内縁の妻(夫)は相続権がありませんが、財産を残す方法はあります!
婚姻届は出していませんが、夫婦のように生活している関係の2人のことを内縁関係といいます。
今回は、内縁の夫(妻)が亡くなった際、内縁の妻(夫)に相続権があるか。内縁の夫と妻の間にいる子どもに相続権があるのかご紹介します。
また内縁の妻(夫)に財産を渡す方法6つと注意点についてもご紹介します。
誰かと内縁関係がある方はぜひご一読ください。
内縁の妻(夫)に相続権はない
内縁の妻(夫)に相続権はありません。
内縁関係は婚姻届を出していない2人のことであり、法律上の夫婦ではありません。
民法第八百九十条で「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。」と定められています。
配偶者は法律上の夫婦でいう妻から見た夫、夫から見た妻のことを指すため、法律上の夫婦ではない内縁の妻(夫)に相続権はないということになります。
参照:e-Gov法令検索 民法第八百九十条(配偶者の相続権)
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(2024/05/24 利用)
婚姻届を出していなければ、長い間共に生活していたとしても、内縁の妻(夫)は夫の遺産を相続する権利を持ちません。
内縁の妻との子どもは認知すれば相続できる
内縁の妻(夫)との子どもも相続権はありません。
しかし父親である内縁の夫が子どもの認知をすることで、子どもは父の相続人になることができます。
子どもの認知とは、父親が血のつながっている子どもに対して、自分の子どもだと認めることをいいます。
父親が子どもを認知するには生前に認知届を役場に提出するか、遺言書に子どもを認知すると記載する必要があります。
認知された子どもと実子の相続分は同じ
法定相続分とは、法律で決められている、遺産分割において相続人が財産を引き継ぐ割合のことです。
もし内縁の夫に実子と認知した子がいた場合、法定相続分は2人とも同じです。
例えば以下のような家族がいた場合を考えてみましょう。
- 夫
- 妻
- 嫡出子(夫と妻の間に生まれた子ども、実子)
- 内縁の妻
- 非嫡出子(夫と内縁の妻の間に生まれた子ども)
上記のような場合の、法定相続分の割合は以下のようになります。
認知する前 | 認知した後 | |
妻 | 2分の1 | 2分の1 |
夫と妻の間の子ども(実子) | 2分の1 | 4分の1 |
夫と内縁の妻の間の子ども | なし | 4分の1 |
内縁の妻 | なし | なし |
子どもの認知を行うことで、非嫡出子も実子として扱うため相続権を持つことになります。
相続人が増減すると相続分も変わる
相続権が新たに発生する場合は、相続分が変わります。
配偶者 | 2分の1 |
実子 | 2分の1を人数で割る |
認知をしない場合には、非嫡出子に相続権はないため嫡出子が2分の1を引き継ぎますが、認知を行うことで、嫡出子と同じ相続分を受取ることになります。
民法では、子どもが複数人いる場合には公平に分けることになっています。
そのため2分の1✕2分の1を計算した4分の1が、子ども1人あたりの法定相続分となります。
もし夫の遺産が1,000万円あるとすれば、実子・認知された子はそれぞれ1/4ずつ、250万円ずつ相続することになります。
このように認知された子どもだからといって、実子と相続分が異なることはありません。
しかし、内縁の妻には法定相続分は存在しないため注意しましょう。
内縁関係である妻(夫)が財産を受け取れる方法6つと注意点
それでは、内縁の夫(妻)が相続権のない内縁の妻(夫)に財産を渡す6つの方法をご紹介します。
- 特別縁故者と認めてもらう
- 遺言書で遺贈する
- 夫(妻)が借りていた家を引き継ぐ
- 生前贈与を行う
- 生命保険を活用する
- 遺族年金を受け取る
①特別縁故者と認めてもらう
特別縁故者になることで、内縁の妻(夫)でも財産をもらうことができます。
特別縁故者とは、相続人ではないものの、被相続人と特別な関係があったために財産を受け取る権利をもつ人です。
法定相続人が見つからなかった場合のみ特別縁故者が財産をもらうことができます。
