マンション相続で税金がかからない方法はあるの?
大切なご家族が亡くなった場合には、亡くなった方の遺産を引き継ぎます。
その中にマンションなどの不動産が含まれているケースも少なくありません。
最近では「マンションを活用した税金対策が行えなくなった」など、新聞やニュースなどで話に上がることもあります。
税金がかからないようにするためには、いくつかの方法がありますが、全員が全員活用できるわけではありません。
本記事では、マンションを相続時に引き継ぐ場合に、税金がかからないようにするための対策方法を中心に、マンションの評価額の計算方法・実際の手続き方法等、マンション相続に関わる基本的な要素を解説します。
マンションの相続税がかからないための対策方法
マンションの相続税がかからないようにするためには、全部で4つ方法があります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 小規模宅地等の特例
一般的には上記3つが税金がかからないために活用できる方法です。
順番に詳しくご紹介します。
対策①基礎控除
基礎控除とは、ここでは相続税の基礎控除を指します。
相続税は、基礎控除と呼ばれる一定の金額を超過してしまった場合には。税金がかかりますが基礎控除以内で、財産の総額が収まる場合には税金はかからないです。
相続税の基礎控除枠は以下の計算式で算出することができます。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
ここでの法定相続人とは、法律で決められた亡くなった人の財産を引き継ぐ権利を持っている人のことを指します。
法定相続人の例
例えば、夫A・妻B・子ども(C・D・E)3人という家庭をイメージしてみましょう。
夫Aが無くなり、夫Aの相続が開始された際の相続人は妻B・子ども(C・D・E)の合計4名です。
この場合の基礎控除枠は以下のような金額になります。
3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円 |
つまり、相続財産の評価額を算出合計した相続財産の金額が5,400万円以内であれば相続税がかからないので、申告する必要がありません。
注意 相続財産の合計額に対する基礎控除であること
注意しなければならないのは、ご紹介した基礎控除はすべての財産の合計学に対する控除枠ということです。
マンションだけの金額ではなく「現金(預貯金)・証券・生命保険・不動産」などすべての被相続人が保有していた財産の合計金額に対する基礎控除ができようされるため、遺産1つ1つに基礎控除が設けられているわけではない点に注意してください。
対策②配偶者控除
配偶者控除とは、遺産を引き継ぐのが配偶者の場合に、配偶者が活用できるもう一つの控除枠のことです。
この控除枠は、「遺産の総額が1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか大きい方の金額までは、配偶者が相続した場合に、配偶者に課税される税金がかからないようにすることができます。
つまり、マンションだけではなく、マンション以外の財産を配偶者が引き継いだ場合でも、活用することができます。
マンションだけに限らず不動産(建物や土地)は評価額が高額になりやすいですが、配偶者控除は誰にでも活用することができるわけではなく、配偶者の中にも細かい条件があります。
- 民法上の配偶者であること(内縁関係は該当しません)
- 被相続人と生計をともにしていること
- 1年間の所得の合計金額が48万円以下であること
基本的には、上記のような要件を満たさなければ控除を活用することができません。
特に内縁関係(法律上結婚していない男女)の場合には、何年も同棲しているなどの理由では、活用することができませんの注意してください。
対策③小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、不動産(マンション・戸建)の土地の評価を、一定の要件を満たした場合に減額することができる特例です。
この特例を活用することで、仮にマンションを引き継ぐ際でも税金をかからないようにすることはできませんが、減額することができます。
ただし、適用できるのはマンションの戸室ではなく、所有している土地です。
「マンションの場合は共有じゃないの?」と感じるかもしれませんが、マンションは戸室+共有持分としての土地も含まれています。
また、建物に関する評価額を減額する制度ではなく、あくまでもマンションの持分割合の土地の評価額の減額である点に注意しましょう。
税金がかからないようにする制度ではない
この制度は、マンションや戸建などは、大きく評価額が高額になりやすい財産に対して、減額をする特例です。
そのため、「必ず税金がかからない」という特例ではないので注意してください。
税金がかからないではなく、評価額を下げて計算を行った結果、相続税がかからないという状況はありますが、必ずしも税金がかからないという特例ではありません。
相続税がかからない状況でも申告が必要な場合がある
相続税がなるべくかからないようにするための控除や特例・制度などをご紹介しました。
ご紹介した控除や特例を活用することで、相続税が0円。
つまり税金がかからない状況になることがあります。
一般的に、相続税がかからない場合には、相続税の申告書を提出する必要はありません。
しかし、特例などを活用して相続税が0円になった場合には相続税の申告書を管轄の税務署に提出する必要があります。
理由は以下の通りです。
特例の確認 | 特例が正しく適用されているかを税務署が確認する必要があるため |
控除や特例の適用に関するルール | 特定の控除や特例を受けるためには申告が必須となります。申告を通じてこれらの特例の適用が確認されます。 |
そのため、特例や控除を活用した結果、相続税がかからない状況になった場合でも相続税の申告書を作成し、提出を行いましょう
マンションの評価額の計算方法
相続税がかからないための対策や制度をご紹介しました。
ここからは、実際にマンションなどの不動産の評価額を算出する際の計算方法をご紹介します。
マンションなどの評価額は、以下の計算式で評価額を算出します。
専有部分(建物)の評価額+共有部分(土地)の評価額=マンションの評価額 |
また、マンションの評価額の算出方法は、戸建不動産の評価額の算出方法と変わりません。
専有面積(建物)
専有部分とは、自身が所有している部分のことを指し、マンションでは購入した建物部分になります。
この専有部分については、固定資産税の評価額がそのままマンションの建物の評価額になります。
毎年送付されてくる、固定資産税の納税通知書を確認することで確定します。
納税通知書がない場合は?
