遺産相続の相談は税理士と司法書士どっち?各専門家ごとの特徴を紹介

税理士・司法書士は相続の内容で相談先を分ける

遺産相続の相談を行う際には、様々な専門家が候補に挙げられます。

その中に税理士と司法書士の専門家、どちらに相談をしたらいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。

最初にお伝えしますが、1つの専門家に相談をしているだけでは、万全な対策とは言えません。

みなさんの悩みや不安、問題に対して適切な対策を提案してくれる専門家を選ぶことをおすすめします。

本記事では、税理士と司法書士の特徴から対応できる業務の範囲などを解説します。

依頼する際の費用項目も合わせてご紹介しておりますので、気になる方はぜひ一度ご参照ください。

相続税の申告や対策なら税理士へ

相続と言えば相続税となるほど、遺産相続が開始されるとみなさんの頭は「税金がかかるかわからない」ということではないでしょうか。

実際に相続税が課税されるのは全体の1割程度と聞いたことがあるかもしれませんが、いざ相続が開始されるとみなさん不安になると思います。

「相続税がかかるか不安」・「相続税がかかるなら対策をしておきたいけど何をしたらいいかわからない」このようなお悩みの際は、税理士へ相談をしてみましょう。

相続税の申告手続きは、税理士の独占業務

実は、相続税を初めとした税務手続き(相談・書類作成・申告代行)などは、法律によって税理士(税理士法人)の独占業務として定められています。

例えば、相続税の計算・控除の適用可否の判断、相続税の申告書類の作成や申告代理などが当てはまります。

例えば、弁護士・司法書士・行政書士に、相続税の申告方法などの相談をすることはできますが、実際に申告の代行や書類の作成を行う場合には、税理士にしか依頼することができません。

参照:e-Gov 法令検索 税理士法第二条(税理士の業務)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237

なぜ申告業務などが独占業務?

なぜ税理士の独占業務と言われているのでしょうか。

  1. 専門性
  2. 公的な税務手続きをサポートする
  3. 信頼性
1.専門性

相続税を初めとした税務手続きには専門的な知識や経験が必要になります。

財産の評価額1つをとっても、適切な評価額を算出しないと、みなさんが余計に税金を納付する可能性や、金額が足りないということが起きてしまいます。

2.公的な税務手続きをサポートする

独占業務を取り扱う税理士に相談をすることで、相談内容からみて適切な手続き・対策サポートを受けることが出来舞う。

3.信頼性

税理士は、誰でもなれるわけではありません。

試験を合格した人が、税理士の資格を取得することができます。

遺産相続は様々な税金が複雑に絡まる!

遺産相続は相続税だけを注意していれば良いわけではないことを、ご存知ですか?

相続税以外にも以下のような税金が課税される可能性があります。

税金概要
所得税(準確定申告)一定要件に該当する被相続人は、準確定申告をおこなう必要があります。
住民税準確定申告を行う場合、住民税も合わせて精算する必要があります。
贈与税生前贈与を活用する場合、贈与税や贈与を行うタイミングなどに注意しなければなりません。
登録免許税や不動産取得税相続登記には登録免許税が発生し、遺産分割協議や手続き方法によっては、不動産取得税がかかるケースもあります。

