家の相続手続きには登記が必須です!
大切な家族(親など)が亡くなった後、悲しむ間もなく様々な手続きを行わなければならないのが相続です。
特に家(居住用住宅)などの不動産が遺産として存在している場合には、登記手続きという別の手続きを行わなければなりません。
全ての手続きに関して、専門家が必ずやらなければならない手続きではありませんが、家や土地などの不動産の種類によって、登記手続きが複雑になります。
本記事では、家が遺産としてある場合の相続手続き(登記)の流れについてご紹介します。
遺産の中に、不動産があるご家族はぜひご参照ください。
家(不動産)がある場合の相続手続きの流れは?
はじめに、不動産がある場合の相続全体の手続きの流れをご紹介します。
不動産とは、家(自宅)以外にも空き家・収益不動産・農地なども含まれます。
全体的な流れは以下の通りです。
- 行政手続きを行う
- 遺言書を確認する
- 遺産・相続人を調査する
- 遺産分割協議を行う
- 相続税の計算をし、申告納付を行う
- 相続登記(名義変更)を行う
特別不動産があるからといって、特殊な手続きがあるわけではありませんが、不動産がある場合には、登記手続きを行う必要があります。
①行政手続きを行う
まず初めは、行政的な手続きを行います。
行政的な手続きとは、死亡届・死亡診断書の提出や、保険証の返却・年金の受給停止手続き・葬儀・火葬・埋葬などの行政上行わなければならない手続きが該当します。
②遺言書を確認する
行政的な手続きが完了したら、本格的な相続に入ります。
まず初めは、遺言書の確認です。
遺言書は、「誰が・どの遺産を・どのように・どのくらい分割するのか」が決められている書類です。
原則、遺言書が存在している場合には、その通りに遺産を分割します。
③遺産・相続人を調査する
遺言書の確認と伴に、遺産・相続人の調査を行いましょう。
実際の手続きを行うのは、財産を引き継ぐ権利を持った相続人だけが遺産を引き継ぐことができます。
相続人の調査
相続人の調査を行う場合には、亡くなった被相続人の戸籍謄本などを確認しましょう。
相続人が確定しない場合、遺言書がない場合に行う遺産分割協議が行えない可能性があります。
調査には期限などはありませんが、遺言書の確認と伴に早めに発見をしましょう。
遺産の調査
遺産の調査を行うには、様々な手続きが必要になります。
銀行や証券会社(株式)などの金融機関などに問い合わせをしなければならない可能性があります。
ここでは、家や土地などの不動産を調査する方法をご紹介します。
家や土地などを調査する際には、以下の方法があります。
- 法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する
- 固定資産税納税通知書で確認する
- 市役所で確認する
遺言書などが存在しない場合には、上記のような方法で不動産(家・土地)を確認することができます。
しかし、登記事項証明書などを発行する場合には、発行手数料が必要になりますので、注意してください。
④遺産分割協議を行う
相続人・遺産の調査が済んだ後遺言書が見つからなかった場合には、相続人全員で、分割方法を話し合う遺産分割協議を行いましょう。
協議の結果がまとまった場合には、遺産分割協議書を作成しましょう。
協議書の作成は、必ず行わなければならないわけではありません。
しかし家の名義変更手続き(登記手続き)を行う際には、必要になりますのでなるべく作成をしましょう。
ここで分割方法が定まったら、遺産分割協議書を作成し、最後の相続税の申告手続きに進みます。
⑤相続税の申告納付を行う
「誰が・どの遺産(今回の場合は家)を・どのように・どれくらい引き継ぐのか」が確定したら、相続税の計算を行いましょう。
相続税には、基礎控除枠があり以下の計算式で算出した金額を超えない限りは、相続税の申告を行う必要はありません。
3,000万円+600万円✕法定相続人の数 |
相続税には期限がある
相続税の申告納付手続きは、相続開始から10ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。
この期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税などの追徴課税(追加で納付する税金)が発生しますので、税理士などの専門家に相談しましょう。
⑥相続登記(名義変更)を申請する
相続税の申告納付手続きが完了したら、最後に名義変更を行います。
家や土地などの不動産がある場合の名義変更手続きの事を、相続登記といいます。
登記手続きのかんたんな流れは、以下の通りです。
- 登記申請書などの書類を準備する
- 法務局に書類を提出する
- 登記識別情報通知を受領し保管する
家などの登記手続きは、上記のように行います。
ここからは、家や土地などの登記手続きを行う際に必要な書類と入手先をご紹介します。
家などの不動産登記に必要な書類
家などの不動産を引き継いだ際の登記手続きに必要な書類は、遺産の分割方法によって異なります。
- 遺言書
- 遺産分割協議
- 法定相続分
上記のどれかによって登記手続きに必要な書類が異なります。
遺言書で分割を行う場合の登記手続きに必要な書類と入手先は以下の通りです。
遺言書の場合
必要書類 | 入手先 |
---|---|
登記申請書 | 法務局 |
遺言書の写し | 公証役場・法務局・自宅(遺言書によって異なる) |