何かしらの理由で納税通所がない場合があります。
そのような場合には、焦らずに以下の対応をしてみましょう。
- 固定資産評価証明書を発行する
- 不動産鑑定士に依頼をして査定をしてもらう
- 過去の納税通知書を参考にする
自分自身で価格などを調べて評価額を計算する方法もありますが、一般的には固定資産評価証明書や不動産鑑定士に依頼をすることをおすすめします。
大きな遺産の評価額の計算を誤ると、後の相続税の計算にも影響が出るため、専門家へ依頼をしましょう。
共有面積(土地)
マンションの共有部分とは、土地のことです。
土地の計算方法は、2種類あり路線価方式と倍率方式があります。
路線価方式
路線価方式とは、路線価と呼ばれる公道につけられた価格のことで1,000円単位で掲載されています。
相続税の評価額は、その時の遺産の価格を反映しなければなりません。
しかし、すべての土地を時価で計算するのは労力と時間がかかります。
そこでマンションが隣接する公道の価格に面積を計算することで手間を省くことができます。
実際に路線価方式で計算する場合には、以下のような計算式になります。
路線価×奥行価格補正率×地積=マンション全体の評価額 |
このままだと、マンション全体の評価額で計算をすることになってしまうために、路線価で計算したマンション全体の評価額に持分割合を計算することで、マンションの土地の評価額を算出することができます。
路線価は国税庁のHP。持分割合は登記簿謄本で確認することができます。
倍率方式
倍率方式とは、路線価方式では評価額を算出できない場合に活用する計算方法です。
路線価が記載されていない土地などが該当します。
この場合には、固定資産税評価額に一定の倍率を計算して算出します。
固定資産税評価額×倍率=マンション全体の評価額 |
これも、路線価と同様に、マンション全体の評価額に、持分割合を計算して評価額を算出します。
倍率などを詳しく知りたい場合は、国税庁のサイトをご参照ください。
参照:国税庁 財産評価基準書 路線価・評価倍率表
(https://www.rosenka.nta.go.jp/)
手続きの流れ
実際にマンションを所有している被相続人がおり、マンションを引き継ぎを行いたい場合にはどのような手続きが必要になるのでしょうか。
ここでは、マンションを引き継ぐ際の具体的な手続きをご紹介します。
1.遺言書の確認
マンションの相続に限らず、相続が開始された場合には遺言書を確認しましょう。
仮に遺言書が残されており、有効とされた場合には、原則遺言書に書かれているような遺産分割を行います。
遺言書には3つの種類があり、種類によって保管する場所が異なります。
公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成者 | 公証人 | 本人 | 本人 |
保管場所 | 公証役場 | 本人または法務局 | 本人 |
また、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、本人が保管をすることがあります。
そのため、窃盗・偽造・変造などを行われるリスクが高くなります。
窃盗や内容の偽造・変造が起きてしまうと、被相続人が行いたい遺産の分割を行うことが難しくなります。
そこで検認手続きと呼ばれる家庭裁判所の手続きが必要になります。
検認前に誤って開けてしまった場合でも無効になることは、ありませんが開封してしまった場合には、過料が課されますので、公正証書以外の遺言書を発見した場合には必ず検認手続を行いましょう。
2.相続人・遺産の確定
遺言書の確認と同時に相続人・遺産の確認を行いましょう。
遺言書が存在していない場合でも、相続人・遺産の確認は必ず必要になります。
さらに、相続人が確定しなければ相続税がかからない基礎控除を計算することができません。
遺産の確認を行わない場合は、相続税がかかる・かからないの計算をすることができません。
相続人と遺産の確認方法は以下のとおりです。
相続人
相続人を確認しなければ、誰が遺産を引き継ぐ権利を保有しているのかわからなくなります。
前述でもご紹介しておりますが、相続人を確定しなければ税金がかかる・かからないの基本的な基準である基礎控除の計算ができません。
基礎控除は、法定相続人で計算するため必ず確認をしましょう。
相続人を確認するためには、以下の方法を検討しましょう。
- 被相続人の出生から死亡までの記録がされた戸籍謄本
- 住民票の除票
上記を確認することで、配偶者や子どもなども知ることができます。
遺産
遺産は、被相続人が保有していた財産すべてを指します。
すべての財産とは、今回のようなマンション(不動産)や預貯金・証券などの他にも、ローンや借金などの返済義務のある財産も含まれます。
中には、相続人に内緒でマンションを経営していたなどの場合も存在します。
さらに、別荘のマンションなども被相続人が所有権を持っていた場合には、マンションも相続財産となります。
財産を確認するためには、被相続人が生前に財産目録などを作成しておくと、スムーズに進みます。
3.遺産分割協議
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産の分割方法を決める遺産分割協議を行います。
マンションを含めてすべての遺産の分割先を決めます。
遺産分割協議は、相続人だけで決めるため分割方法に関して揉めることが多いです。
特に、マンションや戸建などの居住していた不動産などに関しては、評価額が大きいことや動かすことができない。などの理由によって難航する可能背があります。
相続人同士で揉めそうな場合には、弁護士などの専門家を通して話し合いを行いましょう。
弁護士に支払う費用について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご参照ください。
弁護士に遺産分割協議を依頼する場合の費用はいくら?
