車を相続したら必ず名義変更を!
大切な家族が死亡し、様々な手続きを行う中で財産の中には自動車などの車があります。
車も相続財産としてカウントされるため引き継ぐことになった場合には、名義変更手続きを行わなければなりません。
しかしどのような手順で手続きをしたらいいのか意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では自動車を引き継いだ際に必要になる書類・手続きのやり方などをご紹介します。
親が車を持っている方は、手続きが必要になりますのでぜひご参照ください。
相続時に車の名義変更しないとどうなる?
初めに遺産となった車の名義変更を行わなければどのようなトラブルになってしまうのでしょうか。
ここで少しおさらいをしておくと、被相続人が死亡した後に保有していた財産は、一度全て共有財産として扱いますが所有者(持ち主)は亡くなった方のままです。
その後、遺言書や遺産分割協議などを行い共有状態を解消していくのか、遺産分割になります。
名義変更を行わないことで起きてしまうトラブルは以下の通りです。
- 売却ができない
- 廃車手続きができない
売却ができない
前述で、相続時では財産は一度共有状態となるとご紹介しました。
そのため名義変更を行わなければ、共有状態が続いてしまうため売却をして金銭に換えることができません。
廃車手続きができない
査定や評価額を計算してもあまりお金にならない場合や、引取金のほうが売却するよりも高額になる可能性があります。
廃車とは、字づ者の戸籍を抹消することを指します。
そのような場合には、廃車の手続きを行いますが、名義変更手続きを行っていなければ廃車の手続きをすることができません。
預貯金や証券・不動産などと同じように名義変更を行わなければ売却などをすることができません。
そのため預貯金などの名義変更の手続きと並行して書類を準備して、手続きを行うことでスムーズに進めることができます。
必要な書類や手続きの流れに関しては後述詳しく説明しております。
手続きには期限があります
相続で自動車を引き継いだ場合には、所有者の名義変更手続きを行いますが、手続きは、道路運送車両法によって期限が定められています。
新規登録を受けた自動車(以下「登録自動車」という。)について所有者の変更があったときは、新所有者は、その事由があった日から十五日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければならない。 |
手続きを行う場合には、相続開始から15日以内に手続きを行わなければなりませんので注意しましょう。
15日以上経過しても手続きを行わない場合には、罰金刑が課せられますので注意しましょう。
参照:e-Gov法令検索 道路運送車両法 第十三条(移転登録)
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000185)
(2024年6月4日利用)
車を相続した際の名義変更手続きの流れ
実際に車を相続時に引き継いだ際の手続きはどのような流れで行うのでしょうか。
ここからは普通自動車を引き継いだ際に必要になる手続きの流れについてご紹介します。
- 相続発生時の名義人(所有者)を確認する
- 協議等で新しい所有者を決める
- 警察署で車庫証明の申請をする
- 運輸支局で名義変更の手続きを行う
順番に詳しくご紹介します。
ここでは、葬儀・死亡届の提出などの行政上の手続きや相続税の申告納付などの相続全般の手続きではなく車の名義変更に必要な手続きをご紹介しております。
①相続発生時の名義人(所有者)を確認する
まずは、車の名義人(所有者)を確認します。
確認する際には、自動車検査証(車検証)を確認することで、所有者を確認することができます。
車検証は必ず車内で保管することが義務付けられていますので、根気よく探しましょう。
ローンの場合は名義人が異なる場合がある
一括で購入している場合は該当しませんが、ローンを組んで自動車を購入することもあります。
その場合には、所有者はなくなった被相続人ではなく販売会社やディーラーが所有者になっている可能性もあります。
このような場合には、ローンを相続人が代わりに返済をする必要があり、完済しなければ名義変更を行うことができません。
そのため所有者が被相続人ではない場合には、ローンを返済する可能性があることを念頭においておきましょう。
②協議等で新しい所有者を決める
遺言書がない場合の相続では、相続人全員が参加をして「誰が・どの財産を・どの程度引き継ぐのか」を決める話合い(遺産分割協議)を行う必要があります。
遺言書がある場合には、原則その内容に沿って相続財産を分割し所有者の名義変更手続きを行いますが、遺言書が残されていない場合には、共有状態となっている相続財産の引き継ぐ先を決めた後に名義変更手続きを行います。
揉めると変更手続きに影響がでます
遺言書が存在している相続であれば、協議の必要はないのですぐに、相続税の計算・各財産の所有者の名義変更手続きを行うことができます。
しかし、協議の場合は相続人一人一人の遺産分割に対する考え方が異なりますので、分割方法などで揉める可能性があります。
名義変更手続きは、誰がその財産を引き継ぐのかを決めない限りは、変更をすることができません。
名義変更に関しては、変更の期限が決まっている財産もあります。(不動産等)
そのため、早い内に弁護士などに相談する。もしくは調停手続きを行いましょう。
③警察署で車庫証明を申請する
後述でご紹介しますが、名義変更を行う際には「車庫証明」が必要になります。
車庫証明とは、自動車は保管されている場所を証明するための書類です。
新車でも中古でも必要な書類になります。
相続時には、車庫証明が必要になります。
この書類は、警察署に行き申請書を提出しなければ発行をしてもらうことができません。
証明の発行までに必要な手続きは以下の通りです。
