マンションを相続したら、相続登記を行う必要があります
被相続人がマンションを所有している場合、もし相続が発生したら、マンションはどのように相続手続きを行うのか、気になる人も多いのではないでしょうか。
マンションを相続する際には、マンションの名義変更が必要です。名義変更のためには登記という手続きを行わなければなりません。
今回はマンションを相続する人が知っておきたい登記について・活用できる制度・手続きの流れ・必要書類・費用についてご紹介します。
親がマンションを所有している人はぜひご一読ください。
マンション(不動産)を相続した際には登記が必要
マンションを含む不動産を相続する際には、法務局にて不動産の登記をする必要があります。
相続登記とは、「不動産の名義変更手続き」のことです。
相続登記を行わなければ、不動産の名義は亡くなった方のままです。
亡くなった方の名義のままではマンションの売却や賃貸などの取引を行うことができません。
また、すぐにマンションの活用をしないからと長期間登記をせず放置してしまうと、相続人が亡くなった場合にさらにその子が相続人になるため、ネズミ算式に相続人が増えていきます。
相続登記を行うことで、相続人が新しい正式なマンションの所有者として認められます。
相続登記は2024年4月1日から義務化されており、手続きを怠るとペナルティが科されることがあります。
また、また、マンションを相続する際は登記だけでなく相続税の申告納付手続きも行う必要があります。
不動産は建物と土地の2つの評価額を算出しなければ、相続税の申告納付手続きなどを行うことができません。
登記手続きについてご紹介する前に、マンションなどの不動産の評価額の算出方法をご紹介します。
- 建物(戸室)の評価方法
- 土地の評価方法
建物(戸室)の評価方法
マンションの建物部分の固定資産税評価額は、市町村から毎年5月頃に送られてくる「固定資産税の課税明細書」で確認できます。
固定資産税の課税明細書が手元にない場合は、市区町村役場で評価証明書を取得しましょう。
土地の評価方法
土地の評価方法は、主に路線価方式と倍率方式の2つがあります。
地域によって路線価方式を採用するか倍率方式を採用するかは異なり、国税庁のサイトで確認できます。
参考:国税庁 路線価図・評価倍率表
(https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm)
(2024年6月28日 利用)
路線価方式
路線価とは「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」のことです。
この路線価に基づいて土地を評価する方法が路線価方式です。
路線価方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。
路線価 × 各種補正率 × 土地面積 |
倍率方式
倍率方式は路線価方式を使わない土地の評価をする際に用いられます。
計算式は次のようになります。
路線価・倍率は国税庁のサイトで確認できます。
固定資産税評価額 × 倍率 |
こちらも正確な固定資産税評価額は「固定資産税の課税証明書」で確認できますが、
土地部分はマンションを所有している人全員で共有しているため、固定資産評価証明書には土地全体の固定資産評価額が記載されていることが多いです。
この場合、土地の固定資産評価額に登記事項証明書に記載されている敷地権割合を掛けることで被相続人が所有していた土地の評価額を出すことができます。
ただし、自治体によってはあらかじめ当人が所有していた土地の評価額を記載している場合もあります。
マンションを相続で引き継ぐ際に活用できる制度
マンションを相続する際には、相続税の負担を軽減するためにいくつかの制度を活用することができます。
この制度を上手に利用することで、相続税額を大幅に減らすことが可能です。
特に、マンションを自宅や賃貸物件として活用する場合に適用される制度が重要です。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、被相続人が生前に住んでいた宅地や貸付していた宅地が要件を満たしている場合に適用される特例です。
小規模宅地の特例はマンションの相続でも活用することが可能で、利用すると相続税の評価額を最大80%減額することができます。
使える面積の限度と減額割合は以下の通りです。
利用区分 | 限度面積 | 減額割合 |
居住用 | 330㎡ | 80% |
貸付用 | 200㎡ | 50% |
この特例を受けるためには、相続後も一定期間その宅地を使用することなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
具体的な要件については、専門家に相談することをおすすめします。
この特例を活用することで、相続税の大幅な節約が可能になり、経済的な負担を軽減することができます。
名義変更(登記)手続きの流れと必要書類
相続によりマンションの名義変更(登記)を行うためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
本来はマンションの名義変更の前に遺言書の確認・相続人の洗い出しなどが必要になりますが、今回は相続手続きの中でも登記に焦点を当ててご紹介します。
相続手続き全体としての流れについては、相続に詳しい専門家にご相談ください。
以下に、登記手続きの流れと必要書類について詳しく説明します。
- 相続税の申告納付を行う
- 必要書類を準備する
- 法務局に書類を提出する
- 登記識別情報通知を受領し保管する
- 売却・居住・使用用途を変更する
2024年4月1日から登記が義務化されています!
