相続時の株式の名義変更には注意点がたくさんあります
遺産相続時に株式がある場合には、そのまま運用することはできないため名義変更を行う必要があります。
しかし、株式に関心がない方が引き継いだ場合、手続き方法が分からないことがあるかもしれません。
実は、みなさんが聞いたことがある株式には種類があり、種類ごとに必要な手続きが変わります。
本記事では、株式の遺産相続時の名義変更に関する基本的な流れと、よく起きてしまうトラブルをまとめてご紹介します。
上場株式の相続時の名義変更手続き
遺産相続時に株式を引き継いだ場合、どのような方法で遺産を評価し手続きを行う必要があるのでしょうか。
ここでは、上場株式を引き継いだ場合の基本的な流れや必要になる書類をご紹介します。
評価方法
遺産を引き継いだ場合には、相続税の計算をしなければなりませんが、株式などの価格が常に変動する遺産を引き継いだ場合には、どのように評価をする必要があるのでしょうか。
基本的な評価は以下のような流れです。
- 1株あたりの評価額を算出する
- 1株あたりの評価額と保有数を計算する
1.1株あたりの評価額を算出する
上場株式の評価方法は、国税庁が定める財産評価基本通達を参考にすると、以下の4つの価格のうち最も安い金額で評価します。
被相続人の死亡日の最終価格 |
被相続人の死亡日の属する月の最終価格の月平均額 |
被相続人の死亡日の属する月の前月の最終価格の月平均額 |
被相続人の死亡日の属する月の前々月の最終価格の月平均額 |
上記の価格を計算し、その中で最も低い金額が1株あたりの評価額になります。
参照:国税庁 財産評価
(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01.htm)
2.1株あたりの評価額と保有数を計算する
前述でご紹介した評価額は、1株あたりの株価になります。
1株で保有している可能性もありますが、運用していればもっと多くの株を保有しています。
そこで前述で算出した評価額と保有している口数を計算して、株式の最終的な評価額を算出します。
具体的な計算方法は以下の通りです。
1株あたりの評価額×保有口数 |
注意!
すべて同じ株で運用していれば、評価額の算出に時間はあまりかかりませんが、複数の商品を運用している場合には注意が必要です。
それぞれで評価額を算出しなければなりません。
証券口座に入っている株式たちは全て同じ銘柄ではないため、必ず口座にどの証券を運用しているのかを必ず確認しましょう。
具体的な名義変更手続きの流れ
相続時には様々な手続きをする必要がありますが、上場株式を引き継いだ場合には、どのような流れで名義変更を行うのでしょうか。
具体的な名義変更の流れは以下のような流れです。
ここでは、相続全般の流れではなくあくまで上場株式の名義変更の流れになりますので、ご注意ください。
以上のような流れになっています。
1.証券会社に連絡をし、口座を確認する
まずはじめに行うことは、相続が発生したことを証券会社に連絡をします。
一般的な銀行口座と同様に証券会社でも「遺産を保護する」目的で口座凍結がされます。
口座凍結がされたとしても、保有していた株式の口数を把握することはできるため、残高証明書を発行することで口座で管理している株式や有価証券などの口数を確認することができます。
2.遺産分割協議を行い株式の分配を決める(遺言書の場合は不要)
実際に名義変更を行う場合には、「誰が証券を引き継ぐのか」を決める必要があります。
一般的に遺言書がある場合には、その通りに遺産を分割しますが、遺言書が発見されなかった場合には、相続人で遺産の分割方法を決める遺産分割協議を行います。
3.必要書類の準備
誰が遺産を引き継ぐのかが決まった後に名義変更に必要な書類の準備を行います。
具体的に必要になる書類については、後述で詳しくご紹介をします。
証券会社によって必要になる書類は異なりますので、必ず証券口座がある証券会社に連絡をとって必要な書類を準備しましょう。
4.相続税の申告・納付手続き
必要な書類の準備と同様に、相続税の計算を行います。
一般的に言われているのは、「名義変更の後に相続税の計算」ですが、実務的には相続税の計算をし、申告納付を行った後に名義変更の書類を証券会社に提出をします。
5.証券会社へ書類の提出
相続税の申告が完了した後、証券会社に必要な書類を提出します。
証券会社によって窓口へ持っていくのか郵送でも対応してくれるのかは異なりますので、各証券会社に確認することを忘れないようにしましょう。