登録する場所の管轄である警察署にて、自動車保管場所証明申請書を作成する |
必要な書類を準備して手数料を支払う |
1週間程度で発行されるため、再度管轄の警察署に向かい交付を受ける |
必要な書類に関しては、管轄の警察署の窓口などで聞くと良いでしょう。
④運輸支局(旧陸運局)で名義変更の手続きを行う
車を誰が引き継ぐのかが正式に決まった場合には、運輸支局にて名義変更の手続きを行います。
運輸支局に前述でご紹介した車庫証明などの必要な書類を準備して提出を行います。
具体的に名義変更に必要な書類に関しては、後述でご紹介します。
運輸支局は、平日しか開庁されていないため休日に名義変更の書類を提出することはできません。
そのため、行政書士やディーラーなどに手続きの依頼をすることができます。
運輸支局の窓口でも案内はしてもらえるため、必ず名義変更の手続きを知っておかなければならないわけではありません。
しかし、手続きの流れや必要な書類を知っておくことで手続きをスムーズに行うことができることは確かです。
不安な方は、専門家に相談をしてみると良いでしょう。
ディーラーや行政書士などに代行を依頼することも可能です。
軽自動車等は、手続きが異なる
普通自動車の名義変更手続きは、運輸局や警察署などでの手続きが必要になります。
しかし、軽自動車は普通車と異なり、名義変更手続きを行う場所が異なります。
軽自動車の規格は以下のようになっています。
高さ | 2.0m以下 |
長さ | 3.4m以下 |
幅 | 1.48m以下 |
排気量 | 660cc以下 |
参照:一般社団法人 全国軽自動車協会連合会
(https://www.zenkeijikyo.or.jp/)
(2024年6月20日 利用)
軽自動車を相続時に引き継いだ場合の所有者の名義変更手続きは、軽自動車検査協会に書類を提出します。
名義変更手続き
軽自動車の所有者の名義変更手続きは、手続きする機関が運輸局ではなく、軽自動車検査協会に書類を提出します。
書類も少しだけ簡易的な書類を準備するだけで、所有者の名義変更手続きを行うことができます。
書類
書類は以下の通りです。
書類名 | 入手先 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載があるもの) | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
相続人の住民票または印鑑証明書 | 市役所 |
車検証 | 車内 |
自動車検査証記入申請書 | 軽自動車検査協会のHPまたは窓口 |
軽自動車の場合は、遺産分割協議書や遺言書の写しなどの普通自動車で必要になる書類を提出する必要はありません。
評価方法
自動車を相続手続きを行う際には、名義変更の他に相続税の申告納付をしなければなりません。
相続税の計算には評価方法を知っておかなければなりません。
実際に評価方法を計算する場合にはどのような評価方法で算出するのでしょうか。
自動車は一般財物として扱われ、財産評価基本通達129で定められています。
一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平20課評2-5外改正) |
簡単に解説すると、自動車を評価する場合には以下のように算出します。
- 買実例価額
- 精通者意見価格等
買実例価額
買実例価額とは、中古車買取業者などのサイトにて車種・年式・事故歴・走行距離などを元に算出します。
精通者意見価格
精通者意見価格とは、専門家が査定した金額のことを言います。
車種・年式・事故歴・走行距離などを専門家に伝えることで評価額を査定してもらえます。
買実例価格では評価額を算出することが難しい車(高級車や買取実績のない車種)などの場合に活用します。
その他
買実例価額・精通者意見価格でも算出ができない場合には、新品価額から減価償却相当額を差し引いた金額を評価額にすることがあります。
しかし、上記でご紹介した評価方法で算出できない場合、価値がない・希少性が高いなどの理由により流通がしていない可能性が高いです。
そのような場合には、評価額によっては指摘を受ける可能性がありますので注意しましょう。
相続した車の名義変更に必要な書類
誰が自動車を所有するのかによって、名義変更に必要な書類が変わります。
今回が、それぞれのパターンに合わせて必要になる名義変更手続きの書類をご紹介します。
今回紹介するケースは以下の通りです。
- 複数の相続人の中から相続する場合
- 相続人が1人の場合
- 共有する場合
- 廃車として扱う場合
複数の相続人の中から相続する場合
遺産分割協議などを行うことで、相続人の中から1人が車を相続する場合に必要な名義変更手続きの書類と入手先は以下の通りです。
名義変更に必要な書類 | 書類の入手先 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までが記載されている書類) | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
遺言書または遺産分割協議書の写し | |
相続人全員の印鑑証明書 | 市役所 |
車検証 | 車内 |
車庫証明 | 管轄の警察署 |
移転登録申請書 | 国土交通省HP |
手数料納付書 | 国土交通省HP |
上記の書類が必要になります。
ご紹介した書類以外にも、前の所有者とのつながりを証明するための書類が必要になるか可能性があります。
相続人が1人の場合
相続人が1人しかおらず、名義変更を行う場合には以下のような書類が必要です。
名義変更に必要な書類 | 書類の入手先 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までが記載されている書類) | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