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
相続により不動産を取得した場合、相続開始を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。
義務化により、登記を怠ると10万円以下の過料が科されることがありますので、早めに手続きを進めましょう。
登記できない場合は相続人申告登記を行いましょう
相続人の中に連絡が取れない人がいる、遺産分割協議がまとまらないなど、3年以内に相続登記ができない場合には、法務局にて「相続人申告登記の申出」を行いましょう。
申出は相続人が単独で行うことができ、申出を行った人は義務を履行したという扱いになります。
ただし申出をしても、登記が終わっていなければ、マンションの売却などを行うことができないため注意が必要です。
①相続税の申告納付を行う
ある程度大きい相続財産がある場合、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告を行わなければなりません。
ただし相続財産が相続税の基礎控除額[3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)]を超えなければ、相続税の申告は不要です。
例えば配偶者1人・子ども1人が相続人である場合、[3,000万円 +(600万円 × 2)] = 4,500万円。つまり相続財産が4,500万円までであれば、相続税の申告が不要になります。
相続財産が基礎控除額を超え、相続税の申告が必要な場合は、相続税の納付も10ヶ月以内に完了する必要があります。
申告書は税務署に提出し、納付は銀行等の金融機関で行います。
②必要書類を準備する
登記手続きに必要な書類を準備します。
戸建ての場合、建物・土地は別で申請が必要になりますが、マンションは基本的に建物と土地(敷地権)が一体化した「敷地権付区分建物」のため、建物・土地それぞれ別で申請する必要がありません。
必要な書類は主に以下の通りです。
被相続人の戸籍謄本 |
被相続人の住民票の除票 |
相続人全員の戸籍謄本 |
マンションを相続する人の住民票 |
相続人全員の印鑑証明書 |
固定資産評価証明書 |
登記申請書 |
具体的には後述しますが、必要書類は遺産分割の方法によって変わります。
③法務局に書類を提出する
必要書類の準備が整ったら、法務局に登記に必要な書類を提出し名義変更を行います。
登記申請書に必要な情報を記入し、他の書類と一緒に提出します。
提出方法としては以下の3つがあります。
- 法務局の窓口に直接出向いて提出
- 法務局に書類を郵送して提出
- オンライン申請
法務局の窓口は平日17時30分までですが、オンライン申請は平日21時まで可能です。
提出の際には、登録免許税も支払う必要があります。
登録免許税は、マンションの固定資産評価額に0.4%を掛けた金額です。
④登記識別情報通知を受領し保管する
マンションの登記が完了すると、法務局から「登記識別情報通知」が送られてきます。
この通知はマンションの所有者であることを証明する重要な書類で、登記識別情報通知がなければマンションの売却やマンションを担保にお金を借りることができません。
登記識別情報通知は再発行されませんので、大事に保管しましょう。
⑤売却・居住・使用用途を変更する
登記が完了したら、相続したマンションをどう利用するかを決めます。
選択肢としては、主に売却・居住・賃貸の3つが挙げられます。
売却
マンションを売却する場合は、不動産会社に相談して手続きを進めます。築年数が古く老朽化が進んでいる場合、リフォームをしてから売却する場合もありますが、リフォーム費用がかかります。
居住
相続人が居住する場合は、相続手続きが済んでいればすれば、あとは引っ越すだけで居住することができます。
賃貸
賃貸物件として人に貸し出すことも可能ですが、この場合もマンションの老朽化が進んでいる場合はリフォームが必要になる可能性があります。
必要になる書類
マンションの登記に必要な書類は、遺産の分割方法によって変わります。
遺産分割方法には以下の3種類あります。
- 遺言書の通りに遺産分割した場合
- 遺産分割協議により遺産分割を行った場合
- 法定相続分の通りに遺産分割を行った場合
共通して必要となる書類は以下の通りです。
書類 | 入手先 |
登記申請書 | 市区町村役場 |
マンションの固定資産評価証明書 | 市区町村から自宅に送付 |
被相続人の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
被相続人の住民票の除票 | 市区町村役場 |
①遺言書の通りに遺産分割した場合
遺言書による相続登記の場合、追加で以下の書類が必要になります。
書類 | 入手先 |
遺言書(検認済のもの) | – |
マンションを相続する人の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
