銀行の相続手続きは何から始めるべき?
大切なご家族が亡くなった後、銀行などの金融機関は「本人の財産の保護のために取引を一時的に制限をかける口座凍結」が行われます。
この凍結が継続している限り、相続人は口座から引き出しを行うことができません。
銀行の口座から預金を引き出すには、各金融期間で所定の手続きをしなければなりません。
本記事では、相続が発生し口座凍結された銀行口座の手続きを方法をご紹介します。
銀行の相続手続きの流れ
銀行の預貯金が遺産に含まれる場合の手続きを見てみましょう。
一般的に、銀行口座の相続手続きは、名義変更または払い戻しが行われます。
名義変更は、口座の名義が変更されることであり、払い戻しは相続人の銀行口座に、相続した金額が振り込まれる。
どちらかになります。
名義変更でも払い戻しでも一般的な手続きの流れが変わるわけではありません。
1.遺言書の有無を確認する
まず初めに行うことは、遺言書の有無の確認です。
一般的に、遺言書がある場合には無効にならない限り、遺言書に記載されている内容通りに遺産分割を行います。
そのため、相続が開始された場合には早めに遺言書の有無を確認しましょう。
種類によって保管方法が異なる
遺言書には3つの種類があり、それぞれの遺言書によって保管方法が異なります。
ここではかんたんに遺言書の種類を保管方法をご紹介します。
公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
保管方法 | 公証役場 | 法務局または本人 | 本人 |
それぞれの遺言書の特徴を詳しく知りたい場合には、こちらをご参照ください。
2.遺産・相続人の調査を行う
遺言書の有無の確認と同時に、遺産・相続人の調査を行いましょう。
相続は亡くなった方の「遺産を、誰が・どのくらい・どの種類の財産を引き継ぐか」を決めます。
遺産の調査
遺産の調査を行うには、様々な方法があります。
場合によっては預金を、複数の口座で管理している場合があります。
銀行口座はまとめて手続きすることができません。
金融機関が異なれば、それぞれの機関に応じて書類を作成しなければなりませんので注意してください。
銀行口座を調査するためには、遺品整理の際に通帳やカードを探すなどの方法があります。
ただし、最近はネット銀行などの通帳やカードが存在しない銀行口座もありますので、スマホやPCなども確認をしましょう。
相続人の調査
遺産を引き継ぐ権利を持っている方を、相続人といいます。
ただし、ただ単に仲がいいからというだけでは相続人にはなれません。
相続で遺産を引き継げる人は法律で決まっており、これを法定相続人といいます。
法定相続人を確認するには、被相続人の出生から死亡までの記載がされている戸籍謄本などを活用することで相続人を確定することができます。
3.遺産分割(協議)を行う
遺言書がある場合には、その内容に応じて分割の手続きを行います。
ただし、遺言書がない場合には相続人全員で遺産の分割方法を決める遺産分割協議を行います。
争族に注意
遺産分割協議の手続きを行う場合には、注意しなければならない点があります。
それは遺産の分割方法については、相続人事に考え方が異なる。という点です。
預金などの分割しやすい財産を分ける際には、あまり揉めませんが、不動産などの動かすことができない+評価額が高額になりやすい財産には注意しましょう。
場合によっては手続きだけでも何ヶ月とかかるケースも存在します。
4.銀行へ連絡をする
遺産の分割方法が決まったら本格的な銀行の手続きの開始です。
まず初めに、預金を引き継ぐことになった相続人は銀行に「被相続人が死亡した旨」を連絡しましょう。
連絡方法は、以下の通りです。
- 電話連絡
- 銀行の窓口へ向かう
- HPなどのネットから連絡する
どれでやればいいの?と不安な場合は、ひとまず電話で連絡を取ることをおすすめします。
連絡後、手続きに必要な書類などを教えてもらうことができます。
5.相続税の計算し申告・納付をする
相続は、基礎控除があり一定の金額までに達しなかった場合には、相続税の申告手続きは必要ありません。
これは、銀行の預金だから必要ないのではなく、基礎控除より下回る金額であれば原則必要ありません。
仮に、基礎控除を超える金額の場合は、必要な書類を準備し管轄の税務署に申告手続きを行いましょう。
実務上は相続税の申告手続きが先
多くのサイトで「銀行口座の名義変更・払い戻し手続きが完了してから相続税の計算をし、申告納付をする。」と記載されていますが、現実的には相続税の申告納付手続きを終えた後に名義変更手続きを行います。
名義変更手続きが完了してから、相続税の計算をするのは理想ですが、家庭によって遺産分割が中々終わらない。などの状況になる可能性もあります。
そのような場合は、先に法定相続分で計算をし申告手続きを行います。
6.手続きに必要な書類を準備し銀行で手続きを行う
相続税の申告が完了したら、銀行の連絡時に共有してもらった必要な書類を準備し、銀行で手続きを行います。
必要な書類に関しては、後述で詳しくご紹介しておりますのでそちらをご参照ください。
7.預金の払い戻しが行われる
銀行に提出した書類に日々がなければ、手続きが行われ名義変更または払い戻しが行われます。