6.株式の名義変更を確認する
書類を証券会社に提出した後、1~2ヶ月ほどで名義変更が完了します。
証券会社や必要書類の確認によって進行状況は異なります。
早く名義変更が行われる場合もあれば、書類の不備や処理に時間がかかり通常よりも遅くなる可能性があります。
相続人だけで手続きを行うと時間がかかる可能性もありますので、不安な場合は証券会社と密に連絡を取ることや専門家への相談をすることをおすすめします。
上場株式の名義変更に必要な書類
上場株式の名義変更の流れをご紹介しましたが、実際に名義変更の手続きを行う場合にはどのような書類が必要になるのでしょうか。
上場株式だけではなく多くの遺産相続で必要になる書類は、遺産の分割方法で異なります。
ここでは、遺言書がある場合と遺産分割協議を行った場合に必要になる書類をご紹介します。
遺言書がある場合の名義変更に必要な書類
遺言書があり、遺産の分割方法が指定されている場合の名義変更に必要な書類と発行場所は以下の通りです。
名義変更に必要な書類 | 発行機関 |
---|---|
証券会社指定の書類 | 証券会社 |
証券口座に関する資料(残高証明書など) | 証券会社 |
遺言書の写し | ー |
検認済証明書 | 裁判所 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載がある) | 市役所 |
被相続人の住民票または附票 | 市役所 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市役所 |
遺言執行者の印鑑証明書 | 市役所 |
上記のような書類が必要になります。
遺言書の場合、証券会社によっては遺産を引き継ぐ人の印鑑証明書だけでも問題ない会社もあります。
検認済証明書などは、遺言書が公正証書遺言の場合には必要ありませんが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には必要になりますので必ず家庭裁判所で発行してもらいましょう。
遺産分割協議を行った場合に名義変更に必要な書類
遺言書がなく相続人全員で株式を含めた遺産の分割方法を決める遺産分割協議を行った場合に必要になり書類は以下の通りです。
名義変更に必要な書類 | 発行機関 |
---|---|
証券会社指定の書類 | 証券会社 |
証券口座に関する資料(残高証明書など) | 証券会社 |
遺産分割協議書 | ー |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載がある) | 市役所 |
被相続人の住民票または附票 | 市役所 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市役所 |
相続人全員の住民票 | 市役所 |
遺産分割協議を行う場合には、署名捺印を行うため全員分の印鑑証明書が必要になります。
かかる税金と発行費用
上場株式を相続で引き継ぎ名義変更を行う場合には、相続税が課税され、書類の発行費用が必要になります。
相続税
相続税は、基礎控除枠が存在し基礎控除を超えない限りは、税金が課税されることはありません。
相続税の基礎控除枠は以下の計算式で求めることができます。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
書類の発行費用
前述でご紹介した必要書類は無料で発行できるわけではなく発行手数料を支払う必要があります。
ここでは一般的に必要な書類の相場費用をご紹介します。
名義変更に必要な書類 | 発行手数料 |
---|---|
検認済証明書 | 150円程度 |
被相続人の戸籍謄本 | 450円 |
被相続人の住民票または附票 | 200円~300円程度 |
相続人全員の印鑑証明書 | 200円~300円程度 |
相続人全員の住民票 | 200円~300円程度 |
上記の書類の発行手数料はあくまで相場の費用になります。
相続税などの税金などとは別に一括ではなく発行するたびに手続きをしなければなりませんので、忙しい相続手続きの際にはいくつか余分に発行しておくことをおすすめします。
非上場株式の相続時の名義変更手続き
株式には上場株式の他に非上場株式という株式があります。
非上場株式も、上場株式と同じように相続時に引き継いだ場合には名義変更手続きをする必要があります。
