最近話題になっている在職老齢年金 制度や計算方法を紹介

在職老齢年金の引き上げはどうなるの?

在職老齢年金は、働きながら年金を受け取る人を対象にした制度です。

この制度では、収入が一定額を超えると年金が一部調整される仕組みがあります。

本記事では、在職老齢年金の基本的な仕組みや支給停止の条件、また最近話題となっている支給停止基準額の引き上げについて詳しく解説します。

年金制度の最新動向を把握したい方や、今後の働き方を検討している方はぜひご一読ください。

在職老齢年金って?

在職老齢年金とは、老齢年金を受給しながら働いている高齢者の方々を対象とした制度のことです。

一定の収入がある高齢者の方には、年金制度を支える者たちとして協力をしてもらう制度のことを差します。

もう少し詳しくご紹介すると、65歳以上の方が老齢厚生年金を受け取りながら収入を得ている場合、その収入額に応じて年金の一部または全部が支給停止になることです。

参照:日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20140421.html
(2024年12月13日 参照)

仕組み

前述でご紹介しましたが、在職老齢年金は、「老齢厚生年金」と「収入(給与+賞与など)」の合計金額が、定められている基準を上回る場合、超えた金額の一部が年金から減税される制度のことです。

在職老齢年金の支給停止期間とは?

在職老齢年金とは、前述でご紹介しておりますが収入を得ながら受け取れる年金のことです。

賞与などを含めた合計金額が基準を超えると減税がされます。

在職老齢年金の減税。つまり年金の支給停止がされる場合は、一定期間の至急が停止されることになります。

在職と書かれている通りですが、支給停止(減税)される期間は、在職中の期間に応じて適用されます。

支給停止の基本ルール

支給停止(減税)の基本的なルールですが、この支給停止は在職中のみ適用されます。

そのため、途中で退職した場合や定められている金額を超過した場合には、全額が支給されるようになります。

在職老齢年金は、老齢厚生年金が対象になっているため、国民年金(国民基礎年金)に関しては、対象外になるため減額されるわけではありません。

①月額報酬を基に継続

在職老齢年金の支給停止は、月ごとに計算をします。

月額報酬(給与等)と年金(基本月額)を計算し、基準額を超過するかどうかを確認します。

超過している場合には、その月の年金が減額・停止されます。

②退職するまでの間継続

在職老齢年金は、在職中の期間に適用されます。

そのため、退職を行った場合に基準額よりも上回ってない場合には、支給停止がされます。

在職定時改定制度

2024年4月より、65歳以上の老齢年金受給者を対象に、毎年老齢厚生年金の支給額を見直しする在職定時改定制度が導入されました。

この制度は、65歳以上の老齢厚生年金受給者が、働いている間に納付した分を反映させて受け取れる年金を増やす制度です。

今までは、65歳以上の老齢厚生年金受給者が保険料を納付していても、支給額にはすぐに反映されず70歳になるまたは、退職をする必要がありました。

在職老齢年金との違い

在職老齢年金も在職定時改定制度も、働きながら年金を受け取る人に関連する制度ですが、在職老齢は減額。在職定時改正は増額する仕組みになっています。

具体的な違いは以下のとおりです。

項目在職老齢年金在職定時改定
目的年金財政の負担軽減(年金の減額)働き続けるメリットを提供(年金の増額)
対象年齢60歳以上65歳以上
内容収入が一定額を超えると年金が減額される働いた分が年金に反映され増額される
基準額65歳以上は給与+年金の合計47万円超過時基準額なし、毎年の保険料納付で増額
適用タイミング毎月の収入で判定毎年再計算
影響年金が一時的に減る年金が少しずつ増える

退職時改定

退職時改定とは、働きな方老齢厚生年金を受給している高齢者が、退職された際に年金を再計算し受給額が適正になるようにする制度のことです。

働いている間に納付した、保険料や在職老齢年金などで減額したものを反映させて、再計算を行うことで、納付した保険料などを正しく受け取る事ができます。

在職定時改定との違い

在職定時改定と退職時改定。どちらも、正しく受給額を受け取るための制度ですが、在職定時改正は毎年。退職改定は退職したときに再計算を行うためタイミングが異なります。

項目退職時改定在職定時改定
適用タイミング退職後毎年再計算
対象者退職した65歳以上の人働きながら65歳以上の人
目的在職中の支給停止分や納付実績を反映する働いた分を毎年年金に反映する
反映される内容在職期間中の保険料納付分+支給停止分解除前年度の保険料納付分