今回は、計算方法などは割愛しましたが、それぞれで税金を計算しなればなりません。

税理士への相談をなしに、ご自身で全て把握するのは、難しいでしょう。

もちろん相談をせずに、ご自身で手続きを行うこともできますが、申告漏れがあった場合には、追徴課税という別で税金を収める必要があります

税理士に相談をしておくことで、どの税金が掛かりそうなのをチェックすることができ、合わせて相談を行うことができます。

税理士に相談してもできないこと

税理士は税務の専門家です。

そのため、相続税の申告書類の作成や申告代理・節税などの相談をすることで多くのことを解決することができます。

しかし、税理士にも対応できないことが存在します。

それは以下のようなことです。

  • 遺産分割協議(揉めている場合)への介入
  • 相続放棄の申述代行
  • 相続登記
  • 認知症対策

上記のような手続きや内容に関しては相談をしても税理士だけで解決することができません。

相談はすることはできても、依頼する場合には税理士から提携先を紹介してもらう形となります。

不動産・認知症対策なら司法書士へ

ご存知かもしれませんが、2024年4月より相続で不動産を引き継いだ場合には、不動産の名義変更(相続登記)を行う必要があります。

この不動産の登記手続きは、司法書士にしかできず他の専門家(税理士・弁護士・行政書士)には相談はできても依頼をすることができません。

「遺産の中に不動産がある」・「相続登記の手続をサポートしてほしい」と考えている場合には、司法書士への相談を検討してみるといいでしょう。

相続登記の登記手続きは司法書士の独占業務

前述でご紹介しましたが、不動産の相続登記の手続きや相談を行えるのは、司法書士だけです。

税理士が、税務の業務が法律で独占されているのと同様に、法律で司法書士にしか登記手続きを認めていません。

相続登記だけに関わらず、登記手続きは不動産の権利関係を明確にし社会的な信頼を守る重要な手続きになります。

そのため、誰でもできるわけではなく司法書士にしか認められていません。

参照:e-Gov 法令検索 司法書士法第二条(業務)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197

なぜ司法書士の独占業務なの?

登記手続きを行うためには、不動産登記法や民法、相続税法など様々な法律の知識が必要になります。

司法書士は、法律の知識も豊富なため実務的な手続きとリスクを判断する役割を担っています。

「法律の専門なら、弁護士じゃだめなの?」と思う方もいらっしゃるかと思います。

しかし、弁護士は法律トラブル(紛争解決)が、主な業務になるため、司法書士に必要なスキルや経験、法律などが異なります。

認知症対策の家族信託の組成サポート

司法書士は、不動産の相続登記だけを相談できるわけではありません。

実は認知症対策の相談・サポートを受けられることをご存知でしたか?

一般的に、認知症になると名義人の口座が凍結されてしまい、口座からお金を下ろすことができなくなってしまいます。

そのような場合に備える認知症対策として、家族信託という仕組みがあります。

この仕組みを活用することで、認知症になってしまっても、お金を下ろすことが出来ます。

家族信託を組成できるのは、司法書士です。

なぜ司法書士だけ?

司法書士が家族信託を組成できるのは、法律に基づく信託契約書の作成や不動産の信託登記といった手続きが必要になるからです。

司法書士は信託契約のサポートをし、契約内容が法的に適切であるかを確認します。

また、登記をする必要がある場合には、司法書士は登記の専門家としてこれを担当します。

さらに、司法書士は家族信託の仕組みや注意点について法律相談を行い、スムーズな財産管理と運用を支援する役割を果たします。

そのため、司法書士は法律の専門家として家族信託に関与し、その組成をサポートしています。

司法書士にできないこと

相続登記から家族信託の組成など様々な手続きの代行・サポートをすることができる司法書士ですが、税理士と同じように相談は可能だが依頼することが難しいことがあります。

それは以下のとおりです。

  • 遺産分割協議(揉めている場合)への介入
  • 相続放棄の申述代行
  • 相続税の計算
  • 申告納付手続き

上記の手続きを相談・依頼する場合は、司法書士にもすることはできますが、実際に依頼をすることが難しいです。

税理士・司法書士に相談・依頼した際の費用相場

税理士・司法書士に限らず専門家に相談・依頼をする場合には、費用が必要になります。

ここでは、税理士・司法書士に相談や依頼をした場合の費用についてご紹介します。

以前は、法律によって各専門家に支払う費用相場が決まっていました。

現在は、各事務所毎に費用を決めることができます。

そのため、必ず「この費用になる」と断言はできません。

あくまで相場のご紹介になるため、必ず相談・依頼をする専門家に確認をしましょう。

税理士の費用項目と相場

相続税の申告を税理士に依頼する場合、費用の目安として「遺産総額の0.5%~1%」と紹介されることがよくあります。

ただし、相続税の申告が必要となるケースは全体の1割程度に過ぎません。

実際の税理士費用は、依頼内容や手続きの複雑さによって大きく異なります。

例えば、準確定申告や相続財産の評価・分割協議のサポートなど、相続税が発生しない場合でも、税理士の助けが必要になることがあります。

項目金額の相場
日当2万円~5万円程度
実費1万円~3万円程度
相談費用無料~1万円程度
報酬費用依頼内容によってことなる

報酬費用については、依頼する業務の内容によって異なります。

例えば、以下のような項目が報酬費用に組み込まれます。

項目金額の相場
相続税の申告納付遺産総額の0.5%~1%
準確定申告5万円~15万円程度
相続財産の評価や分割協議10万円~20万円程度
税務調査10万円~25万円程度

