延長になった住宅取得資金の贈与の特例|申告方法や手続きを解説!

住宅取得資金贈与は2026年まで延長されます!

子がマイホームを建てるので資金を援助したいという親御様も多いのではないでしょうか。
そのような資金の援助のことを「贈与」といいますが贈与をした場合、非課税枠超える財産の場合は税金が課税されます。
マイホームの購入しようとしている場合には、特例で最大1,000万円まで非課税で贈与できる仕組みである住宅取得資金贈与の特例という制度をご存知でしょうか。
マイホームを検討している子の援助をしたいと考えている方、住宅取得資金の贈与はもともと2023年12月31日までの期間でしたが、令和6年の税制改正大綱にて2028年の12月31日まで取得資金の贈与が3年間延長されます!
本記事では、延長がされた住宅取得資金の贈与に関して仕組みや手続き・すぐに始める場合の注意事項を解説します。 マイホームの購入を検討している子がいらっしゃるご両親は制度が終了して後悔しないために是非一度ご参照下さい‼

住宅取得資金贈与の特例とはどんな制度?

前述で少しご紹介しましたが住宅取得資金の贈与とは、直径尊属から直系尊属に対して住宅の新築や増築などに必要になる費用を一定の要件を満たすことができれば非課税で渡すことができる贈与の制度のことをいいます。
本制度は新築以外に、中古住宅の購入でも非課税の対象になります。
この制度は令和5年度税制改正大綱にて2023年12月31日までの1年間延長されました。

住宅取得資金贈与の特例の非課税措置

通常の贈与(暦年贈与)の場合、年間110万円を超える場合には10%~最大55%の税金が課税されますが本特例を活用することによって最大1,000万円まで非課税で資金を渡す事が可能になります。 

物件によって非課税枠が異なります

しかしどのような場合でも住宅取得資金を1,000万円まで贈与できるという訳ではありません。
省エネ住宅の場合は1,000万円・それ以外の場合は500万円までが非課税限度額とされています。
省エネ住宅とは、以下の要件に該当する住宅を指します。

  1. 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること。
  2. 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。
  3. 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。

非課税措置は相続税の対象外となります

生前贈与をした場合、相続発生から3年以内の贈与と相続時精算課税制度を活用して受け取った財産に関しては相続税が課税されます。
ですが、住宅取得資金の贈与によって取得した最大1,000万円に関しては非課税となるため相続税の対象とはなりません。

特例は3年間延長されます!

住宅取得資金贈与の特例は、もともと2023年12月31日までの期間でしたが、令和6年の税制改正大綱にて2028年の12月31日まで3年間。期間が延長されることが決定しました。
一方で住宅取得資金の贈与の要件にある省エネ住宅の要件が見直しがされました。
見直しされた要件は以下の通りです。

 令和5年12月31日まで(改正前)令和6年1月1日以降(改正後)
省エネ住宅の要件断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上

上記の要件が見直され以前よりも厳しくなりましたが、非課税枠は変更されるわけではありませんので注意しましょう。

必要な条件や手続き

住宅取得資金の贈与の特例を活用する場合には細かな要件があり、一定の要件をクリアしたことを申告しなければ制度の適用を受ける事ができません。
申告の手続きや必要書類などの準備は一人で行うことも可能ですが、要件をクリアできない場合は贈与税が課税されてしまうため、税理士や贈与に詳しい専門家と連携を取りながら進める事をおすすめします。 今回は住宅・対象者の要件と一般的な手続きの方法をご紹介します。

住宅の条件

住宅取得資金の贈与の特例の対象となる住宅には新築の場合と増築の場合で異なります。
またそれぞれに細かな要件があります。

新築・取得の場合

新築の場合の要件は以下の通りです。

  1. 登記簿上の床面積が40㎡240㎡以下であることかつ、床面積の2分の1以上に相当する部分が居住用であること (マンションの場合は専有面積が適用されます。)
  2. 次のいずれかに該当する事 ①建築後一度も使用されていない家屋であること ②昭和57年1月1日以後に建築された建物であること ③地震に対する安全性にかかる基準に適合するものである場合、一定の書類によって「証明」されたもの

増築・改築の場合

増築・改築の場合には以下の要件を満たす必要があります。

  1. 増築後の登記簿上の床面積が40㎡240㎡以下であることかつ、床面積の2分の1以上に相当する部分が居住用であること (マンションの場合は専有面積が適用されます。)
  2. 増築にかかる工事が、自分で所有しかつ住居用に対して行われたもので一定の工事に関して「確認済証・検査済証の写し」または「増築工事証明書」などによって証明されていること
  3. 自己の居住用であり増築に係る工事の費用が100万円以上であること

新築・増築の場合で適用できる要件が異なりますので注意しましょう。
適用要件を満たすことができなければ住宅取得資金の特例を活用することができません。
本制度を活用したい場合は、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

対象者

住宅取得資金の贈与の特例を活用する場合には、資金を取得する者と資金を渡す者にそれぞれ細かい条件があります。

取得する者(贈与者)

資金を取得する者は、以下の4点を満たす必要があります。

  1. 贈与を取得する年の1月1日時点で18歳以上
  2. 取得する者の合計所得が2,000万円以下 (床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
  3. 取得する時点で日本国内に住所があること
  4. 特別に関係がある配偶者や親族から取得した家屋ではないこと (中古住宅の場合)

渡す者(受贈者)