ここで書類に不備がある場合は、預金の払い戻しが行えません。
その場合、提出した銀行などから訂正や再作成の依頼がきます。
遠方に住んでいる場合には、時間がさらにかかる可能性があるため、書類に不安な方は費用はかかりますが、弁護士や税士に依頼をすることをおすすめします。
必要な書類
銀行預金の払い戻し・名義変更に必要な手続きをご紹介しました。
ここでは、手続きに必要な書類について詳しくご紹介します。
実は、前述でご紹介した遺産の分割方法によって、預金の払い戻しや名義変更に必要な書類が変わります。
今回は、遺言書がある場合と遺産分割協議を行った場合の2種類を中心にご紹介します。
通常の払い戻し:遺言書がある場合
遺言書がある場合に必要になる書類は以下の通りです。
必要書類 | 発行費用 |
---|---|
通帳またはキャッシュカード | – |
金融機関指定の届出書 | – |
遺言書(検認済) | – |
検認済証または検認済証明書 | 1通150円 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの)・除籍謄本 | 450円(除籍謄本の場合は750円) |
預金を相続する相続人の印鑑証明書 | 200円~300程度 |
上記のような書類を準備しましょう。
最近では、戸籍謄本な印鑑証明書などは、コンビニでも発行することができます。
その場合、発行手続き費用が役所で発行するよりも少しだけ費用を抑えることができます。
通常の払い戻し:遺産分割協議を行った場合
遺言書がなく、相続人全員で話し合いを行う遺産分割協議を行った場合に、銀行の手続きに必要な書類は、以下の通りです。
必要書類 | 発行費用 |
---|---|
通帳またはキャッシュカード | – |
金融機関指定の届出書 | – |
遺産分割協議書 | – |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの)・除籍謄本 | 450円(除籍謄本の場合は750円) |
相続人全員の戸籍謄本 | 1通あたり450円 |
相続人全員の印鑑証明書 | 1通あたり200円~300円程度 |
遺産分割協議を行った場合には、分割内容を記した遺産分割協議書の作成が必要です。
必ずしも作成しなければならない書類ではありませんが、銀行での手続きや相続税の申告手続きには、「誰が銀行の預金を相続するのか」を明確に記すことで、手続きをスムーズに行うことができます。
また、遺言書がある場合と違い、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明などが必要になります。
あくまで一般的な書類
遺言書・遺産分割協議を行った場合の銀行手続きに必要な書類をご紹介しました。
しかし、注意していただきたいのはご紹介した書類はあくまで一般的な書類であるということです。
相談する専門家や、銀行によっては別途書類が必要になるケースも存在しています。
そのため、銀行に連絡を行う際には銀行に伝えるだけではなく必要書類や自身の状況などを伝えると、明確な書類を共有してくれます。
手続きをスムーズに行う方法
銀行の相続手続きは、他の財産(不動産や証券など)と比べると比較的かんたんに行えます。
ただし、相続では銀行の手続き以外にも行うべき手続きが存在します。
では、銀行の手続きを含めてスムーズに進めるためには何をしたら良いのでしょうか。
①被相続人が財産目録を作成する
1つ目は、財産目録の早めの作成です。
財産目録は財産の種類・金額などの財産に関する情報が記載されているのことを言います。
被相続人が遺言書を作成する際にも、すべての遺産を洗い出ししてからでなければ本当に有効な遺言書の作成をすることができません。
さらに、相続が発生したとしても財産目録があれば遺産を調査する時間も軽減することが可能です。
②必要になる書類を予め準備する
相続が開始される前に、相続に関わる必要書類を事前に集めておくことでスムーズに進める事が可能です。
銀行の手続きは、比較的かんたんだとご紹介しましたが分割方法によっては相続人全員の戸籍謄本等が必要になります。
コンビニでも発行はできますが、市役所の場合土日祝日が開庁していない可能性があり、仕事などを休まなければならない可能性があります。
銀行の手続きですら、書類を収集するのが大変です。
予め予定を計画して入れば事前に収集をすることができます。
勝手に銀行の手続きを行なうと他の相続人から不満が…
相続の話は他の人に言いづらく、本人でさえも話しをしたがりません。
しかし、話し合いを行わなければ永遠と対策ができないのも事実です。
銀行預金の手続きだけではない相続は、家族全員で協力をしなければ円滑・円満に行うのは難しいです。
ご自分だけ勝手に対策をしても相続人または被相続人から不満がでますので、全員の共通認識を持ったうえで、対策を行いましょう。
③弁護士・司法書士・税理士などの専門家へ依頼する
銀行預金を扱う金融機関や、市役所などの公的機関等は土日祝日が開庁されていない可能性が高いです。
その場合、平日に手続きをすることになりますが、忙しいみなさまの場合「仕事の終わりに」「スキマ時間に」などに行いことが多いでしょう。