同じ厚生年金の取扱にもここまで、大きな違いがあります。

増額・減額・再計算などを行うことで、正しく受給額を受け取れるようにする制度です。

受給手続き

実際に、在職老齢(厚生)年金を受給する場合には、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。

ここでは、実際に在職老齢(厚生)年金を受給する場合の手続き方法と必要な書類をご紹介します。

ただし、ここでご紹介するのはあくまで基本的な手続きです。

そのため、不安な方は必ず日本年金機構などに相談をすることをおすすめします。

①手続き方法を選ぶ

まずは、受給する際の手続き方法を選びましょう。

受給手続きは、2つあり窓口もしくはオンライン手続きのどちらかになります。

窓口

窓口は、お近くの年金事務所などに実際に足を運んでいただき、手続きを行います。

窓口で手続きを行う場合、職員と直接やり取りをすることができるため、不明点や書類の内容不備がある場合にはその場で解決することが可能です。

しかし、営業している時間は平日のみであり、混雑している可能性もあります。

窓口で手続きを行う際には、混雑を避けるために事前予約を取るようにしましょう。

オンライン

年金の手続きは、オンラインでも行うことができます。

わざわざ事務所に足を運ばなくても、オンラインで完結して手続きを行うことができるため、時間の節約ができます。

またオンラインでの手続きは、いつでも手続きを行うことが可能な点もメリットです。

しかし、事前にねんきんネット(日本年金機構のアカウント)を取得する必要があり書類のアップロードが必要になるためパソコンやスマホの操作に慣れている必要があります。

どちらの手続きを選ぶかは、ご自身の状況や準備している段階に応じて選択することをおすすめします。

②必要な書類を準備する

手続き方法を選んだ場合には、必要な書類の準備をしましょう。

ここでは、必ず必要になる書類と状況に応じて必要な書類をわけてご紹介します。

なお、ここでご紹介するのはあくまで一般的な書類のため不安な方は必ず、年金事務所などで必ず確認をしましょう。

必ず必要な書類

在職老齢年金の手続きで必要な書類は以下のとおりです。

  • 年金請求書
  • 本人確認書類
  • 銀行口座情報(通帳・キャッシュカード等)
  • 収入証明書類(給与明細や源泉徴収など)

特に収入証明書などは、在職老齢年金の手続きを行う上で必須になるため、必ず準備をしましょう。

状況に応じて必要な書類

在職老齢年金は、受給者の雇用状況や収入状況・扶養状況によって変化します。

そのため以下の状況の場合には、追加で書類を準備する必要があります。

  • 退職する場合
  • 扶養家族がいる場合
  • 企業年金加入者の場
状況必要な書類
退職する場合(予定の場合)退職証明書または雇用保険被保険者離職票
扶養家族がいる場合住民票または扶養控除申告書
企業年金加入者の場企業年金の情報を確認できる書類
代理人が申請する場合委任状・代理人の本人確認書類

今回ご紹介しているのは、あくまで一般的な申請手続きの際に必要になる書類です。

そのため、場合によっては別の書類や方法がある可能性があります。

③書類を提出する

書類が揃った場合には、窓口またはオンラインで書類の提出を行います。

どちらも控えまたは、支給額決定通知書を受け取ることが出来ますので、なくさずに保管しておきましょう。

在職老齢年金の支給停止額の計算方法

実際に、在職老齢年金の制度で減額が適用される場合、どのようにして減額されるのでしょうか。

ここからは支給停止学の計算方法をご紹介します。

基本月額と総報酬月額相当額の計算方法

これまでを通し、基本的には月額報酬(給与等)と年金(基本月額)を計算し、基準額を超過した場合には減額されるとご紹介しております。

しかし、実際に減額の金額を把握する際には、基本月額と総報酬月額相当額というものを利用して計算を行います。

基本月額

基本月額とは、老齢厚生年金の「報酬比例部分」の月額(年金受給額の一部)のことです。

簡単にご説明すると、加入していた厚生年金の期間の給与や賞与に応じて計算された、1ヶ月あたりの年金額のことです。

在職老齢年金では、この基本月額を基準に支給額や支給停止額を計算します。

基本月額の計算方式は、「年間で受け取れる老齢厚生年金÷12=基本月額」になります。

総報酬月額相当額

総報酬月額相当額とは、働いて得た給与や賞与を月額で表した際の金額のことです。

月額でもらえる給与や賞与(ボーナス)を利用して、算出します。

給与は月額で受け取ることができます。

しかし賞与は毎月ではなく時期があります。

そのため賞与に関しても同様に12ヶ月に分けて計算をします。

総報酬月額相当額の計算方法は、「給与+賞与を12で割った金額=総報酬月額相当額」になります。

在職老齢年金の計算方法

基本月額と総報酬月額相当額の計算ができたら、在職老齢年金の計算をすることができるようになります。

在職老齢年金の計算方法は以下のとおりです。

  1. 基本月額と総報酬月額相当額の合計額を確認する
  2. 合計額が50万円以上の場合は一部または全額支給停止になる
  3. 在職老齢年金の調整後の支給月額を計算する