特別縁故者になるには、被相続人の最終住所地にある家庭裁判所で「特別縁故者に対する財産分与の申し立て」という手続きを行う必要があります。
申し立てには以下の費用・書類が必要です。
申し立てに必要な費用
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手
- 住民票・戸籍附票の発行手数料(各200~400円前後)
収入印紙とは、契約書などの金銭のやり取りが発生する文書に課される印紙税を納付するための税金のことです。
連絡用の郵便切手は、裁判所が当事者に郵便を送る際の郵便代を申し立てする人が負担するためのものです。
連絡用の郵便切手は申し立てをする裁判所によって異なるため、詳しく費用を知りたい方は、各裁判所のHPを参照してください。
申し立てに必要な書類
特別縁故者を申し立てる際に必要になる書類は以下の通りです。
書類 | 用途 | 入手先 |
申立書 | 特別縁故者を申し立てるための書類 | 裁判所のHP |
住民票または戸籍附票 | 特別縁故者の住所を確認する書類 | 市役所 |
参照:裁判所 特別縁故者に対する相続財産分与
(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_16/index.html)
(2024/05/24 利用)
②遺言書で遺贈する
前述でご紹介しましたが、婚姻関係のない夫婦から生まれた子どもは認知をすることで相続権を得ることができますが、内縁の妻(夫)には相続権はありません。
そのような場合には、第三者へ遺産を渡すことのできる遺贈を活用することで、内縁の妻(夫)に遺産を渡すことができます。
内縁の夫(妻)が遺言書で「内縁の妻(夫)に財産を遺贈する」と書くことで、夫が亡くなったあと内縁の妻(夫)に財産を渡すことができます。
相続人の遺留分に注意する
遺言書を作成する際は、他の相続人の遺留分を侵害しないよう注意しましょう。
遺留分とは最低限の財産を相続で受け取れる権利のことで、法定相続人である配偶者・子ども・親が持っています。
例えば内縁の夫に妻と子どもがいて、「内縁の妻に全財産を遺贈する」と遺言書に書いた場合、全財産を受け取った内縁の妻に対して妻と子どもは遺留分の不足分を請求することができます。
もし請求になるとトラブルになる可能性が高いので、内縁の妻に財産を遺贈する際には相続人の遺留分に配慮して遺言書を作成しましょう。
③夫(妻)が借りていた家を引き継ぐ
内縁の夫が亡くなったあと、内縁の夫が借りていた家やアパートがあれば、内縁の夫が持つ賃借権(賃料を支払って借りた家やアパートを使用する権利)を引き継いだとみなされ、内縁の妻は引き続き住むことができます。
相続人がいる場合でも賃借権が認められたという判例もありますが、どんな場合でも認められるわけではありません。
例えば公営住宅(地方公共団体が低所得者向けに運営している住宅)に継続して住むには、決められた収入の基準を下回っているなどの条件があり、これらの条件を満たさない場合、内縁の妻は継続して住めないことがあります。
もし賃借権を内縁の妻に譲りたいのであれば、遺言書に「私は、下記建物の賃借権を内縁の妻である○○○○に遺贈する。」というように記載しておきましょう。
ただし遺言書は作成の方法によっては無効になってしまう可能性があるため、相続の専門家と相談しながら作成することをおすすめします。
④生前贈与を行う
元気なうちに財産を他者に渡すことを生前贈与といいます。
例えば内縁の夫が内縁の妻に無償で財産を渡し、内縁の妻がそれに同意することで贈与契約が成立します。
年間110万円まで非課税で行える
生前贈与を行うと贈与税がかかりますが、年間110万円までの贈与であれば贈与税が課税されません。
もし多くの財産を非課税で内縁の妻(夫)に渡したいのであれば、年間110万円の枠を活用して長期的に取り組む必要があります。
年間110万円を超えて贈与すると、超えた部分に対して贈与税がかかります。
税率は以下になります。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与契約書を作成しておく