検認済証(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合のみ) | 家庭裁判所 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの) | 市役所 |
被相続人の住民票除票または附票 | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
相続人の住民票 | 市役所 |
家などの評価額がわかる書類(固定資産税納税通知書など) | 4月に被相続人の家に送付される |
遺言書がある場合には、種類によって検認手続き(存在と内容を確認する)が必要になります。
遺産分割協議の場合
遺産分割協議を行う場合に登記手続きに必要になる書類は以下の通りです。
必要書類 | 入手先 |
---|---|
登記申請書 | 法務局 |
遺産分割協議書の写し | – |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの) | 市役所 |
被相続人の住民票除票または附票 | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
相続人の住民票 | 市役所 |
家などの評価額がわかる書類(固定資産税納税通知書など) | 4月に被相続人の家に送付される |
相続人全員の印鑑証明書 | 市役所 |
遺産分割協議で決まった場合の不動産(家・土地)の登記手続きには、分割方法が記載された遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。
法定相続分の場合
法定相続分で分割し、登記を行う際に必要になる書類は以下の通りです。
必要書類 | 入手先 |
---|---|
登記申請書 | 法務局 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの) | 市役所 |
被相続人の住民票除票または附票 | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
相続人の住民票 | 市役所 |
家などの評価額がわかる書類(固定資産税納税通知書など) | 4月に被相続人の家に送付される |
法定相続分で、分割をし登記手続きを行う際には、遺産分割協議書などは必要ありません。
しかし、法定相続分で分割する場合には、登記などが完了した後に運用・処分で揉めることがありますので注意してください。
家などの不動産を引き継ぐ場合の方法は?
家や土地などの不動産は、分割しにくい財産です。
分割しにくいとは、「公平に分けることができない。」ということです。
現金や証券などは、物理的に均等に分けることができますが、不動産は物理的に分割をして引き継ぐことが難しいです。
家や土地などの不動産を、分割する方法は全部で4つあります。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
- 共有分割
順番にご紹介します。
ここでは、被相続人(夫)・配偶者(妻)A・長男B・長女Cという家族構成を例にご紹介します。
①現物分割
現物分割とは、遺産の形を換えずにそのまま引き継ぐ方法です。
仮に上記の家族構成で、現金・不動産(土地・家)・証券が遺産だとします。
現物分割を活用する場合には、例えば配偶者Aが不動産(土地・家)、長男Bが現金、長女C が証券。
このように分割する方法です。
この場合は、配偶者が家を引き継いでいるため、登記手続きは配偶者が行います。
注意
一見すると、親子ともに遺産を引き継いでいますので問題ないように見えます。
しかし、遺産の評価額によっては長男・長女が親に不満を持つ可能性もあります。
不動産は、分割しにくく、他にも評価額が高くなりやすい財産でもあります。
そのため、現金や証券の評価額によっては、親に対して不満を持ち遺留分(最低限の割合)を請求する可能性もあります。
②換価分割
換価分割とは、被相続人が保有していた遺産を売却しお金に換えてから、相続人全員で公平に分ける分割方法です。
家や土地などの分割しにくい財産を公平に分けたい場合に、活用します。
換価分割を活用する際には、
登記手続きがまず必要
「家などを売却するため登記手続きを行う必要はない」と感じるかもしれませんが、遺産は相続開始から誰が遺産を引き継ぐか決まるまでは、全員の共有財産となっています。
家や土地を含めた不動産以外にも、証券なども売却をする際には、一度名義変更の登記をしてから売却の手続きを行わなければなりません。
一般的に、名義が異なる財産の処分をすることはできません。
そのため、代表相続人が一度登記手続きを行った後に売却の手続きを行います。
買い手次第
証券などは、評価額に応じて換金することができます。
しかし家や土地などは、買い手が見つからない限りは現金に換えることができません。
③代償分割
代償分割とは、特定の相続人が遺産を引き継ぐ代わりに他の相続人の不足分を、支払う分割方法です。
例えば、家や土地を配偶者Aが引き継ぐ代わりに、長男と長女に不足分(代償金)を渡す分割方法です。
代償金は自ら捻出
代償分割を行う際には、代償金を他の相続人に支払う必要があります。
しかしその代償金は、特定の財産を引き継ぐ相続人が支払う必要があります。
不動産(家・土地)の評価方法は?
