされてしまいます。
定期贈与とみなされた場合、贈与された金額を合算した金額に対して贈与税が課税されます。
贈与税は相続税の税率よりも高く設定されているので定期贈与とならないために以下の種類のポイントを抑えて贈与しましょう。

  • 毎年の贈与財産の金額を変える
  • 時期をずらす
  • あえて控除枠を超えた財産を贈与する

この3点が重要です。
あえて110万円の控除枠を超える金額を生前贈与することで、定期贈与とみなされなくなる可能性があります。

資金をたくさん持っている人だけではありません

相続の話となると「相続で揉めるなんて無い」「そんな資産はない」などの理由からお金持ちや資産家だけの問題という認識はないでしょうか。
仰る通り、資産を多く持つ方は相続財産の額が多くなるため生前贈与などの対策です。
相続税への対策は資産が多い人が積極的に行うものですが、相続で揉めてしまうことへの対策はどんな家族でも必要であり資産の大きさは関係ありません。
相続で争わないための対策は種類が多く複雑なものもありますが、早く始めることで活用できる種類が多くなる場合がありますので専門家に相談することをおすすめします。

相続の相談は相続ぽるとへ!

相続ぽるとでは、生前贈与の種類や方法だけではなく「適切な相続の入り口」として皆様にご利用頂いております。
生前贈与は確かに種類を使い分ければ大きな効果が期待できますが、やり方などは専門家に相談しながら進めなければ贈与者の生活が苦しくなる可能性もあります。
生前贈与についてもっと知りたい、他の相続対策の種類を知りたい方はお気軽にご相談ください。

記事のまとめ

生前贈与による資産の移転は大きな効果を持ちます。
しかし種類によっては適用書類や申請が必要になる可能性も捨ててはいません。
生前贈与以外でも早めに初めておけば大きな効果が期待できる相続対策の種類は多くあります。
生前贈与だけに関わらず様々な種類の相続対策は早く始めれば早く始めるほどできる対策の種類は多くなります。
種類によっては定期贈与とみなされてしまい高い贈与税は納付しなければならない可能性もあるため不安な方は専門家に相談しましょう。