印鑑証明書 | 市役所 |
車検証 | 車内 |
車庫証明 | 管轄の警察署 |
移転登録申請書 | 国土交通省HP |
手数料納付書 | 国土交通省HP |
必要な書類は上記の書類になりますが、他にも実印などを持参する必要があります。
1人でも戸籍謄本などが必要な理由は、本人のみしか相続人がおらず他に存在していないことを証明するために必要になります。
共有する場合
相続時には、共有して財産を所有することがあります。
その場合の名義変更には以下のような書類が必要です。
名義変更に必要な書類 | 書類の入手先 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までが記載されている書類) | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
共同所有者になる相続人の印鑑証明書 | 市役所 |
共同所有することが記載された遺産分割協議書の写し | |
車検証 | 車内(紛失している場合には) |
車庫証明 | 管轄の警察署 |
移転登録申請書 | 国土交通省HP |
手数料納付書 | 国土交通省HP |
上記の書類を準備し、運輸支局に提出します。
共有名義の注意点
所有者を複数にすること事態は問題にはなりません。
しかし所有者が複数人いることによって以下のようなトラブルが起きる可能性があります。
- 売却ができない
- 廃車の手続きができない
- 処分する際の費用で揉める
上記のようなトラブルになる可能性があります。
共同所有として名義変更を行うと、管理・運用・処分を変更した名義人全員で行うことになります。
管理を分散できることはメリットに見えるかもしれませんが、売却したい時に相続人全員の合意が必要であることや、老朽化した際の管理費用について揉めることがある可能性が高くなります。
廃車として扱う場合
廃車として扱う場合でも、一度名義変更手続きを行わなければ廃車の手続きを行うことはできません。
「使わないし処分の手続きをしていいのでは?」と思うかもしれませんが、自動車も所有者が死亡したことによって相続の対象になります。
自動車は一度、相続人共有の財産となるため「遺産」です。
また廃車の手続きを行う際には、名義人(所有者)のみしか手続きを行うことができません。
そのため、以下の書類を提出した後に廃車の手続きを行います。
名義変更に必要な書類 | 書類の入手先 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までが記載されている書類) | 市役所 |
相続人の戸籍謄本 | 市役所 |
遺言書または遺産分割協議書の写し | |
相続人全員の印鑑証明書 | 市役所 |
車検証 | 車内 |
車庫証明 | 管轄の警察署 |
移転登録申請書 | 国土交通省HP |
手数料納付書 | 国土交通省HP |
上記の書類を運輸局に提出を行いまずは、名義変更を行います。
続いて廃車する場合に必要な書類は以下の通りです。
廃車に必要な書類 |
廃車届出書 |
名義変更後の車検証 |
車のナンバープレート |
リサイクル券 |
実印 |
自賠責保険の解約証明 |
所有者の身分証明書 |
これらの書類を運輸局に提出することで、廃車の手続きをすることができます。
相続した車の名義変更に必要な費用
相続によって、車を引き継いだ際の名義変更に必要な書類をご紹介しました。
ここでは名義変更を行う際に必要になる費用についてご紹介します。
引き継いだ後はどうする?
名義変更をした後には、所有者が死亡した被相続人から相続人に変わります。
そのため以下のような選択をすることができます
- 運転を続ける場合
- 売却する場合
運転を続ける場合
1つ目は運転を続ける場合です。
その場合には、自賠責保険や自動車保険の引き継ぎ・変更の手続きが必要です。
家族間でも、自動車の等級などを引き継ぐことができない場合があります。
等級によって加入する保険の保険料などが変わる可能性があります。
そのため必ず損害保険を担当している担当者に連絡をしましょう。
保険の手続きは早めに行う
自賠責保険などの強制的に加入しなければならない保険は、急ぐ必要はありませんが任意保険である自動車保険はそのままにしてはいけません。
無保険の際に事故を起こしてしまっては元も子もありません。
そのため名義変更などの所有者が変更された場合は、早めにFPや保険の担当者に連絡をしましょう。
売却する場合
名義変更を行った後に、売却を検討している方もいらっしゃいます。
そのような場合には、相続が発生したことによって名義変更を行い売却をすることを証明するための書類を準備しなければなりません。
所有者変更後売却に必要な書類 |
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの記載がある書類) |
名義変更後の車検証 |
自動車税納税証明書 |
リサイクル券 |
実印 |
自賠責保険の解約証明 |
上記の書類を準備し、ディーラーもしくは中古車買取業者に提出をして売却をします。
記事のまとめ
今回は被相続人が所有していた車を引き継いだ際の、所有者の名義変更手続きの流れ・書類・評価方法をご紹介しました。
自動車は、名義変更手続きを行わなければ売却や廃車の手続きを行うことができません。
また、名義変更には道路運送車両法によって手続きの期限があります。
そのため、死亡した被相続人の車を引き継いだ場合には早めに手続きを行いましょう。
不安な方は、専門家やディーラーに相談することをおすすめします。
私たち相続ぽるとでは、相続に関する不安を解消するサービスをご提供しております。
みなさまの悩みに合わせて必要に応じて専門家をご紹介しております。
初回は無料相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。