家や土地を相続時に引き継ぐ際には、評価額を算出しなければなりません。
相続時には、相続税の申告納付手続きを行う必要があります。
その際には、取得した財産の評価額を計算し基礎控除枠を超過した場合には、相続税の申告納付を税務で行う必要があります。
ここでは、家・土地の評価方法をご紹介します。
家(建物)の評価方法
家の評価額を算出する際には、毎年4月ごろに送付される固定資産税納税通知(課税明細書)で確認することができます。
建物の場合は、固定資産税評価額が、そのまま評価額となります。
土地の評価方法
土地の評価額を確認する方法は、2種類あります。
- 路線価方式
- 倍率方式
上記の2つのどれかで評価額を計算します。
路線価方式
路線価方式とは、路線価を活用した土地の評価額の計算方法です。
路線価とは、道路に面している土地の価格で計算することができます。
土地の価格を確認するためには、国税庁のHPで掲載されている路線価図・評価倍率表で確認することができます。
土地の場合は、家とは異なり路線価を出しただけでは評価額を計算したことにはなりません。
路線価方式を活用する際には、以下の計算方法で評価額を算出します。
路線価✕奥行価格補正率✕地積 |
路線価や奥行価格補正率などは、国税庁のHPで確認することができます。
路線価は1㎡あたり1,000円単位で設定されています。
倍率方式
倍率方式とは、路線価方式で計算できない土地の場合に活用します。
固定資産税評価額に倍率をかけて評価額を算出します。
固定資産税評価額✕倍率 |
かける倍率に関しては、国税庁のHPで確認をすることができます。
参照:国税庁 財産評価基準書 路線価・評価倍率表
(https://www.rosenka.nta.go.jp/)
マンションやアパートの場合は注意!