マンションを相続する人の住民票 | 市区町村役場 |
②遺産分割協議により遺産分割した場合
遺産分割協議による相続登記の場合、追加で以下の書類が必要になります。
書類 | 入手先 |
遺産分割協議書 | 相続人が作成 |
相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
マンションを相続する人の住民票 | 市区町村役場 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村役場 |
③法定相続分の通りに遺産分割した場合
法定相続分による相続登記の場合、追加で以下の書類が必要になります。
書類 | 入手先 |
相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
相続人全員の住民票 | 市区町村役場 |
「そもそもどのようにして遺産分割すればいいの?」という方は、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。
マンションの相続手続きでかかる費用
マンションを相続する際には、さまざまな費用がかかります。
これらの費用を事前に把握しておくことで、マンションの相続手続きをスムーズに進めることができます。
マンションを相続する際に主にかかる費用をご紹介します。
- 書類の発行費用
- 登録免許税
- 専門家に依頼する場合の報酬費用
書類の発行費用
相続手続きには、多くの書類が必要となり、それらの書類を発行するための費用がかかります。
書類の発行費用は以下の通りです。
書類 | 費用 |
戸籍謄本 | 400~500円 |
住民票の除票 | 200~400円 |
印鑑証明書 | 200~400円 |
固定資産評価証明書 | 300円 |
登記事項証明書 | 600円(オンライン申請は480円) |
登録免許税
相続により不動産の名義を変更する際には、登録免許税がかかります。
登録免許税は固定資産評価額の0.4%かかります。
マンションの固定資産評価額は、固定資産評価証明書に記載されています。
この登録免許税は、登記手続きを行う際に法務局に納付する必要があります。
また特例により、評価額が100万円以下の土地は登録免許税が非課税になり、建物の評価額 × 0.4%のみ登録免許税になります。
この特例は土地部分のみ適用され、建物の評価額が100万円以下であったとしても適用はされないため注意が必要です。
専門家に依頼する場合の報酬費用
相続手続きを専門家に依頼する場合には、報酬費用が発生します。
相続登記に強い専門家としては、主に司法書士や弁護士が挙げられます。
必要書類の収集から依頼するか、書類は自分で用意して手続き等を依頼するのかなど、依頼する内容によって費用は異なります。
また依頼する事務所によっても報酬が変わりますので、可能な場合は見積もりを取ってもらうことをおすすめします。
マンションの相続はどこに相談すればいいの?
マンションの相続手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。
相続に関する相談先を選ぶことで、スムーズかつ適切な手続きを進めることができます。
マンションの相続にお悩みの方におすすめの相談先を紹介します。
それぞれの相談先の特徴を理解し、自分に合ったところに相談しましょう。
- 相続ぽると
- 司法書士
相続ぽると
相続について悩みを持つ人は多いですが、財産が関わるデリケートな問題のため、家族といった他人に相談をするのが難しいです。
しかし相続に詳しい人に相談することで、手続きがスムーズになったり、納税額が大幅に下がったりといった効果を得ることができます。
相続ぽるとは相続の入口として皆さんにご利用いただいております。
- マンションの相続について悩んでいるけど誰に相談すればいいかわからない。
- そもそも相続が起きたら何をしないといけないのかわからない。
このような悩みを持ち、困っている方に寄り添い、皆さんの状況を整理した上で必要であれば最適な専門家をご紹介します。
「専門家に相談したいけどハードルが高い」そんな方はぜひ相続ぽるとまでご相談ください。
司法書士
司法書士は、不動産の相続登記や遺産分割協議書の作成など、相続手続き全般の専門家です。
相続に関する法的な手続きや書類作成をサポートしてくれるため、煩雑な手続きを確実に進めることができます。
また相続手続きの流れでわからないことがあれば、司法書士に相談することで適切なアドバイスとサポートを受けることができます。
記事のまとめ
この記事では、マンションを相続する際に必要な手続きや書類・費用についてご紹介しました。
あらかじめマンションの相続の流れについて知っておくことで、もしマンションを相続することになった場合にもスムーズに対応できるでしょう。
「結局、自分の場合はどうしたらいいんだろう」とお悩みの方は専門家のサポートを得ることをおすすめします。