ここでは非上場株式の名義変更手続きについてご紹介しますが、非上場株式の名義変更は複雑なため必ず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
ここでご紹介するのは、あくまで非上場株式の相続時の名義変更の概要になりますので、注意してください。
評価方法
相続する株式が、非上場株式の場合どのように評価をするのでしょうか。
上場株式とは異なり、非上場株式の場合は大会社・中会社・小会社の区分によって評価額の算出が異なります。
しかし、評価方法は上場株式と同じように国税庁が定めている財産評価基本通達で評価方法を確認することができます。
具体的な名義変更手続きの流れ
非上場株式の名義変更を行う際の流れは以下のような手続きで名義変更を行います。
上記の流れで名義変更の手続きを行います。
1.遺産分割協議を行い株式の分配を決める(遺言書の場合は不要)
上場株式と同じように非上場会社の株式を誰が引き継ぐのかを決めます。
上場株式とは異なり、証券会社を通して口座で管理している場合もあれば株券(実物があるもの)の場合もあります。
しかし、一般的には株主名簿に記載されている事が多いです。
つまり、証券口座や株券などの実物を確認することができなく、会社が管理しています。
会社が管理する株主名簿には、誰が何株を保有しているかが記録されており、譲渡や名義変更の際にはこの名簿を基に手続きを進めます。
2.必要書類の準備
実際に非上場株式の名義を誰に変更するのかが決まれば必要な書類を準備します。
この書類も後述でご紹介しますが、準備ができれば会社に書類を提出して手続きを進めていきます。
3.相続税の申告・納付手続き
こちらは前述もご紹介しているように、相続税の申告は実際に名g変更の手続きを行う前に申告納付を行います。
非上場株式の相続税は、算出方法によって金額が大きく異なります。
そのため、評価額の算出方法や申告のための相続税の計算方法などを知りたい場合には、税理士などの専門家に相談をすることをおすすめします。
4.会社へ必要書類の提出
相続税の計算・申告納付の手続きが完了した後には、名義変更の書類を会社へ提出をします。
会社側への名義変更の書類の提出方法は、会社ごとに異なりますが受理された後に名義変更の手続きがスタートします。
しかし、どのように名義変更の手続きがいつ始まりいつ終わるのかは会社ごとに異なりますので、事前に確認することをおすすめします。
5.株主名簿の更新を確認する
実際に名義変更が完了する際には、株主名簿の書き換え(持ち主の書き換え)が行われます。
中には自社の株を会社で買い取るなどの方法も存在しています。
実際に非上場株式の名義変更手続きを行う場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
非上場株式の名義変更に必要な書類
非上場株式を引き継ぐ場合には、どのような書類が必要になるのでしょうか。
名義変更に必要な書類 | 発行機関 |
---|---|
株式名義書換請求書 | 会社 |
遺言書の写し | – |
検認済証明書 | 裁判所 |
遺産分割協議書 | – |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載がある) | 市役所 |
被相続人の住民票または附票 | 市役所 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市役所 |
遺言執行者の印鑑証明書 | 市役所 |
基本的に非上場会社に提出する書類は、上場株式の名義変更で必要になる書類と同じです。
しかし、上場株式とは異なり手続きを行うのは会社になるため会社に連絡をしなければ手続きを行うこともできなくなりますので、注意しましょう。
株式の名義変更でよくある遺産トラブル
上場株式・非上場株式の名義変更の全体的な流れをご紹介しました。
しかし、遺産相続時には何が原因で相続人同士で闘いがあるわかりません。
ここでは、株式の名義変更による遺産相続のトラブルを3つご紹介します。
株式の名義変更のトラブルは、評価額にかかわらず発生する可能性があるので、「気にしない」・「仲が良いから問題ない」と思わずにしっかりと覚えておきましょう。
トラブル①書類の不備で手続き負担が増える
株式の名義変更に必要な書類に内容不備があれば、手続きが大幅に遅延するリスクがあります。
前述でご紹介した書類に少しでも不備がある場合、証券会社は手続きを行うことはできません。
トラブル②配当金が受け取れない!?