簡単にご紹介すると、上記のような流れで在職老齢年金の計算を行います。

1.基本月額と総報酬月額相当額の合計額を確認する

こちらは前述でご紹介しております。

基本月額(年金の月額)と総報酬月額相当額(給与等)を表して、1つの合計額にします。

2.合計額が50万円以上の場合は一部または全額支給停止になる

合計額が50万円以上であれば、一部または全額が支給停止になります。

3.在職老齢年金の調整後の支給月額を計算する

在職老齢年金は、支給額が調整される制度です。

そのため調整された金額を計算する必要があります。

計算式は、以下のとおりです。

【調整された年金額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2】

上記の計算式で求めることができます。

支給停止基準額の引き上げがニュースに!

最近、在職老齢年金の支給停止が始まる基準額を、現行の50万円から62万円に引き上げる検討を行っていることが話題になっています。

シニア世代と呼ばれる就業率が上昇している中、在職老齢年金の制度見直しには多くの注目が集まっています。

50万円から62万円または71万円に引き上げる!?

厚生労働省は、現行の支給停止の基準額である50万円から62万円または71万円にまで引き上げることを検討しています。

在職老齢年金の支給停止額は、ここ近年では毎年引き上げがされています。

2022年3月2022年4月2023年4月2024年4月
60~64歳28万円47万円48万円50万円
65歳以上47万円47万円48万円50万円

現状の制度では、50万円ですが、この基準額が61万円または71万円に引き上げる議論がされています。

老齢基礎年金は別!

前述でご紹介しておりますが、今回の在職老齢年金の支給対象になるのは、老齢厚生年金(比例報酬部分のみ)であり、老齢基礎年金は支給対象ではありませんので、注意しておきましょう。

しかし、厚生年金の悲報犬舎が65歳以上で扶養している場合に支給される加給年金額については、報酬比例部分の支給が停止されている場合には、同様に支給停止されますので、合わせて注意しておきましょう。

どんな影響があるの?

在職老齢年金の支給停止額の上限が上がることで、どのような影響があるのでしょうか。

ここでは大きく分けて2点お伝えします。

  1. 高齢者の就労意欲を高める
  2. 将来世代への影響

1.高齢者の就労意欲を高める

支給停止上限額が50万円から、61万円または72万円まで引き上げられる場合、高齢者はより多くの時間働くことができるようになります。

老齢厚生年金の月額が減額されないように、仕事の時間などを制限していた場合、老齢厚生年金の月額の基準が引き上げられれば働き控えをしなくても良くなり、多くの給与を受け取れるようになる可能性があります。

2.将来世代への影響

在職老齢年金の支給額上限の引き上げが行われる場合、将来世代に大きな影響を与える可能性があります。

支給停止上限額が引き上げられると、年金をもらえる高齢者への支払いが多くなります。

しかし、その一方で日本の年金制度では財源が現役世代が納付する保険料と一部税金で成り立っています。

その財源は限られるため、高齢者への年金の支給が多くなればなるほど、将来世代への支払い分が不足する可能性があります。

厚生労働省は2024年の制度改正を含めた議論をしています

現在は、厚生年金と給与の月額の合計額が50万円を超過する場合、厚生年金の月額が減額または全額停止になります。

厚生労働省は、ご紹介した支給される厚生年金と給与の月額の上限を引き上げる案の他にも、在職老齢年金制度そのものを廃止する案。

上記の案が現在、検討・議論されています。

記事のまとめ

今回は、最近話題になっている在職老齢年金についてご紹介しました。

この制度は、老齢厚生年金を受け取りながら収入を得ている場合、その収入額に応じて年金の一部または全部が支給停止する制度です。

この制度を活用することで、年金だけでは心配な方に大きなメリットがあります。

制度の支給停止額を引き上げることで、年金+給与を受け取ることができる反面、将来世代への影響なども考慮する必要があります。

年金や税金に関して不安な方は、一度日本年金機構または年金事務所、社労士・弁護士・税理士司法書士・FPなどに相談する事が可能です。

不安な方は一度相談してみることをおすすめします。