4.相続税の計算・申告納付手続き
遺産分割協議などを得て、財産の引継ぎ先が決まった後は相続税の申告手続きを行います。
マンションを含めた財産の金額が前述でご紹介した基礎控除を超えている場合には、相続税の申告を行います。
この時に、配偶者控除や小規模宅地等の特例を活用します。
先に名義変更を行うのはあくまで理想
様々なサイトで「登記手続きを行ってから相続税の計算をする」このような流れが組まれていますが、実務を経験している専門家からすれば「理想はそうだけれども、実際は税金の計算の方を行う」と言われております。
5.マンションの登記手続き
相続税の申告が完了した後に、マンションの登記手続きを行います。
登記手続きとは、不動産における名義変更であり、マンションの新しい所有者となる人が行う手続きです。
この手続きは、マンションが建設されている地域を管轄している法務局で行います。
マンションや戸建などの相続登記の費用について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご参照ください。
相続時の手続きは、マンションだけではなく他の財産の手続きも必要になります。
もっと詳しい手続きを知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
相続税の支払いが難しい場合の対処方法
マンションなどを引き継いだ際に、税金がかからないためにできる対策や活用できる制度などをご紹介しました。
税金がかからないようにするためには様々な対策を行うことで、相続税かからないもしくは低い金額にすることは可能です。
しかし、中にはかからないように対策はしたけれども、不十分だった。思いの外税金がかかる。などの理由で支払いに関してお困りの方もいます。
ここでは、相続税の支払いが難しい場合の対処方法をご紹介します。
基本的には期限を守ることが重要
まず基本的なお話をしますが、基本的には期限を守ることが重要です。
例えば、マンションなどの財産の分割方法がまとまらない場合でも、税務署には関係ありません。
そのため、ご自身では難しいと感じる場合には弁護士・司法書士・税理士などの専門家へ相談しましょう。
①延納または分割払いを申請する
延納や分割払いなどは、本来一括で支払う相続税を分割するまたは、延期してもらうことです。
延納は、本来期限内で支払う税金を延期してもらうため、利子が付きます。
そのため、本来の相続税よりも総合的に見れば多くの税金を収めることになります。
②物納を検討する
物納とは、相続税を金銭ではなく物(マンションや貴金属などの相続財産)で納める方法です。
ただし、物納の場合は相続で取得した財産の中から納める必要があるため、自身が保有している財産(マンションや貴金属など)で納めることはできませんので注意してください。
必ず認められるわけではない
延納や物納などは、あくまで何かしらの理由がある場合にのみ、認められます。
そのため、単純にマンションの分割について話し合いがついていない・相続税がかからないためにできる控除枠などを探している。
このような場合には、認められるわけではありませんので注意しましょう。
絶対にかからない対策はない
記事をご参照いただいたみなさまならお分かりになるかと思いますが、「絶対に税金がかからない状況にする」ということはできません。
例えば、配偶者控除でも配偶者でなければ活用できません。
小規模宅地等の特例も必ず80%の減額が行われるわけではありません。
また、マンションを含めた財産の評価額によって、特例や控除を活用しても相続税が課税されることもあります。
もちろん、「相続税ががかからない」に越したことはありませんが、「絶対」と言い切ることはできません。
そのため「税金がかからない」ではなく、「できるだけ抑える」という方向で、対策を考えましょう。
しあわせ相続診断では、みなさまに適した相続対策や税金愛作などをご提案しております。
初回無料相談は無料で行っておりますのでお気軽にご相談ください。
記事のまとめ
今回の記事では、マンションを引き継いだ際に相続税がかからないようにするための方法を中心に、マンション相続の手続きの流れやマンションの評価額の算出方法をご紹介しました。
以前までは、マンションを購入すれば相続時に税金をかからないようにすることできました。
しかし、現在はその節税方法もあまり効果がありません。
マンションの相続と聞くと「税金が高そう」と感じるかもしれませんが、適切な控除枠や特例を活用すれば税金をかからないようにすることは難しいかもしれませんが、低くくすることはできます。
そのような情報を、しっかり提供してくれる専門家を探すことをおすすめします。