年末年始は家族と相続会議しませんか?
2024年も残り数ヶ月となり、気がつけば2025年が近づいています。
お正月を前に、「お年玉をどのくらい上げるのが良いのかな?」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そのお年玉、贈与財産になり子どもや孫が贈与税を支払わなければならないかもしれません
本記事はお年玉は贈与税の課税対象となるのか。贈与税の基礎知識を振り返りながらご紹介します。
子どもあげたお年玉に贈与税がかかるって本当?
お正月の風物詩でもあるお年玉。
そのお年玉に対して「贈与税が課税されるなんて知らなかった。考えたこともなかった。」と思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、お年玉もお金を渡す行為になるため、贈与に該当します。
年に1回のことのため、あまり気にしていない方も多かったと思いますが、渡す金額によっては税金が課税される可能性もあります。
基本的には非課税で渡せます
初めに結論をお伝えしますが、お年玉の贈与は基本的には非課税で渡すことが出来ます。
実はお年玉などの財産の移転は、社会通念上認められる場合にのみ非課税で渡すことが出来ます。
社会通念上認められる場合とは?
この社会通念上認められる場合とは、一体どのような場合なのでしょうか。
社会通念上認められる場合とは、簡単に言えば「一般社会で通用している常識からみて妥当だと言われているもの」です。
また、相続税法基本通達によると以下のような場合は社会通念上認められる範囲といえます。
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。(昭50直資2-257改正、平15課資2-1改正) |
(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/10.htm#a-21_3_10)
お年玉は、年末年始の贈答に該当するため一般的に認められる範囲内であれば贈与税が課税されない。ということになります。
もう少し具体的にする場合、贈与税には基礎控除枠と呼ばれる1年間を通して非課税で受け取れる金額の上限があります。
贈与税は年間110万円までは、非課税で受け取ることができるため110万円を超える金額の贈与が合った場合には、社会通念上認められない範囲に該当するかもしれません。
お年玉以外のプレゼントも非課税
お年玉以外にも、子どものクリスマスプレゼントや入学・進学の祝い金なども受け取る機会や渡す機会があります。
こちらも社会通念上相当と認められる場合には、贈与税は課税されずにわたす事ができます。
ただし、後述でご紹介しますが学費や留学費などの一定の場合には贈与税が課税される可能性もありますので、注意してください。
お年玉が贈与税の課税対象になるラインは?
前述で少しご紹介しましたが、基本的にお年玉は一般的に渡されている範囲内であれば贈与税は課税されません。
社会通念上認められる範囲もご紹介しましたが、明確に常識はここです。と決められているわけでもありません。
ここでは、お年玉が贈与税の課税対象になるラインはどこなのかをご紹介します。
課税されるケース
贈与税が課税される可能性がある場合には、どのような場合があるのでしょうか。
ここでは3つのケースをご紹介します。
- お年玉を合わせて110万円を超える贈与がある場合
- お金ではなく時計や車などの現物財産を渡した場合
- 学費などの教育資金として渡した場合
1.お年玉を合わせて110万円を超える贈与がある場合
先ほど、お年玉は基本的には非課税とご紹介しました。
しかし贈与税は年間で受け取った贈与の金額に応じて税金が課税されます。
つまり、お年玉で受け取った金額=贈与税ではなく[年間110万円を超える贈与があった=贈与税が課税される]ということです。
例えば、父方の祖父母から60万円。母方の祖父母から60万円の贈与を受け取ったとします。
この場合、年間で120万円を受け取っていることになるため、贈与税の非課税枠110万円を超えてしまっているため、120万円から110万円を差し引いた10万円に対して贈与税が課税されます。
2.お金ではなく時計や車などの現物財産を渡した場合
お年玉=現金のイメージがどうしてもありますが、現金だけがお年玉になるわけではありません。
例えば、子どもが大きくなったので、車や時計などの現物財産をお年玉として渡した。
このような場合でも110万円を超える金額であった場合には、贈与税の課税対象となり税金が課税されます。
「子どもが購入したわけじゃないし、無償で上げれば税金はかからないのでは?」と思うかもしれませんが、関係ありません。