これらの費用はあくまで相場であり、ご家庭の状況や相続人間の関係、相続財産の内容などによって異なります。特に、不動産や株式が含まれる場合や、相続人間で調整が必要なケースでは、追加の費用が発生することもあります。

正確な費用を把握するためには、必ず税理士に相談し、見積もりを取得することをおすすめします。

司法書士の費用項目と相場

相続に関連する手続き、特に不動産の名義変更や遺産分割協議書の作成を行う際には、司法書士への依頼が必要になるケースが多くあります。

不動産は、手続きが複雑になる場合があるため、司法書士に相談するといいでしょう。

司法書士に支払う費用は、相談料・日当・実費・報酬費用の4つに大別されます。

不動産の相続登記や相続人調査など、具体的な依頼内容に応じて総額が決定されますが、一般的な相場は10万円~30万円程度と言われています。

項目金額の相場
相談料無料~1万円程度
日当2万~5万円程度
実費数千円~数万円程度
報酬費用10万~60万円程度

報酬費用については、依頼する業務の内容によって異なります。

例えば、以下のような項目が報酬費用に組み込まれます。

項目金額の相場
相続登記(不動産名義変更)1件あたり5万~10万円程度
遺産分割協議書の作成10万~20万円程度
相続人調査・戸籍収集1万~5万円程度
遺言書の検認手続き5万~10万円程度
財産調査のサポート5万~15万円程度

司法書士に支払う費用も、税理士と同じように依頼する内容によって費用が異なります。

特に不動産などは1件ずつ費用がかかりますので、司法書士に相談・依頼する場合には、なるべく全て把握したうえで相談をすることをおすすめします。

こんなときは税理士・司法書士に相談しましょう

税理士・司法書士に相談・依頼できる業務やそれぞれの特徴をご紹介しました。

しかし、遺産相続の手続きは必ず専門家に相談・依頼をする必要はありません。

ご自身で手続きを行えば費用はかかりません。

しかし、以下のような条件に該当する場合には、税理士または司法書士へ相談を行いましょう。

税金が課税されるかわからない場合

1つ目は税金が課税されるかわからない場合です。

前述でもご紹介しておりますが、相続時には相続税の申告だけではなく様々な税金が複雑に絡み合います。

そのような場合には、税理士に相談を行いましょう。

税理士に相談をすることで、相続税・贈与税・所得税など様々な税金のことを知ることが出来ます。

そこで申告や手続きに関して不安がある場合には、同時に相談をすることができます。

相談したら依頼しなければいけないわけではないので、一度税理士に相談してみることをおすすめします。

遺産に不動産が含まれる場合

不動産は、分割しにくく評価額が高額になりやすい財産です。

そのため、トラブルにも繋がりやすくなります。

一見このような場合、弁護士に依頼を検討しますが、まずは司法書士に相談をしましょう。

不動産は、他の遺産と比べても評価額の算出が難しい財産です。

司法書士は、不動産に関する知識も多く持っているため、適切な評価額を算出することができます。

遺産に不動産が含まれている場合には、登記だけではなく評価額や必要書類の分別も含めて司法書士に相談することをおすすめします。

どっちも必要な場合はどうする?