名義変更手続きが遅れると、相続人が配当金を受け取れなくなる可能性があります。
株式の名義は、手続きを行わない限り被相続人の財産となります。
適切に配当金を受け取るためには、名義変更を行う必要があります。
この配当金は
トラブル③必要な時に売却ができなくなる
一般的に、名義変更が行われていない財産を勝手に売却することはできません。
株式も同様に口座で保管されている株式は、名義変更をしない限りは凍結したままになるため、売却をすることができません。
仮に株式運用に興味がなく現金化したい場合にも、名義変更手続きを行わないと売却し現金化することができません。
トラブルを防ぐための対策方法
株式の名義変更に関するトラブルをご紹介しました。
関係ないだろうと思っていても、相続は大切な家族が亡くなったことで発生します。
被相続人の死後の自身の状態は相続がつかないと思います。
小さなトラブルでも巡り巡って大きなトラブルに発展する可能性も否定できません。
名義変更一つで大げさと思わずに、どのようにトラブルを回避するのかをご紹介します。
1.専門家(弁護士や税理士)への相談
まずは、遺産相続に詳しい専門家に相談をしましょう。
特に株式などの、評価額の算出が難しい財産であれば、税理士などに相談することをおすすめします。
また、株式は口座で管理している口数がわかれば分割しやすい財産ですが、分割方法を巡って対立する可能性もあります。
そのような問題が起きそうな場合には、税理士に合わせて弁護士への相談も視野に入れておきましょう。
多くの専門家が無料相談などを行っています。
実際に手続きを依頼するには、費用が発生しますが手続きの流れなどを相談する場合には費用がかからない可能性もあります
2.生前に証券会社との事前確認
2つ目は事前に証券会社と連絡を取っておきましょう。
証券口座を把握できなれば、商品の口数などを把握することができません。
証券口座を確認しなければ、会社に連絡をし名義変更の手続きができなくなります。
証券会社によって名義変更に必要になる書類が異なります。
そのため、早めに口座の把握をし事前に名義変更に必要になる書類を把握しておくと手続きをスムーズに進めることができます。
口座の把握ならほふりへ連絡
株式の運用をしていたなんて知らなかった。なんということも相続時にはあります。
株式は現金や不動産などの目に見える遺産ではないため、実際に口座が存在しているのか把握することが重要になります。
口座が存在しているのか不透明な場合には、証券保管振替機構(通称:ほふり)へ開示請求手続きを行うことで、被相続人がどの証券会社の口座を開設しているのか把握することができます。
名義変更を行うにしても、口座を把握しなければ手続きを行うことができません。
ほふりで開示請求の手続きをする場合でも、書類や費用が必要になりますので、手続きが気になる方は一度確認してみることをおすすめします。
3.早めの手続きを!
相続時には、株式の名義変更の他にも様々な手続きをしなければなりません。
株式以外の遺産の評価額が算出できなければ、相続税の申告納付手続きもできず結果的に名義変更に遅れがでる可能性もあります。
証券会社や専門家に早めに相談をし手続きを把握しておくことで、トラブルがもし起きた場合でも柔軟に対応をすることができます。
株式の名義変更手続きを実際に行うのは相続税の申告が終わった後ですが、書類の準備や証券会社への連絡などを事前に済ませておくことで、他の手続きにも余裕がでます。
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株式の名義変更の手続きと、名義変更を行う上での注意点をご紹介しました。
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記事のまとめ
株式を相続で引き継ぐ場合には、名義変更が必要になります。
上場株式の場合は、評価額の算出は個人でも可能ですが非上場株式は専門家でなければ難しい場合があります。
名義変更には、ほふりでの証券口座の確認や証券会社への連絡・税金の評価など様々な手続きが必要になります。
不動産などと比べると、手続き方法等は簡単に見えますがトラブルが0というわけではありませんので、不安な方は専門家への相談をすることをおすすめします。