車の保有者が子どもに無償で贈与を行った場合には、購入したときの金額ではなく 「贈与をしたときの車や時計の評価額」に対して贈与税が課税されます。 例えば、車を無償で贈与をした際の評価額が250万円だった場合には、年間110万円を超過しているため110万円を差し引いた140万円に対して贈与税の税率がかけられます。 |
「バレないのでは?」と思うかもしれませんが、車の場合には所有者の移転登記を行う必要があり、役所や公共機関への書類提出などが必要になるためバレる可能性があります。
そのため、車や時計などをお年玉として受け取った場合には、評価額を確認することを忘れないようにしましょう。
3.学費などの教育資金として渡した場合
子どもが入学・進学・留学を行う際には費用が必要になります。
そこで「社会通念上、お年玉は非課税だと聞いた」ということで、お年玉として教育費を渡す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その場合、贈与税は課税されてしまうのでしょうか。
教育資金については相続税法基本通達には以下のように定められています。
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、その範囲が通常必要と認められるものについては、贈与税の課税対象としない。 |
(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/10.htm#a-21_3_10)
ここでいう扶養義務者の中には祖父母も含まれます。
つまり、教育資金についても社会通念上認められる金額である場合には贈与税は課税されません。
しかし、教育資金については教育資金として扱われていない場合や教育資金を生活費に当ててしまった場合などについては、贈与税が課税される可能性があります。
そのお年玉の貯金方法、名義預金かも…
子どもや孫が受け取ったお年玉、使い過ぎに気をつけたいと考える親御さんも多いのではないでしょうか。
その場合、子どもや孫の名義の口座を開設し、その口座にお年玉を貯金をし管理するかと思います。
しかしその貯金の方法は名義預金として贈与税または相続税が課税される可能性があります。
名義預金って?
名義預金とは、通帳などの管理を第三者が行い名義だけその人のものとする貯金の方法です。
今回の名義預金の場合、口座の管理は親御さん・通帳の名義は子ども(または孫)になります。
名義預金が贈与税または相続税のどちらかの対象になってしまうのは、以下のような理由です。
- ある程度まとまったお金として渡す場合には贈与税
- 口座の管理人が亡くなり遺産として名義の口座が発見された場合には相続税
順番にご紹介します。
1.ある程度まとまったお金として渡す場合には贈与税
ある程度まとまったお金として渡すとは、お年玉の使いすぎを見越して親が口座を開設したとします。
「20歳になったら通帳を渡す」このような場合に、20歳を超えて通帳を受け取った際には贈与税が課税されます。
ここで口座の金額が110万円を超過している場合には、贈与税が課税されます。
2.口座の管理人が亡くなり遺産として名義の口座が発見された場合には相続税
もう一つが相続財産として発見された場合です。
祖父母が子ども・孫のために、子供名義の口座・孫名義の口座を開設し毎年お年玉として入金をしていたとします。
そこで相続が発生してしまった場合には、孫名義の預金口座は孫の財産ではなく相続財産として扱われます。
例えば、孫がその預金の存在を知らず、通帳やキャッシュカードも持っていない場合、それは「形式的な名義」として扱われ、実質的には資金提供者である祖父母の財産と判断されるため相続税の課税対象財産となります。
お年玉を名義預金にしないためにできることは、管理方法が重要
子どもまたは孫が受け取ったお年玉が、名義預金として贈与税・相続税の対象にならないためには口座や預金の管理方法が重要になります。
もう少し簡単にご説明すると、「お年玉(財産)を受け取った人が、財産(お年玉)を受け取ったことを認識し、財産を自由に引き出して利用できる状態にしておく」ことです。
つまり、親や祖父母が管理をするのではなく、子どもまたは孫自らお年玉を自由に使える状態にしておく事が重要です。
ただし、どこから名義預金になるのかは専門家に相談をすることをおすすめします。
計算・申告方法
お年玉が贈与税の課税対象になってしまうかをご紹介してきましたが、実際に贈与税の課税対象になってしまった場合には、いくらかかるか、計算・申告はどのように行うのでしょうか。
ここでは簡単に贈与税の計算方法と申告方法をご紹介します。
また、今回は贈与税の計算方法ですが前述でご紹介しているようにお年玉が相続財産になる可能性もあります。
そのような場合には、相続税の計算をしなくてはなりません。
相続税の計算について知りたい方は、専門家に相談をすることをおすすめします。
税金の計算方法
冒頭でご紹介しておりますが、贈与税には基礎控除枠110万円が存在し年間で110万円を超過した場合には贈与税を納付する必要があります。