税理士と司法書士、どちらにも相談する必要がある場合には、同時がいいですが税理士に相談をしましょう。

税理士が手続きを行う相続税の申告は、相続開始から10ヶ月以内に手続きを行う必要があります。

司法書士が取り扱う相続登記は、相続開始から3年間と猶予があります。

どちらもとても重要な手続きですが、迷われている場合は、先に税理士に相談をし後に司法書士へ相談を行いましょう。

どちらでも相談できる場合は、好きな方

相続手続きは、ご紹介したように税理士や司法書士でなければ難しい手続きがあります。

しかし、相続人や財産調査、遺言書の作成サポートなどは、基本的にどの専門家(弁護士・税理士・司法書士・行政書士)でも、相談をすることができます。

ご自身が信頼できる人だと、ご判断された場合には、どの専門家でも可能な手続きを依頼しても良いでしょう。

専門家に相続の相談・依頼をすることで期待できること

税理士・司法書士に遺産相続の相談・依頼を行うことで様々な麺でメリットがあります。

ここでは、税理士と司法書士だけではなく専門家に相続の相談を行うことで期待できることを3つご紹介します。

  1. 手続きのサポート・代行依頼ができる
  2. トラブルや問題・不安を解決してくれる
  3. 適切な対策を提案してくれる

手続きのサポート・代行を依頼できる

遺産相続が開始されると様々な手続きに追われます。

中には開始から期限がついており、期限以内に手続きをしないとペナルティが発生してしまう手続きも存在します。

そんな場合には、税理士・司法書士に限らず専門家に相談をすることで、手続きのサポート・代行を依頼することができます。

基本的には、相続は何度も経験するものではありません。

慣れない手続きがほとんどの中で、どのように手続きをしたらいいのか不安になる場面も多くなると思います。

税理士・司法書士を初めとした専門家(弁護士・行政書士も同様)に相談・依頼をすることで、みなさんの負担が軽減されます。

トラブルや問題・不安を解決してくれる

前述でもご紹介しましたが、遺産相続の手続きは慣れない手続きになります。

そのような不安がある場合以外にも、相続人でトラブルになりそう・相続税の申告方法や計算方法がわからない。適切な節税対策が出来ているのかわからない。など、不安はつきものです。

税理士や司法書士を初めとした、それぞれの専門家に相談・依頼をすることで、適切なアドバイスを受けることができます。

適切な対策を提案してくれる

弁護士・税理士・司法書士・行政書士などの専門家はそれぞれの分野で、専門的な業務を相談・依頼することができます。

適切な専門家に相談を行うことで、ご自身にあった対策を提案してくれます。

家庭によって、状況は様々です。

そのため、ネットでできる対策が、みなさまの家庭に寄り添っている対策であるかは、わかりません。

万が一、適切な対策でなかった場合には、余計に税金を支払う可能性やペナルティがある可能性があります。

トラブルなら弁護士。相続税の申告などは税理士。不動産の登記なら司法書士。書類作成なrた行政書士など、それぞれの特徴を把握して、相談を行うことで、適切な対策を行うことが期待できます。

ただし、デメリットも存在する

弁護士・税理士・司法書士・行政書士などの、遺産相続の専門家に相談・依頼を行うことで大きなメリットもあります。

しかし、メリットがある場合にはデメリットも存在します。

  • 全員が相続の専門家ではない
  • 相続の中でも特定の分野の専門家の可能性がある
  • 費用がかかる
  • 複数の専門家に依頼する場合には、みなさんが窓口になる可能性がある

上記のようなデメリットが存在します。

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記事のまとめ|税理士と司法書士は使い分ける!

今回は、税理士と司法書士。遺産相続の相談をするならどっちに相談するべきかをご紹介しました。

税理士と司法書士は、相談・依頼できる業務の内容が違います。

そのため、みなさんの悩みや不安に応じて相談先を変える必要があります。

しかし、税理士事務所・司法書士事務所などは全国に複数存在します。

多く税理士・司法書士の中から、ご自身に合う専門家を見つけることは大変です。

さらに、相談先の税理士事務所・司法書士事務所が遺産相続を専門に扱っていないと、手続きに大きな影響を与えます。

税理士・司法書士のどちらかで迷われた場合には、期限の近い税理士に相談をしてみるといいでしょう。

しかし、税理士に依頼をすれば「司法書士に相談しなくてもいい」というわけではありませんので注意してください。

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