贈与契約は口頭でも成立しますが、のちに言った・言わないのトラブルになる可能性が高いです。
これを防ぐため、財産を渡す際に贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
贈与契約書は何を贈与したのかを記載し、財産を渡した人・受け取った人の署名と印鑑を押した書類です。
贈与契約書を作成することで確実に贈与が行われたという証拠になります。
⑤生命保険を活用する
被保険者が内縁の夫、保険料の支払いも内縁の夫の場合、生命保険の保険金受取人を内縁関係のある妻にすることで、夫が亡くなったあと、内縁の妻がまとまったお金を受け取ることができます。
生命保険の非課税枠は使えないため注意
相続人が保険金を受け取った場合、保険金は相続税の課税対象になりますが、非課税枠があります。
[500万円×相続人の数]までは相続税が非課税になります。
ただし前述でお伝えしたように内縁の妻(夫)は相続人ではないので、内縁の妻(夫)が保険金を受け取った場合には上記の非課税枠は使用できません。
⑥遺族年金を受け取る
内縁の妻(夫)でも、事実上の婚姻関係であることを証明できれば遺族年金(遺族厚生年金)を受け取ることができます。
内縁関係を証明するために必要な準備については後述で詳しくご紹介します。
内縁の妻が財産を受け取る前に知っておきたい注意点
内縁の夫婦が互いの財産を受け取る方法についてご紹介しました。
それでは内縁の妻(夫)が財産を受け取る前に知っておきたい注意点を3つご紹介します。
- 内縁の妻(夫)であることを証明できるよう準備しておく
- 内縁の妻(夫)は税法上の優遇措置を受けられない
- 内縁の夫の意思能力の有無で争いになる可能性がある
①内縁の妻(夫)であることを証明できるよう準備しておく
上に挙げた内縁の妻(夫)が財産を受け取る方法6つのうち生前贈与以外の全ては、内縁関係の夫妻が事実上の婚姻関係であることを証明できなければ遺産を受け取れない可能性が高いです。
内縁関係であることを証明するための書類を準備しておきましょう。
一番手軽に準備できるのは住民票です。役所に行けば、内縁の妻・夫と事実婚の関係だということを住民票の続柄に書いてもらうことができます。
②内縁の妻(夫)は税法上の優遇措置を受けられない
婚姻届を出している夫婦であれば相続税の減額など、相続で税法上の優遇措置を受けることができます。
しかし内縁の妻(夫)は法律上の夫婦ではないため、税法上の優遇措置を受けることができません。
内縁関係で適用できない相続税の優遇措置は以下の通りです。
配偶者控除 | 配偶者は最低1億6000万円まで相続税が非課税になる |
相続税の2割加算 | 被相続人の配偶者・子ども・親以外の相続税は2割加算される(内縁の夫婦は2割加算の対象になる) |
障害者控除 | 相続人が一般障害者の場合(85歳 – 相続開始時の年齢) × 10万円、特別障害者の場合(85歳 – 相続開始時の年齢) × 20万円相続税が控除される |
小規模宅地等の特例 | 相続税の計算において一定の条件を満たした場合、被相続人が所有していた宅地等の評価額を最大80%減額できる(内縁の夫婦は対象外) |
③内縁の夫の意思能力の有無で争いになる可能性がある
内縁の妻(夫)が財産を受け取る方法のうち生前贈与や生命保険の契約、遺言書による遺贈などは意思能力がなければ無効になる可能性があります。
内縁の夫(妻)が高齢だと、認知症などで意思能力が低下したとみなされる場合があります。
認知症の疑いがあれば、内縁の妻(夫)に財産を残す契約・遺言が有効なのかどうか、意思能力があるのか・ないのかを巡って争いになる可能性があります。
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まとめ
内縁関係の相続について、内縁の妻(夫)に相続権はないものの、他の方法で財産を渡すことができることをご紹介しました。
内縁の妻(夫)に特別縁故者になってもらうこともできますが、確実に財産を残したいのであれば、元気なうちから対策が必要です。
内縁の妻のために財産を残したい方は、相続の専門家のサポートを借りることも選択肢の一つといえるでしょう。