実際の計算方法は以下のような計算方法になります。
(贈与額 – 基礎控除額) × 税率 – 控除額 =贈与税額 |
上記のような計算方法で贈与税の税金を計算する事ができます。
ステップにすると以下のようになります。
今回はお年玉とお年玉以外の贈与として祖父母・両親から合わせて300万円を受け取った場合と仮定し計算をします。
計算方法 | 具体例 |
---|---|
①贈与額から基礎控除枠を差し引き課税価格を算出する | 300万円-110万円=190万円 |
②課税価格に贈与税の税率をかけて算出税額を算出する | 190万円×10%=19万円 |
③算出税額から控除額を差し引き贈与税額を算出する | 19万円ー0円=19万円 |
上記のような計算方法で贈与税額を計算します。
今回は、お年玉とそれ以外の財産も全て現金で受け取ったとして計算しました。
しかし前述でご紹介したように車や時計に関しては、評価額を算出するために別の計算をする必要があります。
現金以外の財産の評価方法を知りたい場合には、専門家に相談することをおすすめします。
申告方法
贈与税の計算をした後には、税金を納付しなければなりません。
税金の納付までの流れは以下のような流れになります。
- 税金の計算をする
- 贈与税の申告書を作成する
- 申告書を管轄の税務署に提出する
- 期限までに贈与税を納付する
上記のような流れになります。
今回は簡単に贈与税の申告方法をご紹介しましたがお年玉以外の財産も含める場合には、別途必要な書類がある可能性がありますので、必ず専門家に相談をしましょう。
お年玉以外で贈与税がかからない対策を解説‼
お年玉が贈与税または相続税の対象になってしまう可能性があることをご紹介しました。
基本的にお年玉は非課税ですが場合によっては税金を収める必要があるかもしれません。
特例①相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の贈与者から18歳以上の受贈者に向けて合計で2,500万円の控除枠があり範囲内まで非課税で渡すことができる制度です。
この制度は、相続が発生した際に贈与開始から相続発生までに受け取った財産を合計し2,500万円までは非課税。
それを超える場合には一律20%の贈与税がかかる制度です。
特例②住宅取得等資金の贈与
住宅取得資金の贈与とは、直径尊属から直系尊属に対して住宅の新築や増築などに必要になる費用を一定の要件を満たすことができれば非課税で渡すことができる制度です。
この制度を活用することで最大1,000万円まで非課税で財産を移転することが可能です。
特例③教育資金等の一括贈与
教育資金等の一括贈与とは、直系尊属から30歳未満の子ども・孫へ教育のための資金を1,500万円まで一括で贈与することができ、1,500万円までは非課税で渡すことが可能になる制度です。
特例④結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与とは、18歳以上50歳未満の直系尊属が結婚や子育てに必要な資金を親や祖父母が贈与する場合、1,000万円まで非課税で渡すことができる制度です。
この制度は、結婚に関して支払われる費用と、妊娠・出産・育児に必要な費用で分けられます。
お年玉以外にも財産を渡す方法はいくつも存在します。
ですがご紹介した制度は、いつ終了するかわかりません。
そのためお年玉がチャンス!と思わずに様々な方法を検討することをおすすめします。
贈与に関する相談はしあわせ相続診断へ
お年玉が贈与になるのかどうか、いくらまでならいいのかは明確な判断はありません。
そのため、いくらまでならお年玉として渡してもいいのかわからない可能性もあります。
大きい金額をお年玉として渡しても貯めるのではなく使われてしまうのではないか。
そのような不安をお持ちの方は、相続しあわせ支援協会が提供する「しあわせ相続診断」をご活用ください。
しあわせ相続診断では、みなさまに適した相続対策や税金対策などをご提案しております。
今回のようなお年玉の贈与の仕方や、子ども口座の管理方法など専門家がわかりやすくご案内します。
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記事のまとめ
今回は、年末年始が近づくにつれて気になるお年玉が贈与税の対象になるかどうかをケースを基にご紹介しました。
「お年玉はそこまで大きい金額は渡さないよ」と考えているかもしれませんが、お年玉を現金ではなく車や時計などとして渡すの場合には注意が必要です。
お年玉を渡す際には、今回ご紹介した注意点や課税対象となるケースに該当しないように気を付けましょう。
不安な方は、贈与・相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。