住宅取得資金の贈与を活用して財産を受け取る受贈者にも要件があります。
受贈者の住宅取得資金を適用する要件は以下の通りです。

  • 贈与者の直系卑属であること
  • 取得資金を受けとる年の1月1日に18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下。または新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下であること。
  • 今までに住宅取得資金の贈与の特例を受けたことがないこと
  • 配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、またはこれらの方との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
  • 日本国内に住所を有していること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することまたは同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること

住宅取得資金を渡す者は、直系尊属のみであり義父母なども含まれますが伯父・伯母・叔父・叔母は対象外となりますので注意しましょう。
その他にも様々な要件がありますが住宅取得資金の特例を活用する場合には、全てクリアしなければ制度を活用することができませんので注意しましょう。

参照:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.html
(2023年12月21日 利用)

手続き方法

住宅取得資金の贈与は、あくまで贈与の方法の1つのため、特別な書類を用意しなければならないわけではありません。 住宅取得資金の贈与を受けるためには、贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日までの間に非課税枠を活用し適用を受ける旨を記載した書類を所轄税務署に申請しなければなりません

参照:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.html
(2023年12月21日 利用)

住宅取得資金贈与の特例を活用する場合に必要な書類

住宅取得資金の贈与を活用するための手続きは普段の贈与と同じですが、住宅取得資金贈与の特例を受ける場合には以下の書類を用意し所轄税務署に提出しなければなりません。

書類理由
贈与契約書住宅取得資金の贈与の非課税枠を活用して贈与したことを証明するための証拠
戸籍謄本贈与者と受贈者の関係性を証明するため
新築・増築した家屋の敷地の登記事項証明書床面積や専有面積を証明するため
新築・増築した際の売買契約書や建築請負契約書の写し新築や増築したことを証明するための書類
源泉徴収票合計所得以下であることを証明するため

住宅取得資金贈与の特例を活用する場合の注意点3選‼

住宅取得資金の贈与は、時限製の制度のなので駆け込みで行うしか方法がない‼と考えている方も多いのではないでしょうか。
期日が迫っているからこそ、注意しなければならない点を3つご紹介します。

  1. 申告期限に注意
  2. 小規模宅地等の特例が適用できない
  3. 遺留分を請求される可能性がある。

①贈与税の申告期限に注意‼

1つ目の注意は贈与税の申告期限です。
贈与税の申告期限は、贈与が行われた年の翌年の2月1日から3月15日です。
そのため年末に贈与を受けてしまうと、すぐに贈与税の申告期限が来てしまい新築の家を購入したとしても、購入してすぐに入居できるわけではありません。
その間に申告期限を過ぎてしまった場合住宅取得資金の贈与の特例を適用することができなくなります。 そのため、贈与を行うのであれば、できるだけ年末を避けて入居に近いタイミングで贈与する事をおすすめします。

②小規模宅地等の特例が適用できない

相続財産の中には親の持ち家・土地などがあります。
土地の評価額は高額になりがちですが、小規模宅地等の特例を活用する事で最大80%の土地の評価額を減額できます。(土地のみの評価額なので建物の評価額は含まれません)
ですが、小規模宅地等の特例を活用するにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、その中の要件の一つに「相続開始時に、財産を受け取る者が家屋を所有したことがない」という要件があります。
住宅取得資金の贈与の非課税枠を活用して住宅しの資金を援助してもらった場合、要件を満たすことができないため、小規模宅地等の特例を活用する事ができませんので注意しましょう。

③遺留分を請求される可能性がある

相続人の最低限財産を受け取る事ができる権利を遺留分と呼びますが、特定の相続人が財産をもらいすぎた場合には遺留分が請求される可能性があります
遺留分は相続財産だけではなく、住宅取得資金の贈与や結婚のための贈与なども対象になりますので、住宅取得資金を受け取る場合には、他の相続人とのバランスも注意しましょう。

その不安を解決します!

相続ぽるとでは、ご紹介した住宅取得資金の贈与の特例以外にも「適切な贈与・相続の入り口」としてみなさまにご利用頂いております。
相続はまだ早いと感じるときから早めに対策をしていかなければ多くの相続税を支払わなければならない可能性があります。
「うちは揉める程財産がない」「仲がいいから大丈夫」と感じている方、実は相続で揉めてしまうのは資産5,000万円以下の家庭で起きている事をご存知でしょうか。
相続で失敗しないためにも今からできる対策をしたい方・現状で相続税がかかるのか知りたい方はお気軽にご相談下さい。

記事のまとめ

今回は税制改正により3年間延長される住宅取得資金の贈与に関してご紹介しました。
住宅取得資金の贈与の特例の制度は、一定の要件を満たすことで最大1,000万円まで非課税で贈与が可能な仕組みになっています。
本制度は暦年課税制度などの他の贈与の特例制度と併用して活用することが可能なため、併用することでより多くの財産を受贈者に渡すことが可能です。
一方で申告期限以降に書類を提出した場合や、贈与するタイミングにより住宅取得資金の贈与の非課税枠の適用が受けられなくなる可能性もあります。
2024年以降は暦年贈与や新しく非課税枠が追加された相続時精算課税制度を活用して行くことで将来的な相続財産を減らせる可能性があります。
さらに今回の税制改正では住宅取得資金の贈与の要件も見直しがされています。
一人でも子や孫へ行える制度ですが、一つ間違えてしまうと多くの贈与税を支払わなければならない可能性がありますので、非課税制度を上手に活用したい方は、専門家に相談しながら進める事をおすすめします。