そのような場合には、弁護士を初めとした専門家に代行依頼を行うことができます。
依頼する専門家によって必要書類の収集から手続きの代行までを依頼する事が可能です。
各専門家について詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
注意点
銀行預金に関する相続手続きを行う場合には、いくつかの注意が必要になります。
ここでは、銀行預金の相続手続きに関する注意点を4つご紹介します。
①期限はないが相続税の期限はある
銀行預金の相続手続きは「相続開始から〇〇月後まで手続きを行う必要がある」というような期限は設けられていません。
そのため、いつ手続きを行っても、銀行手続きには大きく影響はしません。
しかし、銀行の手続きに影響はなくても相続税の申告期限には大きな影響があります。
遺言書が発見されて有効とみなされている場合には、あまり影響はありませんが遺言書がなく、相続人全員での話し合いである遺産分割協議を行う場合には注意が必要です。
遺産分割が長期間に渡ると、相続税の申告期限である10ヶ月を超えることもあります。
そのため、銀行手続き自体に期限はありませんが、相続税の申告には期限があるため預金の手続きも早めに済ませることをおすすめします。
参照:e-Gov法令検索 相続税法第27条第1項
(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073/20180401_429AC0000000004)
②勝手に銀行口座から預金を引き出すと放棄ができない
相続が発生し、葬儀費用などの捻出が難しく口座から預金の引き出しを行い、費用に充てた。というケースがあります。
一見すると問題ないように思えますが、勝手に口座から預金を捻出した場合には、遺産を引き継いだとみなされ、相続放棄をすることができなくなる可能性があります。
遺産を引き継いだとみなされると、たとえ被相続人に借金があった場合でも返済義務を負うことになります。
「どの費用なら問題ないのか」これを精査するには、専門的な知識とみなさまのご家庭の状況を見なければ判断できません。
不安な方は、専門家のアドバイスがあるまでは、預金に触れずにそのままにしておくことをおすすめします。
③払い戻し制度を活用する場合には領収書を保管する
相続預金の払い戻し制度を活用する場合には、必ず領収書の保管をしておきましょう。
引き出したお金の使用用途をきちんと説明をするためにも、保管することをおすすめします。
相続預金の払い戻しとはいえ、相続人の中には「自分のお金にしているんじゃないのか」などの不満を持つ方もいらっしゃいます。
事前に伝えておくことや領収書を保管しておくことで、相続人たちに言いがかりがつけられても説明することができます。
④ネット銀行は発見されにくい
最近では、インターネットの普及により銀行口座もネットで開設が可能になりました。
キャッシュカードや通帳がないタイプのネット銀行も多く存在しているため、メガバンクや郵便局・地方銀行などよりも発見されにくいという点に注意しましょう。
遺産分割協議のやり直し |
過少申告加算税が課されて追加で税金を納税しなければならない |
口座に入金されている金額によっては、過少申告加算税が課される可能性や遺産分割協議のやり直しなども行う必要があります。
エンディングノートや財産目録・遺言書などに記載されていれば発見することができますが、故人のスマホやPCなどで保管されている場合には、口座があるかわかりません。
ネット銀行の口座を保有している場合には、相続手続きを円滑に進めるためわかるように記載するなどの対策も重要です。
銀行口座の手続きはしあわせ相続診断へご相談ください
相続の相談をしたいけど、具体的どこに相談したらいいかわからない。というご相談を多く受けます。
そのような場合には、しあわせ相続診断にご相談ください。
しあわせ相続診断では、年間100件以上の相談実績を持つ専門家が対応を行うため、銀行に関する相談はもちろん、相続税対策・分割方法(遺言書)のお悩み、実際の相続発生時の手続き企画まで、幅広くご相談いただけます。
多くの専門家と同じように、初回無料で相談を受け付けております。
オンラインでも対応が可能なため、全国どこでもみなさまのご希望に合わせてご相談をいただける点。
さらに必要に応じて最適な専門家を私たちがご紹介し、やり取りの窓口として活用できる。
この2点がご利用いただいたご相談者様に喜ばれています。
相続手続きで「知らなかった」後悔しないしないための、相続対策や手続きについては、相続しあわせ支援協会の無料相談であるしあわせ相続診断をぜひご利用ください。
記事のまとめ
今回は、銀行の相続手続きの流れや注意点をご紹介しました。
銀行口座の手続自体は難しくありませんが、口座の特定(特にネット銀行など)などに時間を要する可能性も否定できません。
相続人同士での争いを避け、なるべくスムーズに手続きを行いたい場合には弁護士や司法書士・税理士などのへの相談をおすすめします。
ですが、どの専門家でも対応できるわけではなく、「相続に強い専門家」を選ぶ必要があります。
しあわせ相続診断では、みなさまの状況によって最適な専門家もご紹介しておりますので、お気軽にご相談ください。