引き継ぐ不動産(家・土地)は、必ず戸建とは限りません。
マンションなどを引き継ぐ可能性もあります。
その場合には、同様に建物と土地を計算します。
家(専有部分)の評価方法
マンションの部屋を引き継ぐ場合には、通常の家屋と同じように固定資産税納税通知書を活用します。
土地(共有部分)の評価方法
土地の場合は、マンションの敷地の評価額に持分割合を計算して評価額を算出します。
敷地全体の評価額は、事前術でご紹介しているように路線価方式を活用します。
そこに、持分割合をかけて計算しますが、持分割合は登記簿謄本などの「敷地権の割合」で確認することができます。
不動産(家・土地)の評価額の計算方法は、かんたんに行えそうですが相続手続きは、評価額の算出だけではありません。
そのため、不動産会社や不動産鑑定士・司法書士などの専門家に相談しましょう。
特に相続登記は、司法書士に相談することで登記手続きの代行を依頼する事ができます。
相続登記でかかる費用
相続時に、不動産(家・土地)を引き継いだ際の手続き・登記手続き・登記で必要所な書類・評価方法などをご紹介しました。
ここからは、登記手続きで必要になる費用をご紹介します。
登記手続きは、分割方法によって書類が異なりますが、登記手続きにかかる費用の項目は変わりません。
- 登録免許税
- 書類の発行費用
基本的に上記の費用が、登記手続きには必要になります。
登録免許税
登録免許税とは、家・土地などの不動産を引き継ぎ、登記手続きを行う際に登記簿に記録を残すために支払う税金のことです。
登記簿に記録をすることで、自身が所有者であることを主張することができます。
登記を行うのは、相続登記だけではなく、不動産の購入・ローンを組む、完済・住所変更などの権利の移動があった場合には、法務局に登記申請を行います。
その際には、登録免許税を計算して納付する必要があります。
税率
登録免許税の税率は、登記手続きを行う理由によって税率が異なります。
今回は、相続での登記申請になるため他の税率のご紹介は、割愛しますが気になる方は、国税庁の登録免許税の税額表をぜひご参照ください。
項目 | 税率 |
---|---|
相続 | 0.4% |
相続登記の場合に、かかる税率は0.4%です。
不動産(家・土地)の評価額に、税率をかけることで、登記手続きに必要な登録免許税の納税額を算出することができます。
書類の発行費用
登記手続きには、様々な書類が必要になります。
登記手続きを行う際に必要になる書類の発行費用をご紹介します。
必要書類 | 費用 |
---|---|
登記申請書 | – |
遺言書 | – |
遺産分割協議書の写し | – |
検認済書 | 1部あたり150円程度 |
被相続人の戸籍謄本 | 1通あたり一律450円 |
被相続人の住民票除票または附票 | 除票:300円程度・附票:1通800円程度 |
相続人の戸籍謄本 | 1通あたり一律450円 |
相続人の住民票 | 1通あたり300円~350円程度 |
家などの評価額がわかる書類(固定資産税納税通知書など) | – |
相続人全員の印鑑証明書 | 1通あたり400円~500円程度 |
あくまで概要
今回ご紹介した、登記手続きに必要な費用はあくまで概要です。
そのため、費用が変わることがある点に注意してください。
また、登記手続きを自身で行う場合には、必要ありませんが、登記手続きの代行を専門家(司法書士)などに依頼する場合は、別途費用が必要になりますのであわせて注意しましょう。
不動産手続きの相談はどこにする?
家を含めた不動産は、分割方法や登記手続きなど通常の手続きに加えて行う必要があります。
不動産のような分割方法・登記などを相談するには、どこに相談したら良いのでしょうか。
しあわせ相続診断で適切な専門家をご紹介
私たち相続ぽるとは、「躓きやすい相続の入口案内」としてみなさまにご利用いただいております。
- 何をしたらいいかわからない
- 相談したいけど知り合いに士業の専門家がいない
このようなことでお悩みではありませんか?
私たち相続ぽるとは、みなさまの状況に応じて必要な専門家(弁護士・司法書士・税理士等)をご紹介しております。
「専門家に相談するか否か」を私たちにご相談ください.
相続登記の代行は司法書士へ相談
不動産などの遺産がある場合には、司法書士に相談するのが一般的です。
司法書士は、相続登記などの手続きを代行してくれます。
また専門家によっては、法律に詳しい司法書士も存在します。
登記を始めとした手続きの代行依頼をする場合には、司法書士に相談しましょう。
登記は自分でも可能ですが、なるべく相談をしましょう
登記手続きは、自分でも行うことが可能です。
しかし、不動産の評価方法や登記に必要な書類の収集などの手続きを行う必要があります。
また、相続は登記手続きだけではないためできる限り専門家に依頼することを検討すると良いでしょう。
記事のまとめ
今回は、家などの不動産を引き継いだ際の相続手続きについてご紹介しました。
不動産などの登記手続きは一見すると簡単ですが、書類の収集や不動産の評価額算出などを行う必要があります。
さらに登記手続きを行う際には、法務局に提出をしますが法務局は、開庁している時間が平日のみです。
そのためオンライン・または平日に法務局に足を運ぶ必要があることに注意しましょう。